AIチャットボットを中心に
業務を24時間支援するアプリを開発
Dimes株式会社
開発したサービスの概要
AIチャットボットを中心に業務を24時間支援するアプリを開発
「何度も同じ質問を受けることで、本来の業務の時間を取られてしまう。しかし問いに答えることもおろそかにはしたくない」。これは多くの企業共通の悩みだ。そこで同社は人手不足が常態化している中小法律事務所にターゲットを絞り、業務効率化ツールとしてAIチャットボットとビデオ通話が使えるアプリ「timelyassist」を開発した。このアプリは24時間対応のAIチャットボットが様々な質問に素早く丁寧に回答し、有人ビデオ通話、相談予約へとシームレスに案内。多言語翻訳機能もあるため、多国籍顧客への対応もスムーズになる。また、カスタマーサービスだけではなく、社内での質疑応答や組織内での知識・技術の共有などに活用することも可能となっている。
開発したサービスの紹介
AIチャットからビデオ通話・相談予約まで。簡単操作でスムーズに
早く答えがほしいのに、夜間・休日には問い合わせができない…という時に活躍するのが、AIチャットボットであり、「timelyassist」もそこは変わらない。使い方は非常に簡単で、質問したい人は法律事務所ホームページのチャットボットのアイコンをクリック。すぐにAIチャットが始まるので、自分の聞きたいことを打ち込めば即時に回答が得られるシステムになっている。回答内容はあらかじめ弁護士の監修で作り込んでいるため専門性が高く、しっかり答えてくれている印象を与えられる。さらに「timelyassist」では、面倒な操作なしでAIチャットボットからスムーズに有人チャットに移行でき、スタッフとのビデオ通話、相談予約につながる。このシームレスな流れが強みだ。

導入にIT知識は不要。利用者のニーズをつかみ経営に生かすことも
AIはハードルが高いと感じるかもしれない。しかし「timelyassist」導入に高度な知識は不要だ。最初に回答文章を監修する必要はあるが、更新は入力ページの所定の位置にテキストを入れるだけ。あとはAIが1次受付をしてくれ、初期対応から解放される。また、どのような質問があり、AIがどう回答したかを見ることができるので「一般のユーザーは何を聞きたがっているのか」を把握し、事務所運営に生かすことが可能だ。「質問は、『相談の費用は?子どもを連れて行ってもいい?駅からの道順は?』といったことから、借金や慰謝料といった具体的な話など多岐にわたっています。相談者もより質問しやすくなり、win-winの関係が作れればいいな、と思います」(魏社長)。
企業の暗黙知や属人化したスキル・ノウハウをAIに集約し共有する
今回開発したアプリは業種・規模に関わらず、あらゆる企業の社内問い合わせにも活用できる。「多くの企業ではその文化が暗黙知となっており、新しく入った方にはわかりません。仕事や知識も属人化しており、優秀な人ほど忙しくてスキルやノウハウを他者へ伝えることができないのです。この暗黙知を形式知に変換して各領域のベストプラクティスの知識をAIに学習させておけば、社内に“AIの先生”が生まれ、わからないことはいつでも聞けるようになります」(魏社長)。企業も社員が何に困っているかがわかり、AI強化や研修の開催という手を打つことが可能だ。71言語に対応しており、インバウンドや海外人材の言葉の壁問題を解決する一助にもなる。
サービス開発のきっかけ
AIが回答を肩代わりすれば、人は “時間の在庫”を有意義に使える
魏社長はすでに、空き時間に自分のスキルを提供するグローバルのスキルマッチングプラットフォーム「timelyskillmarket」を運営していた。そこで感じたのが「人が人に答える・教えるのは時間がかかる」ということだ。「人の“時間の在庫”は無限ではありません。しかし多くの人から同じ質問をされることで、時間を取られてしまいがちです。ならば問いへの回答をAIが肩代わりしてくれれば、限りある大切な時間は自分のクリエイティブにかけられるのでは?と思ったのです。学校や企業でも同様で、人はマニュアルやFAQがあっても“わからないことは直接聞いた方が楽だ”と考えるもの。その質問先をAIに変えれば、様々な場面で効率化が図れるのです」(魏社長)。
開発期間中の振り返り
人手不足で電話対応にストレスを感じている中小法律事務所に絞る
「最初はターゲット選定で迷いました」と魏社長。公社コーディネーターに相談し「大企業は意思決定に時間がかかり、実績がないと協力してくれない。まずは10名未満の人手不足の会社から始めてみよう」ということになった。リサーチを進めると、中小法律事務所ではあまりAIが使われてないということが判明した。また、実際に弁護士に話を聞いて「電話で営業時間やアクセスといった質問に何度も答えることにストレスを感じている」とわかった。「これは法律家の本来の仕事ではないところで、時間を取られているということ。まさにAIで解決できる分野です。法律事務所は日本国内に数千社あるため、開発後の展開も期待できると考えました」(魏社長)。
アドバイスによって差別化を図り後発という不利な立場を覆す
同社にはビデオ会議や初期のチャットボットの技術はあったが、新規事業にどう活かせるかはわからなかった。またチャットボットでは後発の同社としては「他とどう差別化をするか?」も課題だ。そこでコーディネーターのアドバイスで「AIチャットボット、有人チャット、ビデオチャットの一連の流れをシームレスにすることを強みとしよう」と決めた。また、「ターゲットである法律事務所の相談では、自分に今起きていることを具体的に相談したいしたいはず」と考え、現在多用されているシナリオ化型AIではなく、人の言葉を理解して人のように回答する会話型AIを使うことに。魏社長をプロジェクトマネージャーとして、香港の会社にエンジニアリングを委託し開発が始まった。
AIが答えられない!開発期限目前で発生したトラブルに柔軟に対応
昨年9月には法律事務所の協力を得て実証実験を行った。ところが、バグが発生しAIが答えられない事態に。法律事務所からは厳しい言葉も飛んだ。「開発期限まであと3ヶ月。シナリオ型に戻すことも考えましたが、それでは意味がありません。公社に相談してPRやマーケティングの予算を全て開発に当てることにして、急遽、別会社に開発を依頼。また、法律事務所の方と話す中で知った“業界特有の悩み”を解決するため、オンライン予約機能も追加。無事に期限内に完成することができました。精度は95%で法律事務所の方にも喜んでいただけ、今ではAIチャットに誘導するためホームページを改正したり、PRに協力してくださったりしています」(魏社長)。
これからのビジョン
越境型クローズドコミュニティを実現し地方創生に取り組みたい
魏社長が目指すのは、より使いやすいインターフェースに改良し「timelyassistによって集客ができた」という実績を積み上げること。その上で幅広い業種への導入、多言語対応の特徴を活かしたグローバル展開も視野に入れており、海外企業の日本誘致や外国人材確保などにも活用していきたいと考えている。
「まだ先の話ですが、従来の“人から人に聞く”というコミュニケーションフローを、“人からAIに24時間いつでも気軽に聞く”といった流れに変えていきたいと思います。そうなると人は“問い合わせ対応”からフリーになり、クリエイティブな仕事に専念できます。AIが人のコミュニケーションをアシストしてくれる、そんな世界にしたいのです」(魏社長)。


会社情報
社名 | Dimes株式会社 |
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代表者 | 代表取締役社長 魏 嘉宏(エリック・ウェイ) |
所在地 | 東京都港区東麻布2丁目6-9 |
事業概要 | 2021年創業。世界中のスペシャリストのスキルと時間をマッチングするプラットフォーム「timelyskillmarket」を運営。ドイツ発のグローバルEラーニングコンテンツPINKTUMと提携しオンライン/オフラインのワークショップと共に企業のグローバル人財育成に貢献「timelylearning」。 AIチャットボット「timelyassist」による業務効率化、暗黙知の形式知化と共有化、イノベーション創出を目指している。AI、テクノロジーを活用して人と企業の働き方の進化を目指すべく事業展開中。 |
主な製品やサービス | ・「timelyassist」の開発・運営 ・「timelyskillmarket」を運営 ・EラーニングコンテンツPINKTUM×ワークショップの「timelylearning」を活用した人財育成の支援 |
URL |
https://timelyhero.com/ |
代表者情報

代表取締役社長 魏 嘉宏(エリック・ウェイ)
台湾出身。アマゾンジャパンでKindle事業に携わり、GoogleでGooglePlayのアジア全体のマーチャンダイジングを統括。中国の配車アプリのプラットフォームの構築やドイツのフードデリバリーサービスの日本法人の立ち上げなどを経て現職。