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2014年4月11日 掲載

知財権侵害の最新事件(4)
意匠権侵害事件

アルクインターナショナルと義烏市蘭之韵硝子工芸品工場との間の意匠権紛争事件

基本情報

再審事件番号            最高裁判所(2012)民申字第41号、第45号民事裁定書
再審申請人(一審原告、二審被上訴人)アルクインターナショナル(ARC INTERNATIONAL)
再審被申請人(一審被告、二審上訴人)義烏市蘭之韵玻璃工芸品場
再審被申請人(一審被告)      深圳市鑫輝達貿易有限公司

事件の経緯

アルクインターナショナルは、「食器用シール(レモン)」及び「食器用シール(リンゴ)」に関する意匠権(以下、「係争意匠権1」及び「係争意匠権2」という)を有する。2009年3月18日、深圳市鑫輝達貿易有限公司(以下、「鑫輝達公司」という)は、キッチン用ガラスコップを輸出申告をした際、関連商品がアルクインターナショナルの意匠権を侵害するおそれがあるとして税関により差押えられた。そのうち、19箱798個のガラスコップに付されていたレモンの図は係争意匠権1の模様と類似し、15箱630個のガラスコップに付されていた青リンゴの図は係争意匠権2の模様と完全に同一で、ただ色に相違があるだけであった。関連ガラスコップは、義烏市蘭之韵玻璃工芸品場(以下「蘭之韵場」という)が製造し、鑫輝達公司に販売されたものである。したがって、アルクインターナショナルは、蘭之韵場及び鑫輝達公司が2つの係争意匠権を侵害しているとの理由で、それぞれに対して訴訟を提出した。

裁判所の判決

 一審裁判所は、2つの事件において、係争侵害製品の外観は係争意匠権と類似し、蘭之韵場の行為はアルクインターナショナルの意匠権を侵害しているため、侵害責任を負うべきであると認定した。蘭之韵工場はこれを不服として、上訴を提起した。
 浙江省高等裁判所によれば、意匠権の保護原則に基づき、係争侵害製品と意匠権について、権利侵害比較の判断を行う前提は、係争侵害製品と関係意匠権が同一又は類似している製品に属しなければならない。2つの事件における係争侵害製品は何れも食器で、係争意匠製品は「食器用シール」なので、異なる種類の製品である。したがって、比較するまでもなく、直接権利侵害を構成しないと認定することができる。そのため、2つの事件において、一審判決を取消し、アルクインターナショナルの訴訟上の請求を棄却した。アルクインターナショナルは不服として、最高裁判所に対し、再審を申請した。
 最高裁判所によれば、「意匠は、製品から離れて独立して存在できない。2つの事件における係争侵害製品と係争意匠製品は、それぞれの用途が異なり、同一又は類似する種類に属していないので、侵害製品は係争意匠権の権利範囲に入っていない」と認定し、アルクインターナショナルの再審申請を全て棄却した。

ポイント

意匠は、製品というその拠り所とするものが必要不可欠で、製品から離れて単独で存在することができない。意匠権は製品と共に存在するので、意匠権は製品と共に保護しなければならない。係争侵害製品が意匠権製品と同一又は類似する種類に属しているか否かを確定するのは、係争侵害製品が意匠権の権利範囲に入るか否かを判断する前提である。本事件において、係争意匠製品の「食器用シール」と係争侵害製品のガラスコップは、商品の種類が類似していないので、係争侵害製品に係争意匠権と同一又は類似している模様が印刷されていても、最終的には侵害を構成しないと判断された。本事件において、アルクインターナショナルは、商品種類の相違のため、最終的に保護を受けることができなかったが、本事件と類似する事件においては、著作権による保護を求めることも一つの選択肢ではないかと考えられる。

資料協力 北京林達劉知識産権代理事務所別タブで開く

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