経営効率を高める=ゼロエミッション
「あらゆる無駄をなくす」に取り組む、研究開発型の総合靴部品メーカー

株式会社村井

2024年2月

  • 省エネ
  • 太陽光発電
  • 助成金活用
  • 製品の開発・販売
  • CO2排出量算出
  • 産業廃棄物削減
代表取締役会長 村井隆さん(写真:右)と2023年6月 代表取締役社長に就任した村井誠さん(写真:左)。ゼロエミッション経営を推進し、創業93年の老舗企業を次世代につないでいく。

ロードマップ作成
6か月

実行段階
12か月

定着段階
12か月

テーマ➊ 工場の空調設備を省エネルギータイプに改修する取組

公社の助成事業「原油価格高騰等に伴う経営基盤安定化緊急対策事業」に採択され、2024年の7月には改修が完了する予定です。

テーマ➋ 工場に太陽光パネルを設置する取組

当社の生産設備はすべて電気を使用しているため、一部だけでも再生可能エネルギーにより発電した電気を使用しようと決断し準備を進めています。

テーマ➌ デマンド監視装置の導入による電気使用量の監視およびコントロール

電気の基本料金を決定する最大需要電力(デマンド値)を管理することにより、コスト抑制を行います。こちらは太陽光パネルと並行して設置を進めていきます。

テーマ❹ インソールなどのカーボンレス化を研究・開発

さらに、インソールの熱加工工程における製造方法の変更によりCO2削減を目指します。こちらは専門家派遣を利用して、異素材の接着に詳しい方からノウハウなどを学ぶ予定です。

ゼロエミッション経営 ロードマップイメージ

ゼロエミッション経営 計画イメージ(2024年1月現在)

Q 主な事業内容を教えてください

当社は足もとから社会を支え、健康で快適な生活づくりに貢献する「研究開発型の総合靴部品メーカー」です。1931年に靴資材を販売する個人経営から始まり、創業93年の歴史を持つ企業です。
事業内容は、大きく分けると「シューパーツ事業」「フットケア事業」の二つがあります。コア事業は、BtoBの「シューパーツ事業」で、靴をつくる際に必要不可欠な靴部品であるボックストゥ(つま先芯)、カウンター(かかと芯)、インソール(中底)、アウトソール(本底)や靴型を製造し、全国の靴メーカーに販売しています。そしてBtoCの「フットケア事業」では、一般消費者向けのインソールやパッド、ルームシューズなどを自社ブランドで展開しています。

「足もとから人々の健康で、快適な生活づくりに貢献する」という企業理念のもと生み出した世界初・業界初の製品は、日本だけでなく世界の靴に使用されている。

Q ゼロエミッションに取り組むきっかけを教えてください

代表取締役会長 村井隆さん。「ゼロエミッション経営への取り組みは、当社がさらに成長していくための重要なプロジェクトです」。

昨今は、原材料、主資材(部品)、またそれ以外の副資材(生産に使われる電気料金、工具、燃料、梱包材等)、間接費(産業廃棄物処理費、輸送費等)、外注加工費などが軒並み上昇しています。特に電気料金は深刻な水準まで上昇している状況です。さらにコロナ禍以降は「働き方」の変化によりライフスタイルが多様化したことによって、靴も多品種・少量生産化が進み、金型や抜型などの段取り替え回数が増加し、製造原価も上昇しています。「あらゆる無駄をなくし、経営効率を高める」ことは喫緊の課題になっていました。
「ゼロエミッション実現に向けた経営推進支援事業」については、2023年2月に他機関からの紹介で知りました。その後、公社と面談して、当社の課題解決はまさにゼロエミッション実現に貢献すること、また、ゼロエミッション経営は企業の魅力度向上につながるなどのお話を伺い、共感して直ぐに申請しました。

Q 取り組みについて、現在の進捗状況を教えてください。

ハンズオン支援開始後半年ほどで2025年までのロードマップが完成し、準備段階を終える目途が立ちましたので、2024年1月からは具体的な施策に移っていきます。マネージャーには何度も埼玉県の吉見工場まで足を運んでいただき、プロジェクトのメンバーと協議を重ねながら、各施策の立案とタスクなどを決めていきました。プロジェクトメンバーは、工場長を含め工場関係者が5名、本社から総務部責任者と営業部責任者、そして社長と会長の私が加わり、9名で構成されています。ゼロエミッション経営の推進は、当社が未来に向けてさらに成長していくための重要な取り組みとなります。

株式会社村井の生産拠点となる吉見工場(埼玉県比企郡吉見町)。研究・開発・金型や機械製作も行っている。

Q 事業を利用して良かった点を教えてください

代表取締役社長 村井誠さん。「各施策への取り組みはこれから本格化していきますが、まずは電気使用量の削減に全社的に取り組んでいきます」。

マネージャーの他にも、各施策に関する知識、情報、経験をお持ちの専門家をスポットで紹介いただけることは大きなメリットです。専門性の高い的確なアドバイスは実行する際の指針になります。また、新しい設備を導入する際は協力会社へ見積もりを依頼することになりますが、依頼する時の注意点、さらに適正な価格にするためのポイントなども教えていただき、余計なコストの発生を未然に防ぐことができています。

Q 公社マネージャーの対応で印象に残っていることを教えてください

プロジェクトメンバーからの質問や要望に対するスピード感が印象的です。たとえば、リードタイムを短縮するための生産方法について相談したところ、翌日には相応しい専門家を紹介していただきました。また、今回は多くの施策を同時に進行していますが、社内情報共有の仕組み、進歩状況やスケジュールの管理法などについても助言をいただき、他のプロジェクト案件の管理システムを作成する際にも役立っています。
ゼロエミッション経営の具体的な施策を考える際、従業員だけでは、消費電力や材料ロスの削減などスポット的な施策に留まりがちです。ゼロエミッションのプロであるマネージャーや専門家のアドバイスにより、製造工程の見直しや設備投資、ひいては経営基盤の強化といったスケールの大きな取り組みに発展させることができたと感じています。

Q 本事業の他に利用している公社事業はございますか

以前から、工場設備投資の際に助成事業で支援を受けており、中小企業の経営安定化に向けたエネルギー自給促進事業(太陽光パネル)、原油価格高騰等に伴う経営基盤安定化緊急対策事業(空調設備)、また、展示会出展の際は市場開拓助成事業などを利用しています。

Q ゼロエミッション経営を検討している企業へメッセージをお願いします

CO2の排出をゼロにするという広義の意味でも「ゼロエミッション」という言葉が用いられているので、業種や会社の規模によっては「自社とは関係のないこと」と考えてしまうかもしれません。でも、廃棄物を限りなくゼロにしようとする取り組みは、企業のトータル原価の低滅を実現し、それが利益を増やすことにつながります。当社の場合、空調設備や太陽光パネルの導入により電気料金は削減できますが、一方で設備投資をするため減価償却費は増加します。そこで、マネージャーと年度ごとの損益を試算したところ、結局は利益額が増加することが分かりました。これは一例ですが、経営的なメリットという点でもゼロエミッションに取り組む価値はあると思います。

豊島区北大塚の本社ビル1階では、歩くことがもっと楽しくなるきっかけを提供する新しいスタイルのカフェ併設ギャラリー『ARUKU COFFEE & GALLERY』も運営している。

企業情報

企業名 株式会社村井
所在地 東京都豊島区北大塚2-27-4
設立 1931年3月
事業内容 靴用各種部品・副資材、一般消費者向け靴関連製品の製造・販売
資本金 10,000万円
代表者 村井 隆
WEB https://e-murai.jp/