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価格交渉アドバイザー 相談事例

相談事例1

■相談内容:エネルギーコスト・労務費の価格転嫁ができていない

 製造業を営み、事業としては、ほとんどが1次下請です。昨今の経営状況については、物価高騰の影響を受け、厳しいものになっています。特にエネルギーコストの上昇と労務費の上昇が経営を圧迫しており、取引先にこの上昇分を認めてもらうように交渉していますが、実質的には価格に転嫁できていません。このような状況の中、どのように交渉したらいいか教えてください。

■価格交渉アドバイザーからの助言

 まずは、エネルギーコスト・労務費に関する価格推移の情報を収集します。それから、原価・利益管理を詳細に行い、交渉の目標価格を決定して、どのように交渉を行うか戦略を策定します。交渉の前には、相手との取引関係、競合企業の状況把握、交渉のタイミングを図る等、綿密な準備が必要です。また、実際の交渉においては、口頭で値上げ要請を行うのではなく、価格が上昇していることを示すエビデンスを記した文書を提示します。そして、一方的に値上げを主張する態度で交渉するのではなく、誠実な態度で交渉に臨みます。
 社内においては、価格交渉を担当者任せにすることなく、営業会議等で各担当者の価格交渉の進捗を共有し、今後の方針を皆で検討する等、会社全体で価格転嫁に取り組んでいくことも重要です。

■利用企業の声

 これまで、取引先との価格交渉の打診は口頭で行っていましたが、価格高騰のエビデンスを記した文書を作成・提示して交渉を行うようにしました。また、経営会議においても、交渉の実態を報告することにより、今迄よりも「より会社全体」で今後の展開を検討するようになりました。すると、全ての取引先とまでは言えませんが、一部の取引先では、以前よりも交渉が進むようになり、その結果、価格転嫁が実現した事例も出てきました。まだ第一段階かもしれませんが、今後も会社全体で取り組み、粘り強く交渉を進めていきたいと思います。

相談事例2

■相談内容:コスト高騰が続き、2年連続で取引先に値上げをお願いしたい

 大手企業の原材料仕入先から一方的な値上げ通告を受けて、これ以上コストを吸収しきれない状況です。また、一方で、事業の性質上、他の製造業よりも経費に占める電気料金の割合が高く、高止まりする電気料金が収益圧迫の要因となっています。そのような状況で、取引先に対しては失注を覚悟で取引価格の値上げ交渉を行い、値上げを受け入れてもらいましたが、引き続きコスト上昇が続いており、来年度も取引価格の値上げを行いたいと思っています。再び受け入れてもらえるかが不安ですが、2年連続で値上げ交渉を行っても良いでしょうか。

■価格交渉アドバイザーからの助言

 多くの企業が原材料、労務費、エネルギーコストが上昇していることを認識しているので、たとえ2年連続の値上げ要請であっても、値上げの根拠を取引先に示して再度値上げを要請することに、私は違和感を覚えません。取引先担当者で話が止まってしまわないように、書面で正式に面談を依頼しましょう。合わせて、取引先担当者とは連絡を密にして、値上げを依頼せざるを得ない状況にあることを事前に説明しておくことも重要です。また、値上げのタイミングを失しないよう注意し、競合他社の値上げの動向を掴む等、営業担当者の情報収集活動は欠かせません。

■利用企業の声

 2年連続の値上げ要請も無理な要求ではないとの助言を得て、値上げ要請を書面で正式に申し入れるなど、相当の覚悟をもって値上げを行う姿勢を示すことで、取引先の理解を得やすくなるだろうと、考えの整理ができました。また、事前に取引先の担当者に値上げ要請する旨を伝えておくことも重要であることが理解できました。
 製品の値上げにより、コスト上昇分の補填のみならず、賃金の引き上げ等従業員の待遇改善を行うことで、従業員の意欲の向上や円滑な新規採用が期待でき、取引先のためにより良い製品作りに邁進していけると思います。
 この度の支援につきましては大変参考になることが多く勉強になりました。このような貴重な機会を頂きまして改めて感謝御礼申し上げます。

価格交渉アドバイザーから価格交渉のポイント

1.値上げの根拠を取引先に示す

 原材料やエネルギーコストが上昇していることを示すエビデンスを提示することが望まれます。取引先も購入する製品のコストが上昇していることを理解できますし、取引先の担当者が社内での説明を行うために使用されます。また、すべての自社のコスト構造を取引先に晒す必要はありません。必要に応じてコスト上昇分のみならず、一定の粗利率を確保するために、コスト上昇分以上の値上げを行いたいところです。

2.原価・利益管理を行い、交渉の目標価格を設定する

 製品のコストを把握することで、どの製品に、いくらのコスト上昇分を上乗せする必要があるのかが明らかになります。自社の目標価格、最初に提示する価格、妥協できる価格等を用意して、価格交渉に臨みます。必ずしも自社の思い通りにはならないことがあるため、複数の交渉の筋書きを準備しておくことも重要です。

3.取引先の担当者と連絡を密にする

 価格交渉を開始するタイミングはとても重要です。様々なコストが上昇する兆候があれば、常日頃から取引担当者に伝えておくことで、取引先担当者は、社内での情報周知や予算の見直しといった事前準備ができ、値上げを受け入れる土壌を整えやすいです。取引先担当者は、価格のみならず、安定的な調達や品質にも関心が高いため、自社が取引先にとって、どのような立場にあるかについて、取引先担当者から情報収集を行うことも大切です。

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