ひろがる!SDGs経営に取り組む中小企業東京都内中小企業のSDGs推進事例

【公社支援活用事例】2025/12小売業

「すべての人にウェルビーイングを。」
願い込め、魚食を通じて貢献

株式会社七寶商會(調布市)

株式会社七寶商會は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています。
宅配や調理を担っているスタッフの皆さん。魚を見る目も確かなベテラン揃い。中央は社長の光野さん。
今回の支援で知識が得られたので、今後はどう行動に移すかを考えていきたいと語る光野社長。
鮮魚が並ぶショーケースを載せたトラックは、まるで魚屋さんそのもの。
益子焼の器で旬魚のお造りをお届けするサービスも展開。プラスチック容器を削減し、陶芸家の活躍の場を創出することにもつながっている。
Q 主な事業内容を教えてください。
A ショーケースが付いた小型トラックでお客様のお宅を一軒一軒回り魚の販売をしている、いわば移動鮮魚店です。昭和53年に先代が創業し、50年近く同じやり方で商売を続けています。当時は、お客様を待つよりもこちらから積極的にお伺いしようという思いからこのような販売スタイルになったのだと思いますが、今では、買い物に行きづらいご高齢の方や、下ごしらえに手間をかけずに魚を楽しみたいという方々を中心にご利用いただいています。
Q どのようなきっかけで、SDGs経営に取り組もうと思われたのでしょうか。
A 「みたかSDGs経営ネットワーク」に参加したことがきっかけで、東京都中小企業振興公社の支援事業を知りました。最初は正直、SDGsは大企業が取り組むもので、私たちのような小さな会社にはあまり関係のない話だと思っていました。けれど、公社のアドバイザーから、SDGsとはどのようなものか説明を受けるうちに深く共感するようになりました。特に、ゴールから逆算して考える「バックキャスト」という方法に興味を持ちました。そういったアプローチを身に付けることで、小さなことでも全体を考えて物事を進めていくことができるようになるといいですし、自分はもちろんですが、スタッフにもそういった考え方を身に付けてもらえたらと感じました。
Q ハンズオン支援での活動や、利用された感想をお聞かせください。
A スタッフも交えたミーティングを月に1~2回開催し、約6か月間にわたりアドバイザーから指導をいただきました。「新しいことを無理に始めるのではなく、すでに行っている取り組みの中にSDGsの視点を見出すことが大切」というアドバイスのもと、わかりやすいワークシートを用いながら自社の強みを洗い出していきました。私たちの事業の中にある「すでにSDGsに貢献している点」をアドバイザーが一つひとつ見つけてくださるたびに、スタッフの表情が明るくなっていくのを感じましたし、「自分たちの仕事が社会の役に立っているのだ」と気づいたことで日々の仕事に誇りが持てるようになり、スタッフにやる気が生まれてきました。アドバイザーは、当社の現状や規模に合わせて丁寧に寄り添いながら、専門家の視点で的確に活動を後押ししてくださいました。とても褒め上手で、私たちの良さを引き出してくださったことが、SDGsへの前向きな意識につながったと思います。
Q 主なSDGsの取り組みについて教えてください。
A 今回の支援を機に「すべての人にウェルビーイングを。」というSDGsの目標を設定しました。お子様からご高齢の方まで、お忙しい方も、おひとり暮らしの方も、「魚食」を通してすべての方々が健康的で豊かな食生活を送れるよう貢献したいという願いを込めています。
また、スタッフが主体となって、日々の業務に関するマニュアルづくりを進めています。担当者によってやり方にばらつきがあり、どのように意識を揃えていけばよいか悩んでいたときに、アドバイザーから「マニュアルづくり」の事例を教えていただきました。例えば、冷蔵庫の整理整頓方法や掃除のタイミングなど、一見小さなことのように思える部分を見直し、「誰がやっても同じ品質を保てる仕組み」を整えています。まだ取り組みは始まったばかりですが、スタッフの意識を揃え、働きやすい職場づくりや食品ロス削減にもつなげていきたいと考えています。
Q ハンズオン支援を受けて、どのような変化がありましたか。
A SDGs経営に取り組み始めたことで、まず社内の意識が変わり、仕事の一つひとつに対する「なぜそれをするのか」という理解が深まりました。その結果、整理整頓や衛生管理などの基本的な業務もより丁寧に行われるようになり、品質の向上につながっていると感じます。
また、お客様のウェルビーイングを中心に考えるようになったことで、商品の提供方法についても深く考えるようになりました。例えば、「簡単に食べられる形状にカットする」「調味料もセットにする」「手軽で美味しい調理方法を研究して提案する」といった工夫です。SDGs経営は、会社の土台を整える取り組みであり、長い目で見れば企業価値を高め、選ばれる会社へと成長していくための大切なプロセスだと感じています。
Q 今後の展望を教えてください。
A
先代社長は、「人の成長」が「より良い社会の実現」につながると信じておりました。SDGs経営は、その思いと深く通じていると感じています。なぜなら、SDGsとは自分のことだけでなく、まわりの人や社会のことを思いやる姿勢だと思うからです。こうした他者や社会を思いやる視点を持ち続けることで、スタッフ一人ひとりが人として成長し、会社も社会も少しずつ良くなっていくはずです。
その視点を育てるためにも、マニュアル作りを通して仕組みを整えたいと考えています。日々の行動が整うことで視野が広がり、互いを思いやる意識が自然に育まれていく——それが、誰もが働きやすい職場づくりにつながると思います。自分のことばかりでなく、まわりの人のことを思いやれる——職場がそんな“利他の心”を育む場になることが理想です。そして、育まれた思いやりの心が会社の業務を通じて社会へと温かく還元されていく、その循環をつくることが、これからの目標です。

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株式会社七寶商會
所在地:東京都調布市深大寺北町2-55-5 七寶ビル
設立:1988年4月
事業内容:魚介類の販売、健康食品の製造・販売、書籍の出版・販売
代表者:光野成美
従業員数:7名
WEB:https://www.shichiho.biz/