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中小企業人的資本経営支援事業 事例紹介

理念経営を仕組みで実践する〜牛たんねぎしが40年貫く「人財共育」経営〜

株式会社ねぎしフードサービス

代表取締役 根岸 榮治 氏
代表取締役 根岸 榮治 氏

<会社概要>

  • 設立:1981年
  • 所在地:東京都新宿区西新宿7-22-36 三井花桐ビル4階
  • 資本金:5,000万円
  • 従業員数:正社員157名・パートアルバイト2,075名
  • 事業紹介:
    「牛たん・とろろ・麦めし ねぎし」を提供する外食事業を展開。首都圏を中心に約50店舗を運営し、埼玉県狭山市のセントラルキッチンで製造・加工した食材を各店舗へ供給、安定した品質と提供スピードを実現している。スタッフ一人ひとりが主体的に働ける仕組みづくりを通じ、店舗運営の質を高めている。さらにデリバリー専門店も展開し、多様な利用シーンに対応。変化する生活スタイルにも柔軟に応えている。
  • URL:https://www.negishi.co.jp/別タブで開く
代表取締役 根岸 榮治 氏
代表取締役 根岸 榮治 氏

代表取締役の根岸榮治氏、専務取締役の相良治美氏、人財共育マネージャーの和田敏宣氏にお話を伺いました

株式会社ねぎしフードサービスが展開する牛たん専門店「牛たん・とろろ・麦めし ねぎし」は、1981年の創業以来、時代とともにファンを広げてきた。もともとおつまみとして男性中心に楽しまれていた牛たんを、女性客にも味わってもらいたいという思いから、気軽に楽しめる定食スタイルで提供。現在では定番となった「牛たん・とろろ・麦めし」の組み合わせを広めたパイオニアだ。
首都圏を中心に約50店舗を展開し、学生からファミリー層、ビジネスパーソンまで幅広い層に支持されている。店の温かい空気感やスタッフの元気な接客を大切にし、「また来たい」と思われる店づくりを続けてきた。

人の入れ替えが激しかった時代〜ある日、社員が誰も出勤しなかった

現在85歳の根岸社長は週2回プールで1km泳ぎ、「あと10年は現役でいたい」と話す。しかし、29歳で経営を始めた頃は、人をモノと同じ感覚で軽く扱っていたという。1970年代、当時東京で当たっていた多業態の飲食店を次々と東北や北関東エリアに20店舗展開。売れなくなれば店も人も入れ替える。そんな考えで走り続けていたと振り返る。
しかし転機は突然訪れた。アルバイトを含めた9人の従業員が誰も出勤して来なくなったのだ。ほどなく近隣に似た業態の店が開業し、そこには引き抜かれた元従業員の姿があった。使い捨てるはずが、見限られたのは自分のほうだった。「人は材料の材じゃない、財産の財だ」商品も人も磨き上げることが必要だと気づいた根岸社長は、その想いを胸に1981年、「牛たん とろろ 麦めし ねぎし」1号店を新宿に出店。以来45年、「人財共育」に力を入れてきた。
「因は我にあり」「ピンチはチャンス」という言葉を大切に、コロナ禍ではデリバリー事業に進出。予測困難なピンチを乗り越えるたびに、次のステージへと進んできた。
根岸社長は、現代を「質の時代」と捉える。人口減少と少子高齢化という経営環境下では、「商品・サービスの品質だけでなく、差別化した提供価値を追求」する企業が選ばれるという。選ばれるのは「顧客」目線だけではなく、「働き手から」選ばれることも見逃せない。
「いくら流行っている店でも、潰れてしまったのでは従業員の家族が路頭に迷う。企業は事業の永続性、つまり100年企業になることを追求すべきです」と根岸社長は語る。顧客から選ばれ、働き手から選ばれる。その鍵となるのが、同社の実践する「理念経営」と「人財共育」だ。

ねぎしの経営理念


お客さまに おいしさを
お客さまに まごころを
ねぎしはお客さまのためにある
そして お客さまの喜びを自分の喜びとして
親切と奉仕に努める

この理念を実践するために、ねぎしでは次の5大商品を大切にし、仕事を通して磨き上げる仕組みが数多くあり、人の成長に繋がっている。

ねぎしの5大商品

①Quality
②Service
③Cleanliness
④Hospitalit
⑤Atmosphere


笑顔・元気
清潔
親切
楽しさ

(おいしさ・品質・温度・スピード)
(ニコニコ・ハキハキ・キビキビ)
(常に磨かれた状態・整理整頓)
(目配り・気配り・心配り)
(活気のある快適な空間・心地よさ)

ねぎしの最大の商品は人である。5大商品ひとつひとつの質を高めていくこと、そして人の質を高めることが、質の時代における勝負なのだ。

人気メニュー 「ねぎしセット」
人気メニュー 「ねぎしセット」

「Planから参加」で人を育てるーねぎし流・PDCAサイクル経営

同社では創業当初から、店長自らが1年間の事業計画を策定している。5月の期初に向け前年11月から取り組み、売上や客数予測も含めたすべてを店長が立案。約50名の店長とサポートオフィス、狭山工場のライン長ら総勢80名以上で作り上げた事業計画書は、厚さ1センチの冊子『経営指針書』にまとめられる。2025年度(第66期)で28冊目となった。
このプロセスの根底にあるのが「PDCAサイクル」だ。PはPlan、DはDo、CはCheckではなくCommunication、AはAction。「Planから参加すれば仕事は"我が事"になる。Doから参加すれば"他人事"になる。自分で計画を立てるから、成功しても失敗しても成長につながる」という根岸社長の言葉には、実践の重みがある。
同社では店長を"組織の中心"に位置づける。組織構造は逆三角形で、最上位に顧客、その下にアルバイト、社員、店長が続き、社長やサポートオフィスは一番下で全員を支える。だから「本社」ではなく「サポートオフィス」と呼ぶ。売上も利益も、すべては現場がボトムアップで考える。

逆ピラミッド型 組織図
逆ピラミッド型 組織図

クレンリネスコンテストで作る「最強のチーム」

人を育成できる店長とそうでない店長の違いを、人財共育マネージャーの和田氏は「コミュニケーションの量と、その基礎となる『基本行動』を忠実に実践しているか」だと分析する。
同社では、働く仲間への親切を示す「5つのコミュニケーション」とお客さまへの親切を示す「7つの基本行動」を定めている。これらの基礎を忠実に積み上げ、最終的に5大商品を磨き上げる。従業員が行うべき行動を明文化することで、「どこができていなかったか」と振り返りができ、自分で考えて改善できる人が育つという。
こうした“徹底力”を育てる仕組みの象徴が、1996年から続く年2回の「クレンリネスコンテスト」だ。ホールやキッチンの清掃力を店舗ごとに競う大会だが、真の目的は、店舗のチーム力を高めることにある。店長同士の相互審査に加えてエリアマネージャーの評価も反映され、現在、約2,000人のアルバイトを含む全員で取り組まなければ上位には入れない。日々の丁寧な行動が結果につながることから、自然と店舗に一体感が生まれる。
また接客技術を競うロールプレイングコンテストや、焼き技術向上の「焼き士」講習、覆面調査やアンケートなども実施。課題を見える化し、楽しみながら成長できる仕組みを整えることで、組織力向上につなげていると根岸社長は話す。

5つのコミュニケーション
5つのコミュニケーション

未来を共有し、バックキャストで今を動かす。「2040年のねぎしのありたい姿」

現在、同社では全店舗で「2040年に目指すねぎしのありたい姿」を全員で復唱する。「2040年に自分は何をしているだろう?」と考え、「では今、何をすべきか」と現在の行動に意識を向ける。具体的な未来を思い浮かべて今を変えることを大切にしているのだ。
理念を自分ごととして捉える仕組みに「私と経営理念」という文集もある。アルバイトを含む約550名が、理念にまつわる体験を自らの言葉で綴ったものだ。相良専務は「お客様の喜びを自分の喜びとして感じられた時、理念が腹落ちする。その瞬間が、スタッフのやりがいになる」と目を細める。
学生アルバイトたちは3~4年働くうちに理念に馴染み、卒業後も"ねぎしファン"として店舗に食べにきてくれる。今では応募者の大半が友人や家族の紹介、あるいは「ねぎしで食事をして働いてみたいと思った」学生達だという。
「従業員がファンになっているので、辞めたあとに『最大の営業マン』になってくれるんです」と、根岸社長は笑顔で話した。

根岸社長(写真中央)と相良専務(写真右)とサポートスタッフ社員
根岸社長(写真中央)と相良専務(写真右)とサポートスタッフ社員

理念経営は言葉だけでなく仕組みで実現

現在85歳の根岸社長は、事業継承について不安は感じていないという。理念が共有され、仕組みが確立されていれば、ねぎしの軸は決してぶれない。継続は力なり。一度始めた仕組みを途中でやめない徹底力と継続力が、人を育て、組織を強くする。毎日全従業員が読み上げる「2040年のねぎしのありたい姿」が実現する頃、同社はどんな姿になっているのだろうか。確実に言えるのは、その時もまた、人を財産として大切にし、共に育つ文化が息づいているだろう。

取材協力:米澤 智子(ワンパーパス株式会社)
※本記事は、2025年10月時点の情報です。