TOKYO逸品:特別編

商品紹介
人はそれを待っている

株式会社TRINUS(世田谷区)
この連載の第1回で取り上げたのが「花色鉛筆」です。廃棄古紙を活用した新素材をどう生かすか、考えに考えたすえの商品でした。
色鉛筆の軸に使うだけでなく、削りかすが美しい花びらの形になるようにしたのがミソ。環境に考慮した商品であるうえに、楽しい商品を完成させたのです。「この手があったか」と業界内外を驚かせるところまでいかに粘れるか、の勝負でした。

株式会社TRINUS(世田谷区)

ホワイトローズ株式会社(東京都台東区)
ビニール傘を世界で初めて開発した下町の会社が挑戦したのは、折りたたみ式のビニール傘でした。
きれいにたためて、しかも長く愛用できる1本を作るまで、大変なプロセスだったと聞きました。その名を「アメマチ」といいます。値段はなんと1万5400円。それでもクラウドファンディングで大反響を呼び、発売直後は品切れ続きだったほどです。たとえ値が張っても、透明で先を見通せ、しかもカバンの中に収まる傘を、少なからぬ人が求めていたという話ですね。値段が安ければそれでいいということでは決してないと、改めて理解できた商品です。

ホワイトローズ株式会社(東京都台東区)

株式会社ハッシュ(東京都大田区)
老舗クリーニング店の娘さんが15年かけて開発したのが、衣服の汚れやシミを取る「スポッとる」です。
お客さんの切実な思いに応えたいとの一念で完成させたと聞きました。この商品を世に送り出すまでに、液剤に使えそうな素材を組み合わせて。ありとあらゆる可能性を試したそうです。文字通りの総当たり戦だった、と……。これもまたヒット商品を生むうえで欠かせない作業しょうね。

株式会社ハッシュ(東京都大田区)
誰のための商品なのか

株式会社トネ製作所(東京都荒川区)
精密板金加工を得意とする町工場が、初めての自社ブランド商品として発売したのが「ときここち」です。
4,290円するのですが、できることは生卵を溶くこと、それだけです。なのに、大注目を浴びました。それは白身と黄身が見事なまでにきれいに混ざりきるから……。開発に挑んだ理由は明快で「私の妻が卵白嫌いだったから」と社長はいいます。これでいいのだと思います。はっきりしたターゲットが実在する商品は強いんです。

株式会社トネ製作所(東京都荒川区)

有限会社エニシング(東京都小金井市)
最後に……。時代の変化のなかで消えていくと思われていた業界に新たな風を吹かせた事例です。
「オーダー前掛け」がそれ。長年従事する職人さんでさえ将来を悲観していたのに、「前掛けは、個人のギフト需要で必ずや息を吹き返す」と信じ、国内だけでなく米国や欧州にまでプロモーションをかけ、ヒットに結びつけました。その商品は今の時代にどう生きるのか、ありようを再定義するところから可能性が拓けることがあるわけです。

有限会社エニシング(東京都小金井市)
語り手
![]() |
北村 森(キタムラ モリ) 氏 1966年生まれ。「日経トレンディ」編集長を経て独立。 消費トレンド分析、商品テストを専門領域に活動。 サイバー大学IT総合学部教授(地域マーケティング論)。 SNS:https://www.facebook.com/mori.kitamura/ |
---|