事例集

●事例06

気軽に写真作品制作ができるラボを開設
第1回東京シニアビジネスグランプリ ファイナリスト
 
合同会社プリントフォト企画
清水 政弘さん

代表者インタビュー

事業内容や起業に至る経緯などをお話しください。
弊社は、主に写真愛好家から作品のデータをお預かりして、インクジェットプリンターを使い大判写真へ出力するサービスなどを提供しています。
写真やプリントに携わる会社に勤めていたので、写真愛好家の中には一般的なA4サイズではなく「もっと大きな作品を作りたい」というニーズがあることはわかっていました。しかも、街中の出力センターなどへ依頼した場合、「明暗やコントラスト、色調、出力するペーパーなどにこだわりたい」という要望が叶えられないことが多いのです。このマーケットはニッチではありますが安定した需要が見込めます。
また、私には「80歳になっても現役で働き続ける」という目標があります。勤めていた会社の定年は65歳で、その年齢に達したときに動き出しても遅いと感じました。いろいろなタイミングを考えた結果、今決断しようと決めました。
シニア世代での起業では「家族の反対で断念する」という話をよく聞きます。ご家族にはどんな話をされましたか。
定年後の起業を考え始めてから、家族とは折に触れ話をしてきました。ですから、いよいよ起業しようと決めた時も、「そんなの聞いていない!」とはならなかったのです。ただし家族とは1つ約束しました。「金融機関からの借り入れはしない」、これが厳格な誓いです(笑)。
弊社の場合はそれほど大きな経費をかけなくても運営できます。大きな固定費は事務所の家賃くらいのもの。その家賃も足立区が行っている創業支援施設の利用が叶ったのでかなり軽減されています。つまり、個人的に積み立てていた貯蓄とお小遣いで運営できているわけです。
想定していなかった問題点はありましたか。
きちんと構成・デザインしたホームページ作りを後回しにしたことは失敗でした。創業時に簡単なホームページは開設したのですがあくまで暫定版です。ご存じのように名刺交換した営業先の方がまずチェックするのがホームページ。そのことを甘く見ていたことは苦い経験になりました。
私の場合、起業準備はひとりで行いました。事業計画書の作成や営業活動、法人化の手続き、事務所の物件探し、助成金申請など、もちろん初めて取り組むことばかりです。やらなければならない仕事が溜まっていきます。ということで、とりあえず起業するための準備と、目の前にある仕事から手を付けていってしまったのです。起業準備では「何がいつまでに必要か」「重要度の順位は」などを書き出し、日々更新していくことがポイントになります。「まずはひとりでスタート」と考えている方は、とにかく忙しくなりますが、もしホームページを持つことが重要である場合、作成は優先して行ったほうが良いと思います。
今後の事業展開などを教えてください。
愛好家が自分で楽しむための大判プリントサービスに加え、「プリント写真作品の販売」を計画しています。現在、ホームページを作成するために公社の専門家派遣を受けているのですが、その中で専門家からは「写真 インテリア 販売」というキーワード検索が増えていることを調べてもらいました。つまり、絵画のように「飾るための写真」の需要が高まっているのです。この「プリント写真作品の販売」は事業としての可能性を感じています。
また、一般的な方がスマートフォンに保存している写真にも注目しています。データで保存していても、端末の故障や破損で失ってしまうケースが多いのです。その失われるデータには、子どもの成長記録など、二度と撮ることのできない貴重なシーンが多いものです。そこで、スマートフォンに格納された写真をカードサイズにプリントしてアルバム的に残す事業も立ち上げたいと考えています。
フィルムカメラの時代には一枚一枚の写真を丁寧に撮影してアルバムに保存していました。でもスマホ時代になってからは、プリントしないどころか再生さえもされない写真が多いのです。デジタル化されて手軽になったことで一枚の写真の重みや価値が薄れてきているのは間違いないでしょう。時代に合った「新しい写真プリントを提供することで写真業界に貢献したい」とも考えています。
シニアビジネスグランプリに参加した感想などをお聞かせください。
「起業」というキーワードでネット検索をしてみると、様々なセミナーやコンサルティングがヒットします。その中でも、公的機関である公社が行うセミナーであれば信頼できそうなので参加しました。
私の場合、第1回東京シニアビジネスグランプリの申込書が、起業を決心する源泉となりました。時間がない中でも思い描いていることを整理し書き連ねていくと、起業へのぼんやりした思いが覚悟と確信に変わっていきました。やはり考えているだけではなく、書き出してみることで道筋が見えてくるのです。
ちなみに、東京シニアビジネスグランプリで出会えたファイナリストの皆さんとは今でも付き合いが続いています。駆け引きや利害関係もなく、いろんな相談や情報交換ができる大切な仲間になりました。互いに切磋琢磨できるこのネットワークは私の大きな財産です。
★シニア世代の方に創業のポイントなどを教えてください。
チャレンジしたいことがあれば、限られた時間を無駄にしないで、起業へ向けて行動してみてはいかがでしょう。公社を利用すれば起業するための様々な知識を身につけることが可能です。セミナーなどに参加していると起業のきっかけみたいなことが掴めてきます。
起業すると、営業先では若い世代と交流を持つ機会が多くなるわけですが、もしかするとこれが「80歳まで現役で働くこと」の原動力になるのかもしれません。

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