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2014年4月11日 掲載

知財権侵害の最新事件(6)
商標権侵害事件

ルロア・ソマー社、利莱森瑪電機科技(福州)有限公司と利莱森瑪(福建)電機有限公司との間の商標権侵害及び他人企業名称無断使用紛争に関する事件(※1)

基本情報

 二審事件番号  福建省高級裁判所(2012)閩民終字第819号民事判決書
 二審上訴人(一審原告)  ルロア・ソマー社、利莱森瑪電機科技(福州)有限公司
 二審被上訴人(一審被告)  利莱森瑪(福建)電機有限公司

事件の経緯

ルロア・ソマー社は、「ロゴ※2」商標及び「LEROY-SOMER」商標の所有者である。また、ルロア・ソマー社は、利莱森瑪電機科技(福州)有限公司(以下、「利莱森瑪福州公司」という)に対して、上記の2つの商標の使用を許諾し、かつ、書面によって、商標権侵害及び不正競争行為に対して、利莱森瑪福州公司がルロア・ソマー社と一緒に訴訟を提出する権利を有することを確認した。利莱森瑪(福建)電機有限公司(以下、「利莱森瑪福建公司」という)は、「ロゴ※3」商標と「ロゴ※4」商標を出願し、かつ、自社が製造・販売する製品において、「ロゴ※4」を使用し、製品の銘板には「LEROY SOMMER FUJIAN ELECTRIC MACHINERY CO., LTD.」という企業の名称を使用し、カタログ等の書面資料には、「ロゴ※3」商標を使用した。かかる状況に鑑み、ルロア・ソマー社と利莱森瑪福州公司は、利莱森瑪福建公司の上記行為が商標侵害及び不正競争を構成するとして、福建省寧徳市中等裁判所に訴訟を提起して、利莱森瑪福建公司に対して、侵害行為を停止し、経済的損害2,141,944元を賠償することを請求した。

裁判所の判決

 一審裁判所は、利莱森瑪福建公司が使用している商標とルロア・ソマー社の登録商標が類似していないため、利莱森瑪福建公司の行為が商標侵害及び不正競争を構成しないと判断し、ルロア・ソマー社と利莱森瑪福州公司の訴訟上の請求を棄却するという判決を言い渡した。ルロア・ソマー社と利莱森瑪福州公司は一審判決を不服として、福建省高等裁判所に上訴を提出した。
 二審裁判所は、「ルロア・ソマー社及びその登録商標『LEROY-SOMER』は、関連業界において、比較的高い周知度を有している。かつ、ルロア・ソマー社が、関連商業活動において、『利莱森瑪』を『LEROY-SOMER』の中国語名称として使用しているので、両者の間に、既に唯一の対応関係が形成されている。上記の状況に鑑み、利莱森瑪福建公司が電機製品及び企業名称において『利莱森瑪』、『LI LAI SEN MA』及び『LEROYSOMMER』等を使用した行為は、ルロア・ソマー社の登録商標専用権を侵害し、不正競争も構成している」と認定し、二審裁判所は、一審判決を取消し、利莱森瑪福建公司に侵害行為を停止し、企業名称を変更し、経済的損害及び合理的支出100万元を賠償する判決を言い渡した。

※1)中国最高裁判所が公布した「2012年中国裁判所の知財司法保護の十大イノベーティブ事件」より

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ポイント

 本事件において、ルロア・ソマー社は、利莱森瑪福建公司の侵害行為に対して、「商標法」を通じて自己の権利を保護した。しかし、ルロア・ソマー社は、事前に、自社の中英文商号を商標として登録していなかったため、本件訴訟において、大量の知名度に関する証拠を提出することにより、各商標の間の対応関係を証明したが、それは決して容易なことではなかった。
 企業にとって、自社のブランドなどの商標が一旦冒認出願されてしまうと、ビジネスに与える被害は極めて大きい。したがって、企業にとっては、自社の商業名誉を維持・保護するために、事後の対策よりも、事前の対策としてできるだけ早い時期に中国において使用する可能性を有する商業標識を商標として登録することにより、模倣行為を未然に防止することを優先させるようにすることが必要である。そして、事業展開中、又は展開予定の指定商品・役務だけではなく、関連業界においても、指定商品・役務を広めて権利化しておくのが得策である。

資料協力 北京林達劉知識産権代理事務所別タブで開く

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