経営効率を高める=ゼロエミッション
「あらゆる無駄をなくす」に取り組む、研究開発型の総合靴部品メーカー
株式会社村井
2025年6月
- 省エネ
- 太陽光発電
- 助成金活用
- 製品の開発・販売
- CO2排出量算出
- 産業廃棄物削減

テーマ➊ 工場の空調設備を省エネルギータイプに改修する取組
公社の助成事業「原油価格高騰等に伴う経営基盤安定化緊急対策事業」に採択され、2024年6月に改修が完了しました。
テーマ➋ 工場に太陽光パネルを設置する取組
当社の生産設備はすべて電気を使用しているため、一部だけでも再生可能エネルギーにより発電した電気を使用します。
(公財)東京都環境公社の「中小企業等における排出量取引創出のためのモデル事業」に採択され、2025年6月に設置済。
テーマ➌ デマンド監視装置の導入による電気使用量のピーク監視およびコントロール
電気の基本料金を決定する最大需要電力(デマンド値)を管理することにより、コスト抑制を行います。こちらは太陽光パネルと並行して設置を進めました。
公社の「ゼロエミッション実現に向けた経営推進支援事業」助成金に採択され、2025年6月に設置済。
テーマ➍ インナーソール成型工程の省略、バイオインナーソール新商品の開発・試作
インナーソールの熱加工工程における製造方法の変更によりスループット向上とCO2削減を目指します。また、脱CO2意識の強い消費者に利用いただける様に、バイオインナーソール新商品の開発・試作を行っています。こちらは専門家派遣を利用して、異素材の接着に詳しい専門家からノウハウなどを学びました。
ゼロエミッション経営 ロードマップイメージ

Q 主な事業内容を教えてください
当社は足もとから社会を支え、健康で快適な生活づくりに貢献する「研究開発型の総合靴部品メーカー」です。1931年に靴資材を販売する個人経営から始まり、創業93年の歴史を持つ企業です。
事業内容は、大きく分けると「シューパーツ事業」「フットケア事業」の二つがあります。コア事業は、BtoBの「シューパーツ事業」で、靴をつくる際に必要不可欠な靴部品であるボックストゥ(つま先芯)、カウンター(かかと芯)、インソール(中底)、アウトソール(本底)や靴型を製造し、全国の靴メーカーに販売しています。そしてBtoCの「フットケア事業」では、一般消費者向けのインナーソールやパッド、ルームシューズなどを自社ブランドで展開しています。

Q ゼロエミッションに取り組むきっかけを教えてください

昨今は、原材料、主資材(部品)、またそれ以外の副資材(生産に使われる電気料金、工具、燃料、梱包材等)、間接費(産業廃棄物処理費、輸送費等)、外注加工費などが軒並み上昇しています。特に電気料金は深刻な水準まで上昇している状況です。さらにコロナ禍以降は「働き方」の変化によりライフスタイルが多様化したことによって、靴も多品種・少量生産化が進み、金型や抜型などの段取り替え回数が増加し、製造原価も上昇しています。「あらゆる無駄をなくし、経営効率を高める」ことは喫緊の課題になっていました。
「ゼロエミッション実現に向けた経営推進支援事業」については、2023年2月に他機関からの紹介で知りました。その後、公社と面談して、当社の課題解決はまさにゼロエミッション実現に貢献すること、また、ゼロエミッション経営は企業の魅力度向上につながるなどのお話を伺い、共感して直ぐに申請しました。
Q 取り組みについて、現在の進捗状況を教えてください。
太陽光パネル設置、空調更新、LED化の様な再エネ・省エネ設備設置による脱CO2だけではなく、成型工程の工程省略試験、バイオインナーソール新製品開発・試作、マシニングセンタの高効率設備への更新、関係する特許出願、生産管理システムの更新、鉄製廃棄物(スクラップ)のリサイクル活用等、脱CO2に関係する様々な分野に取り組んでいます。マネージャーからは、適切な専門家の紹介、実施に必要な助成金の紹介に加え、経産省のGXリーグや東京都のHTT取組支援推進企業の様な公的な枠組みも紹介もいただきました。
一連の活動は、弊社ホームページに「村井のカンキョウ」としてまとめています。

Q 事業を利用して良かった点を教えてください

マネージャーの他にも、専門家からの高い技術に裏打ちされた的確なアドバイスは実行する際の指針になります。また、新しい設備を導入する時の注意点、適正な価格にするためのポイントなども教えていただき、余計なコストの発生を未然に防ぐことができています。
ゼロエミッション実現に向けた経営推進セミナーでは、弊社の活動内容を報告させていただきました。工場の省エネ・脱CO2だけではなく、生産工程省略や新製品開発等の色々なテーマを紹介していますので、ゼロエミのイメージが変わった方もおられると思います。
Q 公社マネージャーの対応で印象に残っていることを教えてください
プロジェクトメンバーからの質問や要望に対するスピード感が印象的です。リードタイムを短縮するための生産方法の変更について相談したところ、翌日には相応しい専門家を紹介していただきました。今回は多くの施策を同時に進行していますが、社内情報共有の仕組みやスケジュールの進捗管理法などについても助言をいただき、他のプロジェクト案件の管理システムを作成する際にも役立っています。ゼロエミッションのプロであるマネージャーや専門家のアドバイスにより、製造工程の見直しや新商品開発、それに必要な設備投資や特許取得を通じて、経営基盤を強化し発展させることができたと感じています。バイオインナーソール用原材料化学メーカーの紹介等、弊社では手が届かなかった所にも道を付けていただいたと思っています。
Q 本事業の他に利用している事業はございますか
以前から、工場設備投資や展示会出展の際に公社の支援を受けております。ゼロエミッションに取り組む中では、新たに(公財)東京都環境公社の「中小企業等における排出量取引創出のためのモデル事業」を紹介いただきました。(太陽光パネル、空調(本社)等) これを通じてカーボンクレジット(排出権の売買)にも参加して行く予定です。さらに、究極のエコカーである人力車でアメリカ等を横断した方の講演会を通じて、市民向けの脱CO2啓蒙活動を行っています。その会場のARUKU COFFEE & GALLERY(弊社本社1階)に訪れる観光客や鉄道ファン向けに特別席を設ける際には(公財)東京観光財団を紹介いただきました。「都電ビュー×歩く楽しみ」体験型観光事業というテーマで「アドバイザーを活用した観光関連事業支援」補助金の採択を受けています。
Q ゼロエミッション経営を検討している企業へメッセージをお願いします
空調設備や太陽光パネルの導入により電気料金は削減できますが、設備投資に伴う減価償却費は増加します。そこで、複数年の損益を試算したところ、短期間で投資回収が可能であることが分かりました。
また、自社の省エネ・脱CO2だけではなく、前工程(原材料調達先)や後工程(小売店・問屋、顧客)をも巻き込んだ脱CO2活動を進めています。ゼロエミ人材育成講座でCFP(カーボンフットプリント)と言う手法を学びましたが、これにより通常のインナーソール(石油由来)とバイオインナーソール(植物由来)の1足当りのCO2量を前工程-自社-後工程まで(ゆりかごから墓場まで)を一気通貫で試算し、比較して見える様にしました。いずれ商品に試算結果を記載し、消費者に脱CO2活動の成果をご理解いただける様にして行きたいと考えています。
一言にゼロエミッションといっても、再エネ・省エネ設備の導入だけでなく、生産工程の改善や新商品開発等、様々な取り組みを行ってきました。また、活用できる補助金もご紹介いただきながら、進めることができました。まずは自社で何ができそうか、公社に相談してみてはいかがでしょうか。

企業情報
企業名 | 株式会社村井 |
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所在地 | 東京都豊島区北大塚2-27-4 |
設立 | 1931年3月 |
事業内容 | 靴用各種部品・副資材、一般消費者向け靴関連製品の製造・販売 |
資本金 | 10,000万円 |
代表者 | 村井 隆 |
WEB | https://e-murai.jp/ |