TOKYO逸品:「ときここち」
白身の部分を残さず、生卵を溶くキッチン小物
一発芸型商品が町工場から生まれた理由


これ、4,000円を超える値段なのに、できることはひとつだけ。生卵を溶くことにしか使えないというキッチン小物です。
ところがです。昨年発売してすぐ、都内の百貨店の催事へ出店したら、わずか6日間で315個売れたというスタートダッシュ。その後もじわじわと知名度が浸透しているようです。
料理好きには絶対にピンとくるはず。白身の部分を残さず、生卵を完璧に溶くのは実に難しいですからね。実際、これを使ったら、笑えるほど美しく混ざりきりました。どうして?
「先っぽの円形状の部位で、白身を細かく切っているんです」
開発に挑んだのは荒川区の町工場でした。精密板金加工が得意領域とはいえ、この工場にとっては、創業58年にして初めての自社ブランドだといいます。自社商品があれば「厳しい局面でも心の支えになりますから」。ただ、よくよく聞くと……。
「実は、私の妻が、卵の白身を苦手にしていたんです」
だから綺麗に生卵を溶ける道具づくりに挑戦したのですか。
「でも試作を見せるたびに、妻から“秒殺”をくらいましたよ。これでは握る手が痛い、これは卵と指の位置が近すぎる、と」
4つの試作がお蔵入りになりました。そして、奥様がついに微笑んだのは、その造形も機能も見直しを尽くした5つめの作。ステンレスの一枚板からつくりあげた、見事な完成形でした。

商品情報
商 品 名 | ときここち |
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企 業 名 | 株式会社トネ製作所(東京都荒川区) |
WEBサイト | https://toki-cocochi.com/ |
語り手
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北村 森(キタムラ モリ) 氏 1966年生まれ。「日経トレンディ」編集長を経て独立。 消費トレンド分析、商品テストを専門領域に活動。 サイバー大学IT総合学部教授(地域マーケティング論)。 SNS:https://www.facebook.com/mori.kitamura/ |
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