TOKYO逸品 ~企業が歩んだ物語~
特別編
企業がウイングを広げる契機
新商品開発は、結局のところ何のためか。このコラムで1年のあいだに綴ってきた事例から、その一端を考えてみましょう。
商品紹介
すでにある強みを再認識
株式会社東具/中央区
東具は、企業向けのPOPやディスプレイなどの販促ツールを長らく企画生産してきた企業です。そんな同社が一般消費者向けに開発したのが「giftoo(l ギフトゥール)」です。子どもへのプレゼントを収めるギフトボックス。なぜいきなりこうした新商品だったのか。「販促ツールの要諦は『驚かせること』であり、私たちの技術は『商品を手にするための時間を創出すること』だと踏まえた」といいます。これは同社が培ってきた強みを活かすギフトボックスでした。
株式会社東具/中央区
株式会社交通図書協会/千代田区
強みの再認識はやはり重要です。交通図書協会の「ぼくのわたしのぼうけんてちょう」は、小学校低学年を対象にした紙の手帳。手帳の市場規模が年々縮小する逆風下で、同社は改めて考えた。紙の手帳の持ち味はどこにあるかと…。それは単なるスケジュール管理にとどまらない「今の自分をアウトプットできる機能」と捉えたといいます。そして、ちいさなころからこの意義を実感してほしいと願い、思い切って開発したのが、この手帳だったのでした。
株式会社交通図書協会/千代田区
エスエージーバルーンズ株式会社
/墨田区
逆風下での新商品開発という意味では、「QooSo Plants®(クウソープランツ)」も同様です。バルーン開発に半世紀以上携わるエスエージーバルーンズが、各地のお祭りでバルーンを扱う露天商が減ったことを受けて開発に臨んだ商品でした。「バルーンはギフトとの相性がいいはず」と思い立ち、観葉植物をかたどった精緻な小型バルーンを完成させました。技術的な困難を乗り越え、誰かに贈るのにちょうどいい、気の利いたデザインの新商品を世に送り出した。
エスエージーバルーンズ株式会社
/墨田区
木内籐材工業株式会社/文京区
籐製品の可能性をもっと広げたい、そう考えて立ち上がったのは、木内籐材工業の3代目でした。カゴなどの定番ものを超える存在を生み出さねばと考え、まずは籐のうちわや扇子の開発に着手。さらに、「多くの人を振り向かせるために、これまでにないかたちを目指そう」と、籐の椅子のデザインを見直した。「TOU KOISU」は座る部分の曲面が美しく、腰を下ろしやすい形状です。都内のセレクトショップが取り扱いを決めるなど、反響を呼んでいます。
木内籐材工業株式会社/文京区
主力事業にそれが活きた
仲吉商事株式会社/埼玉県越谷市
日用雑貨を取り扱う仲吉商事は、食器の次世代を担う天然素材として竹の研究を続けてきました。同社みずから竹を育て、加工技術をものにして、竹の風合いを生かすデザインワークも自社で進めました。主軸となっている取引先は飲食店やホテルなどの事業者ですが、「RIVERET(リヴェレット)」と名づけたブランドを立ち上げ、一般消費者にも竹の食器が有する特性をアピール。すると結果として業界関係者からの注目度は高まり、主力事業が伸びたといいます。
仲吉商事株式会社/埼玉県越谷市
新商品開発は何のため…。足許のアセット(ノウハウや技術)から、企業のウイングを広げる契機を掴むためといえそうです。
語り手
北村 森(キタムラ モリ) 氏
1966年生まれ。「日経トレンディ」編集長を経て独立。
消費トレンド分析、商品テストを専門領域に活動。
サイバー大学IT総合学部教授(地域マーケティング論)。
SNS:https://www.facebook.com/mori.kitamura/
□ 問い合わせ先 □
企画管理部 企画課
TEL:03-3251-7897
E-mail:kikaku【AT】tokyo-kosha.or.jp
※迷惑メール対策のため、「@」を【AT】としています。