TOKYO逸品 ~企業が歩んだ物語~
自然から作ったケアセット
エゾシカ脂を商品化に活用
“日本最古のメーカー”が挑んだ商品変革


日本最古の靴クリームメーカーが、東京・墨田区にあります。創業は1910(明治43)年、「ライオン靴クリーム本舗」のブランドで知られる、谷口化学工業所です。そんな同社が2020年、新しい商品を世に出しました。駆除されたのち行き場のないエゾシカの脂を使った、自然由来の革ケア商品です。靴や革製品を手入れするためのクリームやジェルにエゾシカの脂を活用するというのは、業界に前例はまずなかった話とも聞きます。
開発を手掛けた同社の5代目はいいます。「エゾシカの脂はさらりとしていて、原材料に実は好適なんです」。流通量が少なく調達価格も高いのですが、覚悟を決めて採用した。するとサステナブルな商品を志向した点が注目され、出荷数は当初想定していた10倍と大反響を呼びました。たとえ値段の張る商品でも、その性格が明確なものはちゃんと評価されるのですね。
それにしてもです。成熟領域の商品であっても、こうしたイノベーション(新たな価値の創造)が起こせるというのが、とても興味深い。5代目にいわせると「革製品のケアのあり方自体が変わった」そうです。かつては革を柔らかくするのが目的。それが現在では、買った時より美しく、そして革製品を長く大事に愛用できるように、と…。こうした思いに応える商品に自然由来という要素がさらに加わり、共感を広く得たのでしょう。

商品情報
商 品 名 | 自然から作ったケアセット |
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企 業 名 | 株式会社谷口化学工業所(東京都墨田区) |
WEBサイト | https://www.taniguchi-kagaku.com/ |
語り手
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北村 森(キタムラ モリ) 氏 1966年生まれ。「日経トレンディ」編集長を経て独立。 消費トレンド分析、商品テストを専門領域に活動。 サイバー大学IT総合学部教授(地域マーケティング論)。 SNS:https://www.facebook.com/mori.kitamura/ |
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