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2014年5月9日 掲載

中国模倣品事件の対応(1)
中国模倣品事件の対応方法概要

中国模倣品対策の現状

 現在、中国の模倣品は、氾濫していると言っても過言ではない。消費者に損害を与えるだけでなく、市場秩序を混乱に陥らせ、かつ正常な経済制度に支障をきたし、権利者の正当な権利を侵害している。また、近年、中国当局の取り締まりが厳しくなるにつれ、それを回避するため、模倣業者の手口は一層巧妙化、悪質化している。従来の単純なものとは異なり、複雑な模倣品問題が生じている。
 通常、模倣品は真正品より低価格で売られるため、真正品の市場が浸食されることになり、真正品の売上にダメージを与えることになる。また、真正品と思い込んで模倣品を購入した顧客、あるいは、真正品ではなく模倣品を部品として使用した製品を購入した使用者からクレームを受けることにもなる。すなわち、模倣品の存在は、真正品のメーカーに対して、市場シェアの喪失、商業信用への損害、ブランドのイメージダウンなどの不利益になり、経済上及び信用上の莫大な損失となる。
 上記の状況に鑑み、模倣品に対して、そのまま放置すると、権利者への侵害が拡大するので、芽のうちに摘み取る必要がある。また、適切な対応策によって、既に発生した模倣品侵害に対して、経済的な損害賠償責任を追及することで、模倣の再発を防ぐことは可能である。そのため、模倣品侵害への相応しい対策を選定することが大切であると言える。
 本稿では、模倣品対策の全体像として、中国における模倣事件への各対策の概要と基本ステップ、並びに各対応策の役割と留意点などについて紹介した上、権利者に対し、自己の知的財産権を保護するために、模倣品事件に対する相応しい対応策を提案する。

模倣品対策の方法とステップ

現在では、中国における模倣品対策として、主に、警告書の送付と交渉、行政摘発の申立、訴訟などの措置をとることができる。また、自らの問題として、中国国内で保護される権利を保有しているか否かはもちろん、どの程度の負担を覚悟して積極的な対応策をとるのかなどについても考慮することで、模倣対策の手段を選定する必要もあるかと思われる。

  1. 模倣品事件に対する調査と証拠確保
    どのような対応策を採用する場合でも、まず侵害行為の情報を収集・確保する必要がある。そのために、模倣品対策を実施するに当たって、事前調査を通じて、模倣品の製造者や販売者などを確認するとともに、模倣品対策に必要な情報を収集すべきである。模倣品対策に必要な情報としては、模倣業者の基本情報、権利保有状況、模倣品の製造、販売状況等に関する情報などが挙げられるが、このような事前調査は、対応において証拠として使用できるだけでなく、具体的な対応策の選定においても、参考にすることができる。
  2. 警告
    権利者は、自分の権利、模倣業者の侵害行為及び模倣業者への要求を記載した警告書を模倣業者に送付し、または、模倣業者と直接交渉をすることを通じて、模倣業者に侵害行為の停止を要求することができる。もし、警告書の送付及び交渉によって、模倣業者が権利者の要求に応じた場合は、迅速に、低コストで事件を解決することができる。ただし、模倣業者が密かに関連証拠を隠蔽し、権利者の要求を無視する場合が多いので、その場合には、速やかに他の対応策を考えなければならない。
  3. 行政摘発
    模倣品対策における行政摘発は、中国特有の制度であり、専門の行政機関に模倣業者に対する摘発を請求することである。もし、行政機関が模倣行為であると認定した場合、模倣品を差押え、模倣業者に対して処罰を下すこともできる。行政摘発は、訴訟と比較して、それほど時間と費用をかけずに、模倣行為に打撃を与えることができるというメリットがある。ただし、地方保護主義の影響を容易に受けやすく、複雑で困難な事件の場合、処理されないおそれもある。
  4. 訴訟
    模倣品対策における知的財産権侵害訴訟は、権利者の知的財産権を保護するための最終手段として、最も強力なものであり、模倣業者に最も厳しく、かつ最も徹底的に打撃を与えることができる。ただし、その時間と費用がより多くかかる。なお、訴訟を提起する場合、証拠に対する証明力の要求が高いので、事前に、関連証拠を収集及び確保しなければならない。

資料協力 北京林達劉知識産権代理事務所別タブで開く

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