事例集

●事例01

高齢母にトキメキを届ける装い&ラボ事業
第2回東京シニアビジネスグランプリ 最優秀賞
 
合同会社FUKUFUKU-YA
代表 深津チヅ子さん

代表者インタビュー

事業内容を教えてください。
事業内容は、「もう一度お母さんを輝かせたい」をコンセプトにしたアパレルを軸に、ユーザーコミュニティも同時運用する「高齢母の幸せを考えるブランド」の展開です。
アパレルでは、80代、90代の高齢女性をターゲットに、オリジナルデザインの服をOEM生産・販売しています。女性はいくつになってもおしゃれをしたいものです。たとえ年を重ねても、その気持ちは強く残っている。それなのに高齢女性の体型に合わせた服は、おしゃれとは言い難く、いわゆるダサい物が多いのです。そこで、快適な着心地とファッションとしての美しさを両立した商品を開発しました。
さらに、高齢母を持つケアラーたちの「集いの場」と位置づけたコミュニティを展開。それぞれの課題を共有しながら商品のアイデアを出していただき、商品開発へとつなげていきたいと考えています。
起業に至る経緯やエピソードなどを聞かせてください。
高齢になった母の洋服探しに困り果てたのがきっかけです。私の両親は岐阜県下呂市で自営業を営んでいたのですが、父が亡くなり、母は10年近く1人暮らしを続けていました。母は現在93歳ですが、85歳前後から寂しさもあったのでしょう、老人性のうつ病になったりで、1人にしておくのが不安になりました。そこで地元の高齢者施設に入所してもらいました。そもそも実家は商店街から離れ、買い物も誰かに運転を頼んで車で行くような状態だったのですが、施設に入所したことで、さらに買い物にも出づらくなりました。そこで、私に洋服を買ってきてほしいと頼むわけです。歳をとって姿勢や体型が変わったことで、体が洋服に合わなくなったこともあります。また、季節の変わり目ごとに服を新調したいと思うおしゃれな人でしたから。私なら好みもわかりますから、簡単に探せるものと思っていました。
ところが、デパートに行っても、商店街に行っても、母が気に入りそうな服がないのです。スーパーの婦人服売場に高齢者向けの服が置いてあることもありますが、安っぽい海外製品が多く、買っていっても着てくれることはありませんでした。こんな悩みがあるのは私だけかと思い、周囲にいる同年代の友人に聞くと、ほとんどの人が「困っちゃうのよね、母の洋服選びは。買っていっても、だいたい文句を言われる」と言うのです。それで「みんなが困っているのに商品がないんだったら、自分で作るしかない」と思ったのです。
商品の特徴を教えてください。
主力商品はカラーバリエーションがある「羽織もの」です。
高齢者女性は真夏でも羽織物を着る方が多く、必需品なのです。また店舗を持たないネット販売が中心なので試着が難しいのですが、羽織物ならワンサイズで対応できます。そして外せないのが明るい色です。女性の洋服は年齢が高くなればなるほど明るい色が減っていくのですが、ご希望は逆なのです。ピンク系がお好みで、若い頃はそれほど好みではなかったキラキラした装飾付きの服が欲しくなる方もいます。乙女チックになっていくので、そこに応えてあげなければいけない。もう年だからと、グレーや茶色というのは違うと常々思っていましたので、明るい色を展開しました。
公社を利用されたきっかけや感想などをお聞かせください。
実は、高齢者向けの洋服を作ろうと志は立てたものの、ビジネスの知識はまったくありませんでした。ですから、まずは勉強しようと思いネットで探してみると、無料で受けられる公的サポートが結構あるのがわかりました。その中に公社のセミナーがあったのです。TOKYO創業ステーション1階のStartup Hub Tokyoで行われる単発セミナーに1年ほど通い続けました。ゼロだったビジネス知識を蓄積しつつ、人脈も作っていくという日々です。
1年経った頃に、そろそろアウトプットしないとセミナージプシーで終わってしまうと思いました。そこでTOKYO創業ステーション2階のPlanning Portのドアを叩いたのです。2階にはワンステップ上の、具体的な創業支援を受けるサービスが用意されています。すると「プランコンサルティングの先生にマンツーマンで伴走していただきながら、事業計画書を作ってはどうか」と提案されたのです。私にとっては、それが起業の本当のスタートラインだったと思います。
それまでは事業計画書なしでも構わないだろうと安易に考えていたのですが、それはとんでもない話だとわかりました。そして、並行して参加した「女性起業ゼミ」というプログラムが、私の起業魂に火をつけました。少人数制のゼミ方式で、互いに切磋琢磨しながらビジネスプランを策定していくプログラムなのですが、私が入ったゼミには非常に優秀な方々が集まっていたのです。ゼミで徹底的にビジネスについて教えてもらい、優秀な起業仲間とともにディスカッションをするうちに、「もう起業するしかない!」と決意が固まりました。
★シニア世代の方に創業のポイントなどを教えてください。
私は、長年フリーランスでライターをしてきました。そのためビジネスキャリアがあった方とは、全くスタートラインが違います。ですから公的なサポートや人脈が、本当に大事なビジネス資源になりました。また今回、シニアビジネスグランプリのファイナリストになったことで、自分が何者であるかを証明するための強力な武器を手に入れたと思っています。これがなければ、「おばさんが頑張ってやっているね」と思われるだけだったかもしれません。そういう意味でも、可能性を手に入れることができるので、応募をしようか迷っているなら、ぜひ応募してみてください。
シニアといわれる年齢になっても、常に前進していくべきだと思っています。もちろん苦労やお金の心配はつきものですから、正直に言えば「なんでこんなことを始めてしまったんだろう」と思うことが、ないわけではありません。でもシニアといわれる年齢で、新しい経験や新しい人との出会いがあるのは起業したからこそ。起業は人生を豊かに彩ってくれる大きなフィールドになるのではないでしょうか。

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