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原価管理アドバイザー 相談事例

相談事例1

相談内容:適正な利益を確保できる売価設定のため、製品毎の原価を把握したい

 先代社長より数年前に事業を承継しました。これまでは別の仕事に従事しており、製品の原価管理について順を追って理解を深めたいと思っています。
 また、適正利益を確保できる売価を計算したいのですが、これまで製品の原価を把握しておらず、適正な売価をいくらとすれば良いか分かりません。製品の原価把握の方法を教えてください。

原価管理アドバイザーからの助言

 原価計算の手順として、最初に製品別・顧客別など原価計算の対象を選定します。当社の場合は見積が製品別に行われていることもあり、製品別が適切です。次に製品別の原価を把握します。材料費など直接費は製品別に集計しますが、材料廃棄などロスが一定量発生する場合はその分も考慮する必要があります。経費など間接費は時間当たりのレートを直近決算数値より算出し、加工時間をもとに計算するやり方が適切です。時間あたりのレートを算出する際には休憩や会議など製品の加工をしていない時間を除いて算出することも重要です。

利用企業の声

 手順を追った説明を聞き、原価計算の進め方、考え方を理解することができました。そして、いくつかの製品ついては、一緒に製品原価を計算して頂きましたので、原価計算に必要な情報、やり方を理解することができました。他の製品についても原価を計算し、価格交渉など経営に役立てていきたいと思います。
 また、今回の支援を受けた後に仕入材料について交渉を行う機会がありました。従来はこれまでの仕入価格しか意識していませんでしたが、製品原価全体に占める割合などを意識しながら交渉することができました。

相談事例2

相談内容:自社の原価管理方法について改善点が有るか確認してほしい

 公社主催の原価管理セミナーに参加いたしました。その内容を参考に自社製品の原価計算ロジックを作成しましたが、これについて計算方法や考え方の妥当性、改善点の有無についてアドバイスを頂きたいです。また、製造、技術部門など関連部門の担当者にも原価計算を理解してもらいたいので、担当者に対し、当社で作成したロジックを基に原価計算の説明をお願いします。

原価管理アドバイザーからの助言

 原価計算のポイントとして材料・労務費・経費など費用がすべて網羅されていることが必要です。会社で作成されたフォーマットでは費用が全て網羅されているので妥当と考えます。
 細かな点になりますが、労務費についてはアワーレートを用いて製品毎に分配しています。アワーレートの算出に使用する稼働時間において、稼働日数は有給休暇取得分の考慮、加工時間は休憩や会議時間など加工に従事していない時間の考慮をされると、より精度の高い計算が可能になります。

利用企業の声

 支援の後にレートの計算方法の見直しを行い、原価計算の精度向上を図りました。これにより製品別損益より製品毎の課題が明確化されると共に、改善策の検討が以前に比べやりやすくなりました。
 また面談を通して、同席した関連部門の従業員も原価に対する理解が深まり、製造時間短縮など効率化について改善を行うきっかけができたと感じています。

原価管理アドバイザーから原価管理のポイント

1.原価管理とは

「原価計算基準」(昭和37年11月大蔵省企業会計審議会公表)では以下の通り定義されています。

「原価計算基準」での定義
 原価管理とは、原価の標準を設定し、これを指示し、原価の実際の発生額を計算記録し、これを標準と比較して、その差異の原因を分析し、これに関する資料を経営管理者に報告し、原価能率を増進する措置を講ずる。

 つまり原価管理とは、企業が事業活動を行うにあたって、必ず発生する原価を、その発生する原価に対して目標を定め、実績と比較分析し、改善して効率的に事業活動を行うことです。
 また、原価管理とは、より多くの利益を得られるように原価の管理を行うことで、かかった原価を計算するだけでなく、標準の適切な原価と実際の原価との差異を分析したり、改善活動を行ったりすることも含まれ「コストマネジメント」とも呼ばれています。

2.原価管理の目的

原価管理の目的は以下の2つです。

  1. (1)利益管理
     原価管理の最大の目的は、利益の程度を把握することで、自社の利益を正しく把握し、管理することで、利益確保、利益拡大につなげていくことです。
     適切な原価を把握できていなければ、製造した製品にいくらの価格を設定すれば利益が上がるかを把握できず、売上は上がっているのに利益は出ないといった状況にもなりかねません。
     製品毎(又は案件毎)の利益把握、また損益分岐点の把握等経営管理上も非常に有効です。
  2. (2)リスク管理
     リスクを予想して管理することが原価管理の目的です。例えば、販売価格を一定に保とうとしても、為替変動等の経済環境及び労務費高騰等のさまざまな社会情勢によって原価は変動します。
     仕入材料費価格の高騰が起きれば原価は上がり、販売価格が同じであれば、利益は、上がった原価の分だけ下がります。そのため、原価管理によって原価変動のリスクを予測し、対策を立てることで利益低下、損失を最小限に抑えることが重要です。加えて、昨今の中小企業庁の調査では原価を明示した価格交渉が有効との調査結果もあります。

3.原価管理の手順

原価管理の手順は以下4ステップです。

  1. (1)標準原価の設定
    計算の基準となる「標準原価」を設定します。
  2. (2)原価計算の実施
    開発、生産等の段階に入ってから、材料費・労務費・経費のすべてを合計して合理的に計算します。
  3. (3)差異分析の実施
     標準原価と実際原価を比較して差異分析を行います。事前に計画した標準原価と実際にかかった原価を比較分析することで課題点を洗い出し、今後の改善方法を見つけます。
  4. (4)改善活動の展開
     差異分析の結果、差異が大きい部分には何らかの問題が内在している可能性が高く、なぜ差異が生じているかを掘り下げて、実際に原価を抑えるための改善活動に繋げることが大切です。

    ※原価管理と原価計算の違い
     原価計算とは、製品やサービスにかかる原価を、目的に応じて正確に計算して把握する手続きで、原価管理を徹底するための手段です。原価管理は、基準となる原価から外れないように統制したり、基準より原価を下げる取組も含まれます。原価管理のためには原価計算が必須となります。

4.原価管理のポイント

原価管理のポイントは以下のとおりです。

  1. (1)原価計算の正確性・合理性
     原価の正確な把握は難しく、また専門知識を有しますが、合理性を確保した正確な原価計算が重要です。また、原価計算の3ステップ(①費目別原価計算、②部門別原価計算、③製品別(又は案件別)原価計算)を踏まえ目的に合致した段階的な原価計算も有効です。
  2. (2)原価把握の網羅性
     原価把握においては、事業活動や製品の特長に応じた原価把握が重要で、また原価把握に漏れが生じないように網羅性を確保した原価把握が重要です。
  3. (3)的確なPDCA
     上述した原価管理の4つのサイクル(①標準原価の設定、②原価計算の実施、③差異分析の実施、④改善活動の展開)の的確なPDCA実施が重要です。
  4. (4)原価情報の共有化による意思決定の整合性
     社内関係部門等当事者間での原価情報(見積原価の範囲等)情報の共有化による意思決定の整合性確保が重要です。
  5. (5)原価管理の継続性
     継続的に原価管理することで、原価がどのように動いているかを把握でき、原価変動のリスクにも対応が可能です。原価見直しが数年毎また不定期で継続的でない場合は原価管理目的を達成できません。

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