事例集

●事例01

飲食店居抜き店舗サブリース及び売買事業
第1回東京シニアビジネスグランプリ 最優秀賞
 
株式会社アソルティ
代表取締役 伊藤 彰さん

代表者インタビュー

事業内容や特徴を教えてください。
弊社は、飲食店舗を専門に扱う不動産会社です。ただし、椅子やテーブルなどの調度品や厨房機器などが残ったままの状態で大家さんから借り受け、貸主としてテナントへご提供する「居抜き店舗」を専門に扱うサブリース事業を展開しています。
実は、居抜き店舗を仲介する不動産会社は数多くあるのですが、弊社の大きな特徴は、大家さんから物件をお預かりして転貸するシステムを構築していることにあります。このシステムは大家さんにとって『空室保証』と『滞納保証』という大きなメリットがあるのです。お借りした物件が空室でも弊社が賃料のお支払いを続けますし、賃料の支払い遅延などがあった場合も弊社がお支払いすることになるわけです。
なぜ、飲食店舗のサブリースに注目したのですか。
私が大学を卒業して就職した頃はバブル期。不動産会社や証券会社が隆盛を極めていた時代です。就職先として選んだのが大手不動産会社でした。国内外で大型オフィスビルの開発や管理などを行っており、経営していたのはいわゆるカリスマ社長です。その側近として勤務していた経験が私のビジネスに対する考え方の原点です。社長からは「雑用でも手を抜くな」「ビジネスは日々の積み重ね、1日の差が10年後の結果に出る」など多くのことを学ばせてもらいました。深夜帰宅、早朝出勤、緊張感のある毎日でしたが、振り返ってみると貴重な経験だったと思います。
退職後、飲食店を専門に仲介する不動産会社を営む友人から相談を受ける機会があり、飲食店を始めたいという人が多くいること、また都内では飲食店の約50%は開業後約2年で廃業、月間で約500軒の飲食店舗が閉店している現実も知りました。皆さんが苦労しているのは開業資金と立ち上がりの資金繰りです。そこで、日本ではまだ普及していない不動産のサブリースと居抜き店舗を組み合わせる事業を考えました。飲食店専門のサブリースは、他の賃貸物件に比べて専門性が高く、一般の不動産会社ではほとんど扱っていません。また、大きな資本を動かす大手不動産会社やデベロッパーはニッチなマーケットだから参入してこないはず。ベンチャー企業でも勝負できると考えたのです。
起業の際に苦労された点があれば教えてください。
ベンチャー企業は信用を得るのが難しい。これに尽きます。まずは起業するための資金調達に信用の壁があります。投資家に連絡をしてもほとんどは門前払い。事業計画書の練り直しを求められるのは良いほうでした。
さらに、もうひとつ大きな壁がありました。このビジネスは物件があってこそ成立する事業。ところが、実績がないので大家さんから信用されません。物件を貸していただけないのです。実績がないので信用されない。これは新しいことをやろうとするベンチャー企業が必ず乗り越えなければならない壁だと思います。
どのように信用を獲得していったのですか。
信用とは見えるものではありません。でも、目指す方向、また事業内容を解説するツールはあります。そのひとつが会社案内です。それまで使っていた簡易なものではなく、金融機関や大家さんにお渡しするために、しっかりしたものに作り変えました。
いっぽうで、大家さんや店を始めたい人、また閉店を考えている方に向けたリーフレットを配布し続けました。1千枚でだめなら2千枚、2千枚で2件のレスポンスがあれば1万枚に増やし10件のレスポンスを得るといった地道な作業です。でも、金融機関や投資家へ話をする際、需要を数字で示せるようになっていったのです。
また、自社HP内に飲食店を開業する人に向けて「店サポ」というコンテンツを設け、物件情報や飲食関連のニュースのほかに、開業にあたって注意するポイントや店を繁盛させるためのヒントなどのコラム記事を掲載しています。基本的に毎日、ほとんどは私が執筆しており、不動産業界に長く携わり得た知識や経験があるからこそ書ける内容として、今では、弊社をネット検索した大家さんの信用を得るツールとして役立っています。
ということで、サラリーマン時代にカリスマ社長から学んだ「ビジネスは日々の積み重ね、1日の差が10年後の結果に出る」、地道にそれを実践して信用という壁を突破していきました。経験から身についたビジネスへの取り組み方や専門的な知識はシニア世代の方が創業するうえで大きな武器になると思います。
創業から6年、最近では社員の提案から新規事業のアイデアも生まれています。そのひとつがダンススタジオを時間貸しする事業です。飲食店サブリース事業で培ったノウハウをベースにしながら、今後は全社員で新たなマーケットを開拓していこうと考えています。
★シニア世代の方に創業のポイントなどを教えてください。
シニア世代の方は、それまでの蓄えや退職金を元手に起業しようと考えるのが普通です。でもそのお金は使わないようにしましょう。起業のための資金は正々堂々と集めれば良いのです。自分の「お財布」から出してしまうと、「失敗してもどうせ自分のお金だから」と事業計画にも甘えが出ます。しかし、資金を集める場合は、事業計画書と熱意だけを頼りに理解を得る必要があります。銀行や投資家は、将来性のない事業にはお金を出しません。最初は、計画の甘さを厳しく指摘されて心が折れそうになるかもしれません。でも、その指摘を受けとめて粘り強く計画の見直しを重ねる作業はとても重要です。百戦錬磨の相手を納得させて、融資や資金提供を得られた事業なら、成功する確率は高いのです。ぜひ、数字とにらめっこしてください。そして、1年後、3年後の「事業のカタチ」を、熱く語ってください。

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