ひろがる!SDGs経営に取り組む中小企業東京都内中小企業のSDGs推進事例

【公社支援活用事例】2025/03サービス業

常に10年後の未来を見据えて
地域のライフラインと人材を守る会社であるために

有限会社安田製作所(墨田区)

有限会社安田製作所は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています。
代表取締役の安田篤司社長。ガス・水のトラブルやリフォームまわりの頼れる窓口として地域を支える。
ホームページにも掲載している「安田リサイクルシステム」。長年、当たり前にやってきた活動をSDGsの視点で整理できた。
「サステナブル」という言葉が広く認識される前から、回収機器の細かな分別に取り組んできた。再利用できる部品はリサイクルへ。
回収機器の分解は研修プログラムと捉え、分解作業から機器の仕組みや構造を理解し、修理時の不具合個所の特定や、適切な工具の使用を学び、お客様へ技術力を還元している。
プロジェクトを担当した経理部部長の鈴木隆将さん。「SDGsを会社全体で盛り上げていけるよう仕組み作りをしていきます。」と語る。
Q 主な事業内容を教えてください。
A ガスと水まわりを中心とした住宅設備機器の修理や設置業務を行っています。木風呂をつくる会社として1952年に創業し、先代がガス設備業を始めて、現在では設備全般を手がけるようになりました。水とガスは緊急性の高い対応も求められるため、自社から車で30分圏内に商圏を限定し、利用しやすい出張費ですぐ駆けつけられるようにしています。また、公共事業を事業共同組合で受注し、年間2000〜3000台の給湯器の交換・設置工事を担当しています。
Q 貴社の特色や昨今の経営環境についてお聞かせください。
A 当社は、ここ墨田区で長く顔の見える営業をしていますので、その場限りの工事は許されません。お風呂やキッチンのリフォームに際しては、配管を刷新したり耐久性の高い部材を用いたりするなど、10年後を見据えてご提案しています。そして、お客様が安心してサービスを受けられるよう、見積り費用を明確に説明し、ご納得いただいてから作業を行っています。おかげさまで、成約率も9割近く、地域のお客様に恵まれて経営を続けています。一方、昨今は設備機器の激安価格を売りとした企業が台頭し、中には不当な請求をするような悪質事業者もいるようなので、業界に対して悪い印象を持たれることを懸念しています。また、業界を取り巻く環境としては、人材確保に悩んでいる企業が多数あると感じています。
Q 公社のSDGs経営ハンズオン支援を受けてみようと思った経緯を教えてください。
A 当社においても、人材確保・人材育成は大きな課題です。現在、求人に対して一定数の応募はいただいていますが、技術職は現場を任せるまでに3年程度かかりますし、充実までにはまだまだ長い道のりです。今の学生は学校でSDGsを学び、サステナブルについて身近に感じているのではと考え、独自にSDGsへの取り組みをホームページに掲載していましたが、当社の事業内容とSDGsの密接な関係をどう表現すればよいか、一度専門家に相談してみたいと思っていました。
そうした中、かねてからお付き合いのあった東京都中小企業診断士協会からの声掛けで、環境省の「バリューチェーン全体での脱炭素化推進モデル事業」に構成企業として参画することとなりました。そのネットワークの中で、公社のSDGs経営ハンズオン支援を知り、志願したことが始まりでした。
Q ハンズオン支援では、具体的にどのような取り組みをされたのでしょうか?
A 公社のアドバイザーには、まず当社の経営理念や方針を理解していただき、その後6回にわたる個別面談で勉強会の開催、現状把握、優先課題の決定、SDGs目標の設定、HPでの発信準備までを伴走いただきました。
具体的には、当社では環境整備の一環として雨水を社内のトイレに再利用しています。また、お客様へガス機器をご提案する際、排気熱を再利用したエネルギー効率の良いエコジョーズを紹介するなど、環境に配慮した取り組みを行っています。それらがSDGs17の目標とどう結びついているのかアドバイスをいただきました。ハンズオン支援のゴールとしては、ホームページ改修のコンテンツシートを監修していただき、支援終了となりました。
Q 公社のアドバイザーはどのような助言をしてくれましたか。
A SDGsというと何か特別なことをしなくてはいけないイメージでしたが、アドバイザーの指摘で、当社が当たり前に行っていたことがSDGsにつながっていたことが改めて整理できました。当社では回収した機器を持ち帰って非常に細かく分解・分別してリサイクルに回しているのですが、この作業が社員教育や技術の向上にも直結していることを再認識しました。今回の支援をきっかけに、この回収機器の分別を「安田リサイクルシステム」と命名し、広く周知していく予定です。
また、アドバイザーとは、SDGsのみならず経営面でも非常に有意義なお打ち合わせができました。支援を通して当社の強みを明確にすることができ、図式化した「バリューチェーンマッピング」や「安田リサイクルシステム」をホームページでも掲載できたことは大きな成果です。
Q 目標を達成するためどんなことに取り組まれていますか?
A
「新しい力と確かな技術力を身につけ、地域のライフラインと人材を守る会社であり続けます」
まず、経営理念を軸とした宣言を定めました。具体的内容については、今後社員に委ねて、背伸びしない設定を目指していきたいです。次年度より、経営計画書に記載されている「社内環境整備に関する方針」を「SDGsに関する方針」に変更し、現行の「社内環境委員会」において、環境整備と同時にSDGsを全社員に波及させる活動をしていく予定です。まずは社員皆の理解から、と考えています。
Q SDGs経営への取り組みを機に、どのような展望を考えていますか?
A 今般、タイミングよく墨田区がSDGsアワードを実施することとなり、ハンズオン支援で作成した内容をもとにエントリーしたところ、準アワードを受賞することができました。支援をとおして勉強したことが社員一人ひとりに浸透し、自分の家族に「うちの会社は技術を磨くだけでなく、地球環境も意識して仕事しているんだ」と誇りを持って言ってもらえるようになると嬉しいです。今後は、例えば、当社が設備を担当している区内の特別支援学校から障害者雇用を実現するなど、さらに地域貢献を進めたいと考えています。SDGsを機に、会社の変革を一緒に考えていける仲間が増えていくことが、一番理想的ですね。

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有限会社安田製作所
所在地:東京都墨田区東向島6-64-1
設立:1952年12月19日
事業内容:住宅設備のメンテナンス事業および公共事業指定工事店
代表者:安田篤司
従業員数:17名(2024年現在)
WEB:https://yasuda-gas.com/company/