“利他、ものづくりを通じての社会貢献”
その先駆者を志して、BEAM FRONTIER
東成エレクトロビーム株式会社
2026年9月
- 研究開発
- 省エネ
- Scope3
- 助成金活用
- 社内意識醸成
「事業の第一の柱、電子ビーム溶接自体は50年前には確立した技術ですが、だからこそ研鑽を重ね熟練した技術で、お客様それぞれの技術的な課題に合わせた解決を図ることが肝要です。“はやぶさ2”の衝突装置で当社の技術が採用されたのはその賜物です。」西原部長の簡潔な説明を受けながら、本社工場の視察が続く。ふと気が付くと、隣の装置の作業員の方と上野邦香社長が何かを話している。どのような内容を話しているのかはわからないが、このように日々社員との直接対話の機会を作っておられるのだと理解した。
(銅とステンレスの溶接に東成エレクトロビームの技術が使われています)
東成エレクトロビーム㈱は1977年に設立された、電子ビーム溶接、レーザー加工をコア技術とする東京都内に2工場を持つ企業。電子ビーム溶接(EBW)ならではの高強度接合、異種金属間接合(異材接合)、高反射材料(ステンレス・銅・アルミ等)や高融点金属(タングステン・タンタル等)の溶接、高精度加工を実現。その技術を見込まれ前述はやぶさ2のサンプル採取用衝突装置の溶接加工を担当。レーザー加工は様々な波長のレーザーで、樹脂、ガラス、金属など様々な素材に対し、顧客の要望する高精度加工、高強度接合、超微細加工(微細穴あけ、微細溝加工、微細接合、微細切断等)を実現。レーザークリーニングは対象物にレーザー光を照射し、対象物の表面から汚れを除去する手法で、従来の洗浄手法と比較すると、溶剤や水を使用しないドライクリーニングであることで、地球環境に優しく、労働環境をも改善し得る洗浄手法として注目されている。
上野邦香社長は2012年に就任、就任当時からこれまでの経営についてお伺いした。
「就任当時の訓示を見直すと、収益性と財務の健全性確立、自発的改善活動、相互情報交換と中堅企業へのチャレンジなどを掲げていました。特に幹部の経営に対する自発的企画力を期待していたのですが、後に聞くと内容が抽象的で幹部には当時あまり理解されなかったようです。常務の高島にはきちんと言語化するように指摘され、高島常務を中心に幹部社員の育成も進み、現在では社員と相互対話しながら理解が進んでいるという手ごたえがあります。私自身は第一の目標、設備投資で膨らんだ有利子負債を減らし財務の健全性確立に専念し、現在までにほぼ達成しました。」
“そして二年前ゼロエミのハンズオン支援に取り組まれました。”
「お恥ずかしい話ですが、懇意にしている経営者の方に進められて受けたものの当初は興味がなく、西原部長に丸投げしていました。伴走いただくマネージャーさんから「なぜ社長が参加しないのか」とご指摘を受けて、しぶしぶ同席した次第です(笑)。その際に「20年後の東成のあるべき姿」を問われ、答えていると自然に目指す中期計画が立てられたこと、東成の事業が従前よりゼロエミ(脱炭素)に貢献してきたことに気づかされ、驚くとともに腑に落ちた次第です。それからは私も積極的に参画し、ToseiCN2045(※1)という20年後の経営目標を立てることができ、感謝しています。」
(※1)東成カーボンニュートラル:2045年にカーボンニュートラルを達成する計画を社内外に向かい宣言
「私は部下に恵まれ、彼らに助けてもらう経営者(笑)ですが、経営者一人が頑張ってもせいぜい1.5人分の力しか発揮できないのに比べ、部下の皆が(経営者として)一緒にやってくれたら人数分の大きな力となると考えています。就任訓示で自発的改善活動を提示したら伝わるつもりで放置していたのですが、何年もかけて高島常務が意図をかみ砕いて伝えてくれたことで、ようやく直接対話をしてお互いが理解できるようになりました。最近一番うれしかったことは社員の一人が自ら研究開発に取り組みたいと言ってきたことです。最大の経営課題、「社員一人一人が自発的に改善する」の一つの形だと思うのです。」
ハンズオン支援で中心的役割を果たす西原部長が補足する。
「社長は丸投げ、放任と言われますが、その実、結果責任は社長自らが取るという態度が一貫しているので、我々は安心してチャレンジができるので助かっています。またToseiCN2045が既に実行段階に入り、社員が自ら考え「脱炭素につながる」と積極的に取り組むのも、経営者自身が先頭に立って動いたからです。」
再三登場する高島常務は西原部長が入社された直後に、上野邦香社長が西原部長の先生となるべき人物として引き抜いてきた方。
「以来22年、常務にはずっと伴走支援してもらっている印象です。任せていただいたゼロエミハンズオン支援についてもそうですが、多くを語らないものの、いつも見られている感覚があり、重要なポイントでは注意を与えてくれます。任せる者、任せられる者、両者とも甘えるのではなく、期待に応えなくてはならない、と思わせてくれる存在です。」
その西原部長は、先代、上野保社長(※2)の時代に入社。その当時の思い出を語って戴いた。
「まだ在学中に工場見学を受け入れて戴きました。本社に到着するとタクシーから降りる私を出迎え、握手をしてくれたことが印象的で、その瞬間、この会社に入社するのだと思ってしまいました。入社してわかったことですが、一般的に中小企業は自分を助けてほしいという人が多いなか、保社長は中小企業(全体)が良くなるためにどうするか、中小企業の問題点を解決する提言をしていました。仕事に対する姿勢も、利他(自分の為ではなく)を信条としていたと思います。『来たお客さんを昇進させることが仕事であり、良い結果を残して相手に貢献できることが重要。』だと常々口にされていました。最近になってそのことを再認識させる出来事がありました。大阪のウェルディングショーに出展した際に、とある商社の会長さんが「昔、担当時代に保さんに助けてもらいました」と挨拶にこられ、その後仕事へと発展したのです。利他を実践した結果が、長い年月をかけて巡り巡って帰ってくるのを実体験したことで、改めて偉大な創業者だと思いました。」
(※2)上野保氏:総務省 総合科学技術・イノベーション会議 評価検討委員、 2016年旭日双光章受勲
事業第二の柱であるレーザーはこれからまだ発展する技術。40年前に導入した創業者、保社長には先見の明があった。会社がまだ貸工場の時代に“航空技術に取り組む”という夢を実現させるためにスタート。結果的に必要な工場や先端技術への投資で借り入れも膨らんだ。しかしそこには、最先端設備のための借り入れは将来会社を伸ばすという信念があった。
「就任当初、多額の借り入れ返済に邦香社長は奔走されたのですが、ハンズオン支援のロードマップを作成する過程で、先行投資した最新設備が省エネ、脱炭素に貢献しており、結果として自らの立てられたToseiCN2045という指針の基盤をなしていることに気づかれました。私も同じです。」
“ハンズオン支援を通じて得たものはなにでしょうか?”
「我々の社内風土改革、マインドリセットができ、ゼロエミハンズオン支援に参加させて戴いたことに感謝しています。経営、幹部、管理、社員それぞれの層に刺さる、理解できるメッセージとなることで会社が一体感を持って社内改革に向かっています。また支援期間の終わりは始まり、『これから』と思わせてくれるのも大きいです。」
邦香社長も続く、
「事業承継を見据えた20年後の姿を描き、今やるべきことを示してもらった事が一番大きいです。ハンズオンの2年半はゴールではなく、その先の将来に負の遺産を残すことなく、カーボンニュートラルを達成することが大切だと気づきました。そして脱炭素は利益にもつながり本当に意味のあることで、決して自分たちだけの為ではなく社会の為となる取組だと自社内に共通認識ができました。まだ取り組んでおられない企業の皆様には、ハンズオン支援のメリットを理解・認識したら直ちに取り組んで頂きたいと思います。」
事業の第三の柱、
「私(西原氏)が、力を入れているのがレーザー洗浄機(イレーザー)事業です。この事業は高島常務から引き継いだもので、ぜひ成長させたいという思いがあります。2005年にスタートし、10年前は認知度も低かったと記憶します。今VUCAの時代だと言われますが、石油由来の洗浄剤が不要で廃水も生まないドライ洗浄はお客様が求めるものだと信じています。
この事業は一時の流行(はやり)ではなく、長く続く、貢献できる事業だと強く思うようになった背景には、ハンズオン支援で教わった【Scope3(※3)】という考え方があります。私たちの製品が私たち自身ではなく、お客様のゼロエミ活動に貢献している、できることを知り、自社の為ではなく、他社の為、社会の為になる信条に結び付いたとき、先代の保社長に後押しされているような印象をもちました。」 20年前に開始したイレーザー事業の売り上げは徐々に伸張、中東情勢が不安定な今、時勢(タイミング)が後押ししているように思われる。将来を見据え、お客様のために行った挑戦は、時を経て自らに返ってくることを、東成エレクトロビームの皆さんはすでに経験されている。
(※3)Scope3:Scope2以外の間接排出(自社事業の活動に関連する他社の排出)で輸送、配送、廃棄物など15のカテゴリーに分かれる。Scope3排出量とは | グリーン・バリューチェーンプラットフォーム | 環境省
企業情報
| 企業名 | 東成エレクトロビーム株式会社 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都西多摩郡瑞穂町高堰651-6 |
| 設立 | 1977年 |
| 事業内容 | 電子ビーム受託加工、レーザー受託加工、レーザー洗浄機「イレーザー」の製造・販売、X線CT受託撮像 |
| 資本金 | 8,500万円 |
| 従業員数 | 64名 |
| WEB | https://www.tosei.co.jp |
【ゼロエミッション経営推進支援事務局より】
東成エレクトロビーム㈱上野様、西原様、快く取材に応じていただきありがとうございました。私共の事業は“ゼロエミッション実現に向けた経営推進事業”といいます。脱炭素や省エネ等のゼロエミ活動を目標とするのではなく、よりよい経営を推進する上でのツールと認識して、ハンズオン支援をご利用戴けたことに深謝いたします。今後も公社の支援事業に注目して戴ければ幸いです。