成功のヒントは現場にあり!東京都内中小企業のSDGs取組事例

「四方よし」の循環型ものづくりを目指して

ファイン株式会社(品川区)

ファイン株式会社(品川区)
代表取締役社長 清水 直子 氏

「必要な人に届ける」という使命感

歯ブラシなどの口腔ケア用品を製造・販売するファイン株式会社。3代目の清水直子社長は以前から環境にやさしいものづくりに取り組んできましたが、その道は平坦ではありませんでした。

「以前は〈エコ商品〉と言っても市場の反応は鈍く、それを付加価値として売り上げにつなげることにはある種の“あきらめ感”がありましたが、『体力が続くうちは…』となんとかやっていました。風向きが変わってきたと感じたのはここ2~3年のことです」

そう語る清水社長。エコ素材の歯ブラシは、生分解するため品質や生産管理が難しく、一時は撤退をすることに。しかし、化学物質過敏症の方からの「なくなると本当に困る」という声を受け、「なくしてはいけない!」と再販を決意します。その後、同社の「竹の歯ブラシ」は販売店からの応援や、SDGsの広がりと共に問い合わせが急増。会社の想いが偶然にもSDGsの「誰一人取り残さない」というテーマに合致し得られた成果でした。

  • 各方面から問い合わせが急増している「竹の歯ブラシ」。 各方面から問い合わせが急増している
    「竹の歯ブラシ」。
  • 竹の歯ブラシに使用する竹材は、工場に隣接する竹林から従業員自ら伐採。 竹の歯ブラシに使用する竹材は、
    工場に隣接する竹林から従業員自ら伐採。

外部から見えた自社の強み

清水社長がSDGsを意識するきっかけになったのは、自社の展示会に来たお客様の一言から。社内にいると気づかないことが外部からだと見えやすいと話します。

「ある先輩経営者の方が、『ファインさんの商品はSDGsにいくつもあてはまる』とおっしゃったんです。それで一度本格的に学んでみようと思い、社内で勉強会を開きました。エコ商品販売会社の社長さんを招いてお話しを伺うと、その本気度がこちらにも伝わってきてとても感銘を受けました。まわりの社員たちの心にも火がついたようです」

会社全体でSDGsに取り組む清水社長。社内の勉強会では、環境問題に関する書籍〈『プラスチックスープの海 北太平洋巨大ごみベルトは警告する』(チャールズ・モア、カッサンドラ・フィリップス(著)、海輪 由香子(翻訳)/NHK出版)〉を章ごとに従業員とで分けて読み、各自が内容をまとめ5分ずつ発表する場を作るなどの工夫をして従業員の啓蒙に役立てました。

  • 乳幼児の歯みがきトレーニング用に開発された歯ブラシ。 乳幼児の歯みがきトレーニング用に開発された歯ブラシ。

SDGsに関係のない企業はない

長年続けてきた「人と環境にやさしい商品づくり」が実を結び始めているファイン株式会社。これからSDGsに取り組もうとしている中小企業者へのメッセージとして次のように話します。

「企業は本来、人助けのための団体なので、SDGsとまったく関係がない会社はないはず。何から取り組めばよいかわからない時は、一度自社の事業の“棚卸し”をすると目標が見えてくるのではないでしょうか」

商品へのこだわりだけでなく、地域とのつながりも大切にし、「工場でのブラシ植毛体験」や「乳歯を守るセミナー」などの社会貢献活動にも積極的な同社。「女性が働きやすい職場づくり」など、社員を大切にする先代からの企業風土も引き継ぎ、〈売り手よし・買い手よし・世間よし〉の三方よしの考えに〈働き手よし〉を加えた「四方よし」のSDGs経営に邁進しています。

  • 「工場でのブラシ植毛体験・いがぶら」の様子。社会貢献活動にも積極的に取り組む。 「工場でのブラシ植毛体験・いがぶら」の様子。
    社会貢献活動にも積極的に取り組む。

ファイン株式会社
所在地:東京都品川区南大井3-8-17清水ビル2F
創業:昭和23年
設立:昭和48年10月
事業内容:歯ブラシ及び日用品の製造・販売
代表取締役社長:清水直子
従業員数:19名

SDGs