「オタクに優しい美容室」の知見を活かし、
アニメキャラとのコラボ商品を発売
株式会社lushtree

会社情報
アニメなどのオタクをターゲットにした美容室を作りたいと考え、クラウドファンディングを活用し2016年に美容室「OFF-KAi!!」を開業。スタッフ全員がアニメ好きで、顧客が「このキャラクターの髪型にしたい」などの施術相談を臆することなくできる点が強み。
社名 | 株式会社lushtree |
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所在地 | 東京都千代田区外神田3-6-6服部ビル1階 |
代表者 | 茂木 賢太 |
URL |
https://off-kai.com/ |
代表者情報
代表取締役社長 茂木賢太
美容師としてサロン勤務やフリーランスなど、さまざまなかたちでキャリアを積む中で、「オタクに優しい美容室」を立ち上げたいと思うように。2016年、秋葉原に「OFF-KAi!!」を開業し、2019年には株式会社lushtreeとして法人化すると同時に池袋に2号店を開業させる。

開発したサービスの概要
「推しキャラの香りに包まれる」アニメとコラボしたヘアケア商品を発売
アニメやゲームのキャラクターとコラボするヘアケアブランド「O+see(オーシー)」を立ち上げました。第一弾として映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」とのコラボを実現し、「鬼太郎の父」や「ねこ娘」など、物語に登場する個性豊かなキャラクター4人をモチーフにしたシャンプーとトリートメントを展開。それぞれのキャラクターのイメージを香りで表現するだけでなく、ボトルデザインにもこだわり、限定描き下ろしのイラストやステッカー仕立てのラベルなど、ファンの心をくすぐる演出を随所に取り入れた。
開発したサービスの紹介
「好きなキャラクターの香りに包まれて眠る」を実現
現代人の疲れを癒すバスタイムを“推し活”のひとときに変える──そんな想いから、「O+see(オーシー)」は生まれた。「頑張れない1日の最後に特別を」をコンセプトに、お気に入りのキャラクターの香りとともに過ごすリラックスタイムを提案。第一弾では「鬼太郎の父」「水木」「龍賀沙代」「ねこ娘」の4キャラクターをイメージし、それぞれにぴったりの香りを開発。シャンプーとトリートメントをそれぞれ4種ずつ揃え、計8アイテムを展開。香りを通じて、日常に“癒しとときめき”を届けるラインアップとなっている。
それぞれのキャラクターに合った香りを独自に開発
商品の香りについては映画のストーリーなどを読み込んで、「鬼太郎の父はキンモクセイ」といったように、それぞれのキャラクターに合ったものをセレクト。さらに翌日の朝になっても香りが残っているように、香料の分量を通常の2倍とした。もちろん商品の品質も、普段店舗で使っているようなサロンクオリティで、ヘアケア商品として自信を持って提供できるもの。価格は各6,600円(税込)と比較的高価格帯になるが、「頑張った自分へのご褒美として、週に1、2回使用してもらう」という使用例で、特別感をアピール。アニメが好きな、特に女性をターゲットとして開発を進めていった。
オタクの気持ちに寄り添った製品づくりを目指す
美容室のスタッフ全員がアニメ好きであり、訪れる客からもさまざまな情報を得ていることが強みといえる同社。今回の商品のために、特別に描き下ろした限定イラストをボトルに使用。また、「使い終わったからといって、好きなキャラクターの描かれたものを廃棄するのは、ファンとして心苦しい」というアニメファンの意見から商品を二重ラベルとし、廃棄時には1層目のラベルを剥がしてステッカーとして使用できるように。ヘアケアだけでなく、顧客の心にも寄り添う商品を目指した。

サービス開発のきっかけ
新型コロナウイルスによって大きなダメージを受けたのが、顧客との接触が必須である美容業界だ。客足は戻ってきたが、「今後も何が起こるか分からない」と危機感を覚えた茂木社長。店舗営業ができなくなったとしても収益につながる事業を立ち上げたいと、さまざまなビジネスモデルを模索。これまでもオリジナルのヘアケア商品を販売していたことから、アニメのキャラクターとコラボレーションをすることでより顧客にアピールでき、商品力の高いヘアケア商品を作ろうと考えた。
開発期間中の振り返り
顧客の口コミが、作品選定のきっかけに
「以前から、公社には事業可能性評価で支援してもらっていました」という茂木社長。その流れで「アニメのコラボ商品を開発したい」という話をしたところ今回の「新しい日常」を紹介され、商品のブランディング化が本格的にスタートした。さまざまな版権会社に打診をした中、東映アニメーション株式会社からオーケーをもらい、映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」とのコラボが決定。「この映画がバズっているという情報をお客さんから聞いていたことが、今回のコラボのきっかけになりました」と、茂木社長も顧客からの口コミの信頼度の高さを高く評価する。
コンテンツビジネスは、時期やキャラ選定が重要と実感
実際に映画は想像以上のヒットを記録。ただ、コラボ商品をこだわって製作したため、発売が映画公開時期と少しズレてしまうことに。「結果として、一番売れる時期を逃してしまったと思います」と茂木社長。また男性キャラのみでの展開を希望していたが、東映側からの要望は女性キャラも含めての展開だった。購買層の中心が女性だったこともあり、女性キャラクターをモチーフにした商品の売上は伸びにくかったという。「そこは残念でしたが、そうしたデータが取れたことは良かったと思います。予算が限られているのであれば、石橋は叩けば叩くほどいいのだと実感しました」(茂木社長)。
若い起業家には、経験からアドバイスできるメンター的存在が必要
また今回は8アイテムを一気に販売したが、「商品づくりに関してはMVP(Minimum Viable Product 最初は小さくビジネスを始め、顧客の意見などを参考に改良を加える手法)が大事ということも分かりました」と、茂木社長は振り返る。他にもキャラクターの選定は、これから流行するものよりも、ピークは過ぎても長く愛されているキャラクターのほうが確実だといったことも分かり、今後に活かしたいとのこと。そして公社の支援については「自分より一回り以上離れている、経験豊かな方からアドバイスをもらえるのは非常に大きい。若い起業家にはこうした“メンター”的存在がなかなかいないと思う」と語ってくれた。

これからのビジョン
もちろん今回の経験を踏まえた上で、コラボレーション商品の第二弾、第三弾を作っていきたい。また「オタク×美容商材」といったビジネスにも取り組みたいと、茂木社長は考えている。「カードゲームに詳しいスタッフから『カードゲーム大会のスメハラ問題』を聞いたのですが、ゲームへの参加条件となるボディシャンプーの開発、といったこともできるのではないかと思っています」(茂木社長)。「ある意味、当社の美容師はオタクの方のリアルな意見をヒアリングしているといえます。中には版権会社がほしがるような情報があるかもしれません。そこから、新たなビジネスを見つけていきたいですね」と、茂木社長は新ビジネスの可能性に期待を寄せる。