ひろがる!SDGs経営に取り組む中小企業東京都内中小企業のSDGs推進事例

【公社支援活用事例】2023/12専門・技術サービス業

社員の声に耳を傾け、
サステナブルな輪を自社から業界へ、
そして社会へ広げたい

株式会社東京舞台照明(江東区)

株式会社東京舞台照明は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています。
代表取締役 青野時彦さん。SDGs経営に向き合う思いを経営者の視点から真摯に話していただいた。
「照明機材の設置は高所や野外での作業が少なくありません。従業員の健康と安全への取り組みには特に力を入れています」と話す代表取締役 青野時彦さん。
SDGs経営推進プロジェクトを牽引する管理本部 執行役員 CSR・経営企画 稲津慎司さん。
育休制度の推進などにより現場スタッフには女性が増えている。入社希望は圧倒的に女性が多いという。
毎年、桜の季節には地域貢献活動のひとつとして本社周辺をライトアップしている。
Q 主な事業内容を教えてください。
A コンサートやイベントのライティング(照明)事業をはじめ、舞台・ライブハウス・テーマパークなどにおける照明設備の設営を行っています。同業他社は多数ありますが、舞台の照明を主とする企業では、当社が日本で最大規模です。
Q SDGs経営に取り組んだきっかけを教えてください。
A 業界全体の課題として、技術者の高齢化と、若い方、特に男性の担い手が減少している状況があります。新型コロナウイルスの影響でリアル開催のイベントが軒並み中止になり、ベテラン技術者の離職が増え、また新卒採用を見送る企業が増えました。コロナ禍が落ち着き、需要は戻ってきていますが、照明業界は慢性的な人手不足問題を抱えたままです。スタッフが少ないと、一人ひとりに負荷がかかり、残業時間が増え、離職率を高めることにもつながっていきます。この悪循環を断ち切るためにも、まず経営に携わる私たちが考え方を変えなければならないと思いました。そこで、長く働きたくなる魅力的な会社にするべく、SDGsに取り組むことにしました。
Q 公社アドバイザーはどのような助言をしてくれましたか。
A 「大切なステークホルダーは明確か」をベースに考えながら、SDGsの知識がまったくなかった私たちに、目標を策定できるよう寄り添って伴走してくださいました。そしてミーティングで議論を重ね、従業員のエンゲージメントを高め、業績も向上させるという好循環を生み出すプロセスを明確化できました。ロードマップの作成では、試行錯誤を繰り返していますが、さらにブラッシュアップしながら、SDGs経営への取り組みを社内外に発信していきたいと思います。
Q 設定した目標を具体的に教えてください。
A 経済面では、安定成長を目指し、働きやすく、働きがいのある会社にしていきます。働きやすい環境を築くには、社員一人ひとりの健康管理が欠かせません。夏場などフェスが盛んな時期には屋外作業が増えますので、熱中症対策として、空調服を支給するほか、ヘルメットの装着も徹底するなど、安全面の確保にも注力していきます。
また、ひとくちに照明の仕事といっても、デザイナーを志すスタッフもいれば、舞台やライブ会場での現場作業が好きな人もいます。社員一人ひとりとコミュニケーションを図り、それぞれの望みに応えられる職場づくりに取り組んでいく予定です。
さらに、シニア世代や子育て世代も活躍できる働き方改革にも取り組んでいきます。兼ねてから男性でも育児休暇が取得できる制度を設けているものの、まだ利用する社員は少ない状況です。これも改善していきます。先にもお話ししたとおり、人材の獲得は急務です。まずは、働き方改革を推進し、SDGs経営を発信することで採用面の強化を図ります。また、外国人採用枠を増やしていくことも視野に入れています。
当社は業界大手の責任として、業界全体のことにまで視野を広げていくことが求められています。このニーズに応えることも、SDGs経営の大切な取り組みになります。地方では、東京よりも人手不足が深刻化しています。今後は、地方の企業ともより強く連携して、業界全体で人手不足問題を乗り越えていきたいと考えています。
Q 目標を達成するために、どんなことに取り組まれていますか?
A まずは、社員のSDGs経営に対する理解を深め、取り組みへの意識を高める必要があります。そこで、委員会を立ち上げて定期的な会議を行い、SDGsをテーマとするポスターを作成して社内の目につくところに貼り、一人ひとりがSDGsに自主的に取り組む啓もう活動に注力しています。また、2023年から江東区のプロバスケットボールチーム『東京ユナイテッドバスケットボールクラブ』のサポート企業になりましたので、この活動でも、WebサイトやSNSで当社のSDGsへの取り組みを発信していきます。
魅力的な職場をつくる上では、社員一人ひとりがどんなことに働きがいを感じているのか、どんな不満があるのかを知る必要があります。現在、全社員の声に耳を傾けるべく、アンケート調査を実施中です。
環境面に関しては、無駄な電気使用の削減を徹底するほか、資料のペーパーレス化、現場で使用する照明器具をより消費電力の少ないLED仕様に切り替えることにも取り組んでいます。
Q SDGs経営による社員の変化を教えてください。
A 自発的にエコ活動のわかりやすい図解を作成して啓もうに取り組み、ゴミの分別にも一人ひとりが積極的になるなど、社員の意識が変化しているのを感じます。男性の育休制度に関してもすでに数名が取得しました。
昨今は、終身雇用というとマイナスの印象に捉えられがちですが、当社は創業時から、従業員も家族と考え、現在もこの理念を変えてはいません。だからこそ、アットホームな企業風土が根付いているのです。その企業風土をより高めていく上でも、SDGs経営に取り組むことはとても意義のあることだと考えています。

SDGs経営の取り組みに対するプロジェクトメンバーの声

管理本部 執行役員 CSR・経営企画
稲津 慎司さん
SDGs経営は、当社の大きな課題である人手不足の解決に必要な取り組みだと思い、公社に相談しました。15名のプロジェクトチームを立ち上げ、メンバーと共に2030年までのロードマップを作成する過程で、現場の視点から見た当社の強みと弱みを認識できたことは大きな収穫でした。社員のエンゲイジメントを高めることで、働く人にとってより魅力的な会社になることが、結果、人手不足問題の解決にもつながっていくと考えています。

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株式会社東京舞台照明
所在地:東京都江東区千石1-14-21
設立:1960年10月(旧株式会社東京舞台照明・現株式会社東京舞台照明ホールディングス)
事業内容:アミューズメントパークをはじめ商業施設の演出照明計画、ライトアップ、展示スペースの照明プランニング、ホール・ライブハウス等の照明・舞台機構設備の設計施工やコンサルティング、メンテナンス
代表者:青野 時彦
従業員数:146名(2023年現在)
WEB:https://www.tokyobs.co.jp/tokyobs-t/