成功のヒントは現場にあり!東京都内中小企業のSDGs取組事例

品質へのこだわりが皆の喜びにつながる

ホットマン株式会社(青梅市)

ホットマン株式会社(青梅市)
代表取締役社長 坂本 将之 氏

良いものを作る想いがSDGsに

テレビや雑誌で今話題の「1秒タオル」で知られるホットマンは、純国産のタオルメーカーです。“お客様の快適で心豊かな生活に貢献する”という理念のもと、以前から、薬剤に頼らない製法、長持ちする品質、国内初の日本製フェアトレードコットンタオルの製造・販売、必要な分だけつくる製販一貫体制などに取り組んできました。

「こうした取り組みは本業の中で経営理念をどう達成していくかと考えていった結果、生まれたものです。厳しい経営環境の中で“社会貢献”というとハードルが上がってしまいますが、経営理念にある“快適で心豊か”の定義を常に見直しながら、可能な範囲で社会的価値を高める取り組みを進めてきました」

そう語るのは坂本社長。SDGsとの出会いは、「第19回グリーン購入大賞」。SDGsへの取り組みが評価対象になると知り、取り組みを推進し、その賞では、見事、大賞・経済産業大臣賞を受賞しました。SDGsの印象を次のように語ります。

「SDGsと出会った時、今まで取り組んできたことに明確な意味を与えられたように感じました。SDGsは規制ではなく、環境、社会、経済という面から、将来までずっと続く未来をつくるための世界共通の目標です。経営理念と融合させて取り組めば、本業を追求していく中で社会課題の解決と企業の発展の両立に繋げることができると考え、一歩を踏み出すことができました」

  • セネガルの綿花畑で綿花を摘む人々。 セネガルの綿花畑で綿花を摘む人々。
  • フェアトレードで生産されたホットマンのタオル。 フェアトレードで生産されたホットマンのタオル。

社内勉強会で現場を主役に

坂本社長がSDGsに向けてまず行ったのは、社内で、少人数単位で勉強会を開くこと。その理由は次のようなものでした。

「現場で働く人たちがSDGsを深く理解し、自ら進んで取り組めるようにならなければいけないと考えました。現場に納得感がないと本当の意味で会社は動きません。

自分達の会社の取り組みがこういう社会課題の解決に繋がっているという話や、こういった面でお客様の心豊かさに貢献しているというような話をしています。そして、これらの取り組みが売上に繋がった直接的なプラスの結果も共有することで、社会課題の解決と企業の発展の両方を達成できるものだということを説明してきました」

その成果は徐々に表れ、「使用済みタオルを固形燃料にリサイクル」などのアイデアが社員の間から出るようになりました。また、環境にやさしい商品として認知が広まると、ホテルや企業のノベルティなどの引き合いも増え、ビジネスにも大いにプラスになったそうです。

SDGs経営に確かな手応えを感じている坂本社長。現在では、SDGs推進の経験を地域の企業や学校などに伝えることにも貢献しています。

  • 使用済みのタオルを回収する回収箱(工場感謝祭)。固形燃料にリサイクルされる。 使用済みのタオルを回収する回収箱(工場感謝祭)。
    固形燃料にリサイクルされる。

経営の棚卸しとしてのSDGs

SDGsの取り組みは社会貢献という側面だけでなく、自社の経営を見つめ直す上でも大変役立ったと坂本社長。

「他社の良いところは見えますが、自分達の良いところは当たり前になってしまって見えにくいものです。SDGsを切り口にして自社を見直したことで、実は自社の事業や取り組みがこんな価値を生んでいるんだという再確認ができました。それを社員と共有できたことは本当に良かったと思います」

また、SDGsは中小企業にとってますます重要になっていくと感じているそうです。

「ESG投資などが進んで、SDGsに取り組むことがプラスになるだけでなく、取り組んでいないことがリスクになってきています。うちはまだいいよと言っている間にサプライチェーンから外されることもあり得ます。プラス面とマイナス面の両面を考えても、中小企業こそ取り組むべきではないかと思います」

ホットマンのように企業理念とSDGsが結び付きやすい企業がある一方で、事業と社会貢献が結び付きにくいという企業も多いかもしれません。そこで、坂本社長はこれからSDGsをはじめたいい中小企業に向けて次のようにエールを送っていました。

「今存続している企業は、価値があるからこそ存続できているはずです。そこに自信を持つべきだと思います。そして、その自社の特徴や価値をSDGsの切り口で改めて見直すことで取り組みが見つけやすくなります。まずは一歩を踏み出すことが大切だと思います」

  • 従業員と気さくに話す坂本社長。従業員との対話を大切にしている。 従業員と気さくに話す坂本社長。
    従業員との対話を大切にしている。

ホットマン株式会社
所在地:東京都青梅市長淵5-251
創業:明治元年
設立:昭和26年4月
事業内容:繊維製品の製造・加工および販売
代表取締役社長:坂本将之
従業員数:405名

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