ひろがる!SDGs経営に取り組む中小企業東京都内中小企業のSDGs推進事例

【公社支援活用事例】2024/03製造業

浸透している取り組みは、すでにSDGs
自社の強みがあらためて明確に

東京ブレイズ株式会社(世田谷区)

東京ブレイズ株式会社は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています。
「先代が築き軌道に乗せた家業を事業として育てていくのが私の仕事です。特に人材育成は最重要課題と捉えており、働きやすい職場、従業員の豊かな暮らしを実現させるために、SDGs経営に取り組んでいきます」と松 康太郎社長。
「SDGsの施策には製造部や管理部だけではなく、部門の壁を越え、営業部でも積極的に取り組んでいきます」と話すプロジェクトメンバーに在籍する営業部 加藤さん。
SDGs経営を推進するプロジェクトチームは、将来を見据え若手を中心に構成されている。「ミーティングでは松社長と活発な議論を行っています。経営層とも普通に話せるフレンドリーな雰囲気が当社の特徴です」と製造部 加工課 竹内さん。
同社の代表的なろう付装置『連続式水素炉』。クリーンエネルギーである水素を使用しているのでCO2を排出しない。
ミーティングの席では年齢や在籍年数に縛られることなく自由に発言するのが東京ブレイズ株式会社のカルチャー。社員の平均年齢は30代とのこと。女性活躍支援や子育て支援にも積極的に取り組んでおり、女性従業員の比率も高い。
松社長は、国内外での学会発表に加え、溶接学会からの表彰や日本溶接協会会長特別賞を受賞、複数の特許取得にも注力している。また、日本溶接協会や溶接学会の委員会幹事などの要職を担い、コロラド州立大学大学院で英語力を身につけていることから、ろう付材料およびろう付工程のISO国際標準規格を作成する会議の議長も務めている。
Q 主な事業内容を教えてください。
A 当社は「ろう付」に特化した事業を展開しています。ろう付とは、溶接の一つである「ろう接」という金属接合方法のうち、用いる溶加材の融点が450℃以上のものを指します。対して450℃以下のものが「はんだ付」です。家電部品や水栓金具から、ラジエーターなど車のパーツ、さらにロケットの内部構造にも使われており、民生品から航空宇宙産業まで、多岐にわたる分野で必要とされているのがろう付という技術です。当社は55期目を迎えるろう付のトータルサポートカンパニーとして、受託加工のほか、ろう付装置やろう材の製造・販売などを行っています。
Q SDGs経営に取り組んだきっかけを教えてください。
A 当社は100年続く企業を目指し、単にものを作り生み出すだけではなく、「人を活かし、育てる」ことを大切にしています。昨今、SDGsがメディアに取り上げられる機会が増えていますが、テレビや新聞などの報道に接するなかで、当社の大切にしている理念がSDGsそのものであることに気づきました。会社が継続的に成長発展していくことと、持続可能な社会目標を達成することは、同時に進める必要があると考えています。
SDGsにおける持続可能な開発目標の17項目では、環境的な取り組みをはじめとして、社会貢献、さらには教育まで網羅的に設定されています。これらの目標を達成することは、社会と会社、そして社員のためにもなるわけですから、SDGsと重なるところがあれば、きちんと明文化したいと考えたのが、公社のハンズオン支援を申請したきっかけです。
Q 公社アドバイザーとのやりとりで、どのような気づきを得ましたか。
A まずは当社の事業や取り組みにおいて、SDGsと重なるものをアドバイザーと共に明確にしました。アドバイザーの視点が入ることで、当社では当然のこととして行っている多くの取り組みが、実は「SDGsにつながっていた」と知ったのは大きな気づきでした。
Q 具体的に、どんな取り組みがSDGsと重なる部分だったのでしょうか。
A 昨今は日本の労働力不足が問題になっていますが、当社では丁寧な教育とサポート体制により、国籍、性別、年齢にかかわらず、従業員が自律的かつ積極的に働くことができるよう「働きやすい職場づくり」を進めています。さらに当社は創業以来、ほとんどの従業員(パート、派遣社員を含む)を近隣地域の方々から採用しており、地域雇用の創出にも貢献させていただいています。
また、ろう付を必要とする分野は多岐にわたる一方、技術を継承できる人材が世界的に見ても少ない状況下ですので、業界を盛り上げていくために、「ろう付技術の普及・継承」にも努めています。この活動もSDGsが目標とする項目に該当します。
Q 公社のアドバイザーはどのような助言をしてくれましたか。
A アドバイザーとの最初のミーティングで、当社が日々当たり前に実施していることの多くが、すでにSDGsへの取り組みであると指摘いただいた時は驚きました。たとえば、当社が主に使っているろう付装置には、クリーンエネルギーである水素を使用していますのでCO2を排出しません。アドバイザーの助言があるまで、これが自然環境を守る加工法でSDGsにつながっているという意識はありませんでした。日々稼働している装置が、環境にやさしいものだと知ったことで、改めて当社の工場に誇りを持てるようになりました。「すでに浸透しているSDGsと重なる取り組みこそ会社の強みになります。より強化していきましょう」との言葉も、SDGs推進の支えになっています。(プロジェクトメンバー:営業部 加藤さん)
Q 今回のプロジェクトで印象に残っていることを教えてください。
A SDGs経営に取り組むための準備として、全社員を対象とした「会社の強みと弱み」を記載するアンケートを行ったところ、8割以上もの回答がありました。たくさんのフィードバックを得られたうえ、ポジティブな意見が多く、会社をより良くしたいという一人ひとりの思い、そして仕事に取り組む姿勢も伝わってきて感動しました。アドバイザーから「ここまで回答率が高く、皆さんが丁寧に記載してくれる会社は珍しく、東京ブレイズさんの社風を象徴している素晴らしいことだと思います」と言われたのを印象的に憶えています。(プロジェクトメンバー:製造部 加工課 竹内さん)
Q 今後の展開をお聞かせください。
A 2024年1月に開催した全体会議では、全社員に向け、SDGs宣言を行いました。また、プロジェクトメンバーを中心に、ホームページの改修も行い、「ろう付トータル企業の東京ブレイズは、人々が将来にわたって安全に暮らし続けることができるようSDGsを進めてまいります」と明言し、今まさに具体的な活動のスタートラインに立ったところです。これからが本番です。全社員で、わが社のSDGsへの取り組みを盛り上げていきます。

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東京ブレイズ株式会社
所在地:東京都世田谷区南烏山3-23-10
設立:1970年2月
事業内容:ろう付加工・熱処理加工、ろう付材料・ろう付装置・熱交換器の製造・販売
代表者:松 康太郎
従業員数:70名(2023年現在)
WEB:https://www.tokyobraze.co.jp/