事例集

●事例04

日本初のキャッシュバックアプリを開発・運営
第1回東京シニアビジネスグランプリ ファイナリスト
 
キャッシュビー株式会社
代表取締役社長 小川 拓也さん

代表者インタビュー

事業内容や特徴を教えてください。
弊社は、ユーザーが消費財メーカーなどの広告を閲覧してアンケートに答え、店舗にて対象の商品を購入するとキャッシュバックされるアプリ「キャッシュビー」の開発・運営を行っております。このアプリは、生活者と販売するメーカーのそれぞれに価値を提供する仕組みを持っておりこれが最大の特徴です。
まず、ユーザーにとっての価値ですが、通常、買い物をした際に付与される既存のポイントは、多くの場合、購入した店舗や系列店だけで有効になります。キャッシュビーは商品ごとにキャッシュバックサービスを設定しているので店舗が限定されることはありません。つまり、どこで買う?ではなく、何を買うかなのです。しかもキャッシュビーは、ポイントではなく現金が銀行口座に還元される仕組みを持っています。
いっぽうメーカーにとっての価値は、ユーザーに向けてダイレクトに効果的な広告・リサーチ・販促を展開できる点にあります。メーカーから生活者に対してのダイレクトマーケティングができるわけです。つまりキャッシュビーは、企業と生活者をパーソナライズされた高品質なコミュニケーションでつなぐことを可能としたのです。
起業するまでの経緯と準備のことをお聞かせください。
私は長年にわたりマーケティング会社に勤務していました。主に担当していたのが食品や日用品の消費財メーカーです。多くの案件に携わっていくなかで、常にある問題意識を持っており、経験を重ねるほどに強くなっていきました。それは、メーカーがマスメディアを利用したコマーシャルを展開してもダイレクトにユーザーの購買意欲につながらない場合が多いのではないか?コストがかかりすぎているのではないか?というシンプルなことです。
アメリカなどの先進国では、メーカーがダイレクトマーケティングを実施できる仕組みが確立されており、生活者がキャッシュバックサービスを利用することも一般的になっています。キャッシュバックサービスはマーケティングの観点からみても優れた仕組みです。誰も手を付けないのなら自分が作るしかない。そんな思いから起業を決意しました。
ただし、海外の事例をそのまま日本に持ってきても、景品表示法などの規制があり世に出せません。法的な規制の壁を乗り越えることが起業準備における重要な仕事でした。まずは弁護士の方に相談し、議論とシミュレーションを重ね、時間をかけて法的なことをクリアする仕様に仕上げていきました。同時に、この仕組みの柱はユーザーに現金が還元されることにあるわけですから、銀行の振込手数料が問題になります。メガバンクとも粘り強く交渉を重ね、賛同を得て、振込手数料の壁も突破していきました。
また、私はマーケティングの専門家ですから、仕組みを作ることはできるのですが、アプリに落とし込むためのプログラミングはその道のプロに任せることになります。外部委託はしないと決めていましたから、それまで共に仕事をしてきた信頼できるエンジニアたちに、このアプリのこと、また将来の夢を熱く語り、創業メンバーを集めていきました。
事業を成長させていくうえで苦労している点を教えてください。
やはりユーザーの獲得です。実は、創業1年目にユーザーの獲得を目的とする大規模な広告展開を行い、アプリのダウンロード数が一気に跳ね上がることもあったのです。しかし、キャンペーンで獲得したユーザーのほとんどは付与した特典が目当て。キャンペーンが終わるとほとんどの人は離れていきました。時を巻き戻せるのなら、あの時のコストは開発や人材獲得に使います。経験したからこそ学べた貴重な失敗談です。
それでも、多くのクライアントと契約できており、対象商品も着実に増えています。比例するようにユーザー数も増え、事業の方向性は間違っていないという手応えも感じています。これからは親和性の高いサービスとの事業連携を図り、また旅行や習い事にまで対象を拡大させるなどの策を講じて加速度的に利用者を増やしていく予定です。
シニアビジネスグランプリに参加した感想などをお聞かせください。
ファイナリストの皆さんによるプレゼンテーションを拝見して、同年代の方々が、熱意を持って様々な事業にチャレンジしていることに共感し、学ぶことも多かったです。シニア世代は専門的な知識と技術・経験・ネットワークという基盤があります。得意とする分野で起業すれば成功する確率は高いと思います。
★シニア世代の方に創業のポイントなどを教えてください。
ご存じの通り、起業には大きなリスクがあります。準備段階でリスクの芽を摘んでおくことがポイントになります。具体的には、なるべく多くの経営者から客観的な意見を聞いて事業計画を練り直したり、専門家を巻き込むことも大切です。起業の際は、資金調達や経理、労務など、会社員時代には触れることがなかった知識も必要になります。事業によっては特許や商標なども関わってくるでしょう。そこでお勧めしたいのが東京都中小企業振興公社のサービスを利用すること。公的機関なので相談は基本的に無料。各分野の専門家やコンサルタントが創業に関する「いろは」から教えてくれて、事業計画の改善点などをアドバイスしてくれます。

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