ひろがる!SDGs経営に取り組む中小企業東京都内中小企業のSDGs推進事例

【公社支援活用事例】2025/11製造業

環境と人へのやさしい挑戦で
100年企業を目指す

昭和ワニス株式会社(足立区)

昭和ワニス株式会社は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています。
左より、工場長の津久井さん、代表の川村さん、総務・経理部長の小堀さん。創業から88年という長い歴史を持つ会社と共に歩んできた。
2024年4月に発行した「環境経営レポート」には、過去10年間のエネルギー使用量、CO2排出量の推移が網羅されている。長きに渡り、管理が行き届いていた証。
会社が長く続いてきたからには理由があると語る川村社長。創業時からの長い歴史に甘んじることなく、お客様の信頼に応える企業を目指していく。
経費削減のための「もったいない精神」が、SDGsの理念と結びつき、無駄の削減と環境負荷の低減につながったと話す津久井工場長。
今年度は、製造現場希望の女性も入社。働きやすい職場づくりで、社員のチャレンジ精神を支える小堀部長。
ワニスは印刷インキや塗料の原料として欠かせない存在。衣・食・住のさまざまな場面で活躍する、まさに縁の下の力持ち。
女性も活躍する製造現場。多様な人材の活躍を支援し、柔軟な働き方の実現に向けた取り組みに力を入れている。
人材確保の面でも、SDGsへの取り組みは重要な要素。採用パンフレットでは、環境や働きやすさなどの情報を発信。
Q 主な事業内容とビジネス環境について教えてください。
A ワニスの製造販売を行っています。ワニスは印刷インキや塗料の原料として、雑誌やカタログ、食品パッケージ、建造物の外壁塗装から自動車部品、電子機器まで、あらゆるものに使用されており、私たちの生活を取り巻く様々な製品に不可欠なものです。
当社は主に印刷インキや塗料メーカーを取引先としていますが、新聞やチラシといった紙媒体の減少により、印刷インキ業界の規模は毎年縮小傾向にあります。一方で、電子材料関係には、まだ伸びる余地があると感じています。また、生産体制も変わってきました。紙媒体が主流だった頃は、一度の受注量が大きかったのですが、今は用途が多様化し、一つひとつの受注が細かくなっています。そのため、細かい仕事を短いサイクルで素早く回す生産体制が求められており、こうした市場の変化に柔軟に対応しています。
Q SDGs経営に取り組もうとした経緯を教えてください。
A 主要取引先である大手企業がSDGsへの対応を加速させ、サプライチェーン全体に協力を求めるようになってきました。製造工程におけるCO2排出量などの情報提供に対応していくことは、取引継続において重要な要素となってきています。こうした要因に加え、地球規模での環境問題や社会課題への意識の高まりを受け、企業としてこの時代の流れを捉え、会社の持続的な成長と発展につなげていきたいという思いから、本格的にSDGs経営に取り組むことを決断しました。
Q 公社のハンズオン支援は、どのように進めていかれたのでしょうか。
A まず全従業員を集めて、SDGsの基本的な考え方や取り組む意義について説明し、社内全体の意識を高めることから始めました。その後、従業員一人ひとりから意見を募り、100件以上の具体的な実施活動を洗い出しました。それらを「環境」「社会」「社員」といったテーマごとに整理し、それぞれの活動がSDGsのどのゴールに関連しているかを可視化してまとめ、実行のためのロードマップを作成しました。
Q 公社のアドバイザーからは、どのような助言がありましたか。
A 公社のアドバイザーに現場を調査していただいた結果、当社が習慣化してきた取り組みが、すでにSDGsにつながっていたことが明らかになりました。たとえば、排水処理で発生する汚泥については、廃棄コストを抑えるために脱水機で水分を除去し、排熱や天日干しでさらに乾燥させて重量を軽量化したうえで運搬業者に引き渡していました。この取り組みに対し、アドバイザーから「これはまさにSDGsの実践です」と評価をいただいたのです。汚泥の重量が減ったことで、運搬トラックの回数が年間4回から1回に減り、結果としてCO2排出量も約4分の1に削減されていました。経費削減を目的に始めたことが、実は環境配慮にもつながっていたという気づきは、私たちにとって大きな学びとなりました。
Q SDGs経営に取り組みはじめて、どのような変化がありましたか。
A 最も大きな変化は、従業員の環境に対する意識が格段に高まったことです。最近では休憩時間などに「エア漏れを直すといいね」「まだLEDに変わっていない場所があるよ」といった、省エネや環境に関する話が自然と交わされるようになりました。社員の主体性も大きく向上しており、「CO2削減のために、通勤経路をもっと効率化できないか」といった提案が社員から出るようになったり、「今年はどれくらいCO2を削減できたのか」と、自発的に成果を気にかける姿勢が見られるようになりました。
従業員が働きがいを感じられる職場づくりにも注力しており、今年は製造部門に女性社員が加わったことを受けて、更衣室を新たに設置しました。誰もが安心して働ける環境づくりを、これからも進めていきたいです。
また、歴史的な文化財の保護活動にも力を入れており、地域社会への貢献を大切にしています。
Q 今後の展開について目標を教えてください。
A
SDGsへの取り組みを社外に発信するための具体策として、2026年上期に、SDGsに関する方針をホームページで公表する予定です。環境認証の取得も視野に入れ、品質だけでなく環境にも配慮した製造体制であることをアピールしていきます。
当社は創業から88年、インクを使った日本の産業を支えてきました。今回、ハンズオン支援の取り組みを通して、自分たちではなかなか気づかなかった自社の強みや会社が長く続いてきた理由が分かった気がしています。SDGsを会社の技量を高める機会と捉え、創業100周年に向けて、持続的な進化を目指してまいります。

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昭和ワニス株式会社
所在地:東京都足立区島根三丁目7番9号
設立:1937年2月
事業内容:ワニスの製造・販売
代表者:川村浩
従業員数:75名
WEB:https://www.showa-varnish.co.jp/