ひろがる!SDGs経営に取り組む中小企業東京都内中小企業のSDGs推進事例

【公社支援活用事例】2023/12廃棄物処理・サービス業

SDGs経営で
業界全体の魅力向上と人材獲得を目指す

株式会社利根川産業(足立区)

株式会社利根川産業は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています。
業務部・運搬課リーダーの利根川 勧さんはSDGs経営推進プロジェクトのリーダーも兼任する。「SDGsの考え方を学んでみると、大都市の環境に深く関わっている当社の場合、積極的に取り組んでいく責任があると思いました。従業員が夢を抱けるゴールを掲げ、KPIを定め確実に実行していきます。」
「このまま業界全体の人手不足と処分場の不足が深刻化すれば、数年後にはゴミ出し難民が社会的な問題になるのではないかと危惧しています」と語る利根川 勧さん。
東京都足立区の本社は工場の機能も備える。工場内部はもちろん、周辺の道路まで従業員によってきれいに掃除されている。
バッカー車で回収したダンボールやペットボトルが次々と運び込まれ、工場で資源物に生まれ変わっていく。
実は回収からリサイクルまで一貫して行う企業は東京でも限られた存在。
ペットボトルは粉砕・洗浄し5mmの大きさにカット。粉砕洗浄したフレークを専用機で脱水・乾燥させ、その後、金属探知機で異物を確認し専用袋(フレコンパック)に詰め、フレークは繊維原料、BtoB(ボトルtoボトル)原料、シート原料としてリサイクル品に生まれ変わる。
同社が事務所の内装で特にこだわったのが清潔感だ。写真はまるでカフェのような従業員のためのフリースペース。
受付に置かれているSDGsアイコンのインテリアが印象的。
Q 主な事業内容を教えてください。
A 東京23区から排出される一般廃棄物と産業廃棄物の収集運搬業務のほか、古紙のリサイクルRPF(固形燃料)の製造、ペットボトルの完全フレーク化、缶(スチール・アルミ)の圧縮化、ビンのカレット化、発泡スチロールの再生・原料化などが主な事業です。
Q SDGs経営に取り組んだきっかけを教えてください。
A 収集運搬ドライバー、工場内作業の人材不足を解決したいというのが一番の動機でした。これは当社に限ったことではなく、業界全体の課題でもあります。現場のスタッフは高齢化が進んでおり、退職する社員も出てきています。顧客からの要望に応えていくためにも、新しい人材が必要な状況です。しかし、この業種は3Kのイメージが強く、求人広告を出しても効果がないのが現状です。近い将来、ゴミを収集する人材の減少と処分場の不足によって、ゴミ出し難民が社会的な問題になるのではないかと危惧しています。
今後の経営方針や人材に関して公社に相談する中で、『中小企業SDGs経営推進事業』のことを知りました。SDGs経営を推進すれば従業員がやりがいを持って生き生きと働けるようになり、良い人材も獲得できるのではないか、SDGsの取り組みを発信することで自社の競争力を高めることもできるのではないかと考え、ハンズオン支援を申し込みました。
Q 公社アドバイザーはどのような助言をしてくれましたか。
A 最初に「SDGsというのは、国連が定めた世界共通の言語みたいなものです。SDGsが掲げる17の項目は、いわば社会的ニーズの縮図であり、自社で解決できるものを探す指標と考えてください」という助言をいただきました。目標に到達するためのマニュアルがあるわけではないので、2030年に設定したゴールに向けて今やるべきことを積み上げ、中長期のロードマップをつくっていきました。
7年後のこととなると、持続して取り組んでいくのが不可能なプロセスを描いてしまいがちです。ハンズオン支援で公社のアドバイザーに方向修正していただき、環境への貢献はもとより、従業員との向き合い方から地域社会や業界との関わり方などまで、現実的なロードマップをつくることができたと思います。
Q 設定した目標を具体的に教えてください。
A 環境における目標については、プラスチックリサイクルの地産地消を実現し、2050年までに当社事業エリアにおけるプラスチック廃棄物排出量をゼロにすることを目指します。さらに、2030年までにカーボンニュートラルを達成することも目標に掲げました。達成への第一歩として、次世代を担う地域の子どもたちに対し、「使い捨てを前提としない社会」の実現に向けた啓もう活動に取り組んでいきます。
また、従業員が生き生きと働くための環境づくりにおいては、一人ひとりのライフステージに寄り添い、介護・子育ての不安を取り除く制度を構築・運用し、従業員の心理的な健康にも配慮した職場をつくっていきます。さらに、スキルアップする仕組みづくりにも注力することで、部門・個人の主な目標達成率50%を目指し、業界一のチームワークとチャレンジ力を育てていきます。この取り組みは、人材の獲得に必ずつながっていくと思います。
Q 目標を達成するためどんなことに取り組まれていますか?
A 各部門の管理職にSDGs経営の考え方と取り組みの内容を周知し、認識と目指す方向性にズレがないかを確認しています。その後、部門ごとにプランを作成し、目標達成に向けた行動を開始しています。2023年には広報部を新設しました。現在、SNSなどを活用して社内情報を広く発信しています。これは、人手不足を解消する施策のひとつです。その他にも、自社のWEBサイトで社内情報やリサイクルの仕組みなどを発信しています。情報発信を強化したことにより、メディアからの問い合わせが増えており、さらに学生からの見学依頼も届くようになりました。「リサイクル施設に興味がある」「自由研究のために取材したい」など理由は様々ですが、若い方々の環境に対する意識の高さには驚いています。次世代を担う若い方々と接点を持つことも、人材の獲得につながっていくと考えています。
Q SDGs経営の取り組みで上手くいっている点、また苦労している点も教えてください。
A 中長期の経営計画の策定に取り組み、明確な数値目標ができたことによって評価基準もはっきりしてきました。トップダウンではなく、各部門が自発的に目標を定めて行動し、課題解決のために改善を図るようになったことは大きな成果です。
ただし、これを現場の全スタッフと共有することが喫緊の課題です。実際、苦労しており、中長期の経営計画、SDGs経営推進などの表現が難解な印象を与え、「現場には無縁」という印象を持つ従業員が少なくないことも事実です。そこで、現場スタッフの業務に直結する計量器搭載のバッカー車(回収用トラック)を例に挙げるなど、もともと取り組んできたことをSDGsに落とし込み、自分たちが行っていることがどういう未来につながっていくのか、まずは共感を得ることから始めています。その結果、従業員たちの仕事に対するモチベーションが少しずつ変化しているのを感じます。
Q 今後の展開をお聞かせください。
A 私も例外ではなく、日頃の業務では7年先のことよりも明日のことを優先してしまうものです。これは仕方のないことですが、そんな状況が続くと目的を見失ってしまいますから、部門のリーダーは1ヶ月に1回は集まり、各部門が設定した目標と取り組み状況を振り返り、全員で協議するミーティングを行っています。
今後は、当社だけではなく業界全体でSDGsに取り組んでいく必要があると考えています。業界の課題は自社の課題であり、その逆も然りです。業界の協力体制を整えていくことは、未来の東京のライフラインを支えていくことにつながっていくと思います。

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株式会社利根川産業
所在地:東京都足立区入谷8-3-8
設立:1986年5月
事業内容:一般廃棄物収集運搬業、産業廃棄物収集運搬業、産業廃棄物中間処分業、リサイクル業
代表者:利根川 満彦
従業員数:105名(2023年現在)
WEB:https://www.tonegawa-s.co.jp