中小企業人的資本経営支援事業 事例紹介
社内から新規事業が生まれる会社のつくり方~経営人材育成で“次の事業をつくる”~
株式会社FlyNexia
<会社概要>
- 設立:2017年
- 所在地:東京都江東区豊洲5-5-10 宝ビル4F
- 資本金:800万円
- 従業員数:30名
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事業紹介:
株式会社FlyNexiaは、幼稚園年中から小学生を対象としたインターナショナルアフタースクール「FlyNexia Global Academy」を運営。英語教育とSTEAM(統合型)教育を組み合わせた独自のカリキュラムを通じて、子ども一人ひとりの興味・関心を引き出し、主体的に学ぶ力を育成。英語・国語・算数を対象とした新事業である学習支援サービス「Smart JUKU」を立ち上げ、AI教材とコーチングを活用した学習支援により、中学受験を見据えた家庭の多様なニーズにも対応している。 -
URL:https://flynexia.com/
代表取締役の岡山媛媛氏、事業本部マネージャーの大原康子氏にお話を伺いました
株式会社FlyNexiaは、岡山社長が自らの子育て経験をきっかけに創業した。家族で江東区豊洲に居を構えた岡山社長は、子どもの英語教育と放課後の居場所を探したが、納得できるスクールが見つからなかったという。「ないなら自分でつくるしかない」と考えたことが、事業立ち上げの出発点となった。
岡山社長は自ら海外で英語とプログラミングを学び、2017年に同社を設立。翌年から豊洲でインターナショナルアフタースクール「FlyNexia Global Academy」を本格稼働させた。現在は豊洲駅至近に2校、晴海フラッグの商業施設内に1校を構え、英語とプログラミングを二本柱に、幼児から小学生を対象とした放課後の学びの場を提供。受講生数も400人以上に伸びている。
2025年には、公社の「経営人財育成スクールNEXT (以下、NEXT)」で得た学びを生かし、AI教材と人によるコーチングを組み合わせた中学受験英語入試特化型スクール「Smart JUKU」を立ち上げた。
アフタースクールの「出口」をどうつくるか──NEXT参加の背景
アフタースクール事業が一定の規模と売上を確立する中で、岡山社長は次なる成長戦略として事業の多角化を掲げた。構想の中で浮かび上がったのが、アフタースクールの出口戦略だ。
地域柄も相まって、豊洲エリアの子どもたちの約9割は中学受験を選択する。小学4年生ごろになると、受験勉強に励むべく、多くの子どもが英語やプログラミングなどの習い事を中断せざるを得ない。同社のアフタースクールに長年通っていた児童も例外ではなく、中学受験を理由に退会してしまうという課題があった。
同時に、岡山社長には「社員にも起業するくらいの気持ちを持って仕事に取り組んでほしい」との思いもあった。そこで、新規事業開発に挑戦したいという意欲を持つ事業本部マネージャーの大原氏を、NEXTの事業マネジメントコースへ派遣することにした。過去にも公社の経営人材育成講座に社員を派遣したことがあり、その実践的な内容と伴走支援の手厚さを把握していたことが背景にある。
アイデアの棚卸しと評価から生まれた「Smart JUKU」構想
当初、岡山社長と大原氏の頭の中には、高学年向けプログラミングコース、スポーツと英語を組み合わせたプログラム、留学関連サービスなど様々な新規事業アイデアがあった。中学受験英語入試に特化したサービスも候補の一つではあったが、当初は本命ではなかったという。
転機となったのが、講義の中で実施された事業アイデアを評価するワークである。そのアイディアをやりたいかどうかという主観だけでなく、実現可能性、収益性、市場ニーズ、自社との親和性などの項目で各案に点数をつけ、客観的に比較。結果、最も高い評価がついたのが中学受験向けサービスだった。「自分たちが一番やりたいと思っていた案よりも、中学受験向けサービスのほうが総合的に優れているという結果に驚きました」と大原氏は振り返る。
昨今の中学受験は、英語資格を活用した「英語選択入試」も増加しているという外部環境もある。同社が強みとする英語教育との相性の高さが明らかになったのだ。こうして、「英語を強みに中学受験を支える新サービス」というSmart JUKUの原型が形を帯び始めた。
ワークと専門家の個別支援によって、構想から事業化へ
実現可能性の高いアイデアが固まった段階で、NEXTのワークで取り組んだのが顧客インタビューを通じた仮説検証だった。アフタースクールに通っている児童の保護者に対し、中学受験への考え方や、英語・国語・算数学習のニーズを丁寧にヒアリングしていった。
当時の大原氏は、「国語・算数を通じて、基礎学力をしっかり身につけたい家庭が多い」「受験科目を減らすために、英語選択入試を積極的に活用したい家庭が多い」といった仮説を持っていたという。しかし、実際には「国語と算数の基礎学力を強く意識している保護者はごく一部」「英語選択入試に明確な関心を持つ家庭も多くない」ことが分かり、当初の想定は大きく揺さぶられた。
また、顧客インタビューを重ねる中で、Smart JUKUがマッチする顧客ターゲット層が「受験するかどうかを迷っている家庭」であることも見えてきた。
大原氏によると、事業内容の詳細を検討するなかで、中学受験に対して顧客が持つ悩みが多方面にわたり、Smart JUKUの提供プログラムをどの悩みに焦点をあてて組み立てればよいのか、行き詰まる場面もあったという。
しかし、「新規事業は7割の完成度でも一度走り出し、実践の中で検証を重ねていくことが大切」と専門家から助言を受けたことで、まずは形にして試してみるという発想へと切り替えることができたという。その行動の結果が、NEXTの受講期間中に事業化を実現できたスピードにもつながっているのだろう。
また、一緒に講義を受ける他の企業の存在も心の支えになった。「事業構築では他の受講生も苦労していたので、受講生同士で苦労をわかちあい、『お互い頑張ろう』という精神的な支えになりました。新規事業開発実現に向けた原動力になりましたし、他の参加企業からのアドバイスが、行き詰まり打開のきっかけにもなりました」と大原氏は振り返る。
※画像引用「Smart JUKU」サービス案内資料より
子どもたちに「起業も当たり前の選択肢」と感じてもらうために
Smart JUKUでは、英語・国語・算数の3科目を対象に、AI教材と人によるコーチングを組み合わせた学習モデルを採用している。学習時間の短縮によって生まれた時間を、英語やプログラミングなど、社会で生きるスキル習得へとつなげられる仕組みだ。元々英語教育に強みがある同社であるが、中学受験英語入試に対応するために英語のカリキュラムもゼロベースから見直すなど、きめ細やかな工夫も凝らしている。
現在、アフタースクール事業の児童を中心に約40人ほどの会員が在籍している。ユーザーインタビューで判明した顧客ニーズのとおり、「中学受験をするかどうか悩んでいる」層の受講者が中心だという。
岡山社長は、「英語とプログラミングはこれからの時代を生きる子どもたちにとって、必須スキルだと考えている。「好き」を極め、「好き」を仕事にする。その先に起業があるのならば、子どもたちが将来の起業を『当たり前の選択肢』と捉えられるようになってもらいたい」と語る。今後は、海外留学や大学受験をサポートするコースも構想中だという。
経営人材育成を通じた社員の成長と「社内起業」への期待
NEXTへの参加は、Smart JUKUの立ち上げだけでなく、社員の成長の場としても大きな意味を持った。大原氏は「他社の受講者と議論し、互いのビジネスアイデアにフィードバックし合うことで、自社だけでは得られない視点を多く学びました。特に顧客との対話力が鍛えられ、今では保護者との面談でも、自ら会話をリードしながら提案できるようになりました」と話す。
岡山社長も「雇用する側とされる側という関係から、同じ起業の仲間として事業を共に創るパートナーのような存在へと変化してきた」と語り、社員の主体性と経営視点の育成という面でも、NEXTの効果を実感している。今後は、社員が社内から新規事業を立ち上げる「社内起業」に挑戦できる環境をさらに広げていく考えだ。
子どもたちへの教育と、社員への投資が事業成長につながる
同社の取り組みは、「人が成長することで事業も進化していく」という考え方を、実践の中で形にしてきた点に特徴がある。社員の挑戦を通じて新たな事業が立ち上がり、その成果が再び子どもたちの学びへと還元されていく循環は、企業規模の大小を問わず、持続的な成長を目指す事業者にとって一つの示唆を与えるものと言えるだろう。さらに、新事業の実現化には数年単位の時間がかかるパターンが多いが、同社は事業構想から約1年で事業実現に至っている。経営人材育成の学びを生かす実行力の高さが伺える事例ではないだろうか。
取材協力:米澤 智子(ワンパーパス株式会社)
※本記事は、2025年11月時点の情報です。