事例集

●事例02

地域密着型賃貸入居者向けコールセンター
第2回東京シニアビジネスグランプリ 優秀賞
 
株式会社バックオフィストウキョー(2023年3月設立予定)
代表取締役 小寺英志さん

代表者インタビュー

プラン内容と特徴を教えてください
株式会社バックオフィストウキョー(2023年3月設立予定)は、賃貸住宅管理会社の入居者対応を全面サポートするコンタクトセンター「つなぐコール」を事業の柱にしております。東京シニアビジネスグランプリに参加した時点では、電話での対応に特化していたので「コールセンター」としていましたが、現在、ショートメッセージやSMS、メールにも対応するシステムを準備していますので、「コンタクトセンター」というイメージです。
賃貸物件のコールセンターはすでに多くの企業が採用しており、空室状況や家賃の問い合わせ、入居申込み、クレーム処理など、入居希望者や入居者の窓口になる重要な役割を担っています。
一方、弊社のプランの最大の特徴は、すでに入居している方のクレーム対応に特化していることです。一般的な問い合わせや修繕手配だけでなく、現場での対応が必要な案件は、地域の主婦やギグワーカーを活用して直接対応します。例えば「自転車置き場の整理をしてほしい」といった要望や、設備故障、騒音、喫煙のクレームなど、入居者が求める日常的なちょっとした要望に迅速に対応します。
弊社が管理会社のバックオフィスとして機能することで、管理会社の業務を軽減し、働き方を変えていくとともに、入居者の満足度を高めることができます。「つなぐコール」と命名したのは、管理会社と入居者の気持ちをつなぐ、コールと現地対応をつなぐサービスという意味合いからグランプリ後に商品名として命名しました。
なぜ、そのようなクレーム対応をターゲットにしたのですか。
一般的なコールセンターの場合、お客様のクレームが設備故障の場合はコールセンターから提携の修繕業者に依頼をかけるため、ワンストップで効率的にできます。しかし、それ以外のちょっとした苦情、例えば「隣の部屋がうるさい」といったクレームの場合、コールセンターでは対応できません。「管理会社に伝えておきます」と答えるしかなく、大家さんと管理会社で検討して解決していく、この時間が長いのです。管理会社としてもあまりやりたくない業務ですから、つい後回しにしてしまうことも少なくありません。長い期間回答がなければ、入居者は「いつまで待たせるんだ」と、怒りの矛先が管理会社に向かうことになります。時間が経過したことにより、小さなクレームが拡大してしまうケースはよくある話です。
しかし、「隣の部屋がうるさい」という苦情に対して、「わかりました。では、お電話してみましょう」、「ポストにお手紙を入れておきましょう」などと言われたら、どうでしょう。さらに、「“お隣から”ではなく“ご近隣から”ちょっとうるさいという話があって、というように、やんわりとお伝えしてみましょう」と言われれば、入居者も安心するものです。
つまり、入居者は、自分のクレームに対して、その場で回答がもらえることで気持ちが落ち着くのです。トラブルを最小限に抑えるだけでなく、それは管理会社への信頼にもつながります。
このプランを考え、東京シニアビジネスグランプリに応募したきっかけを教えてください。
私は長年、賃貸管理業務に携わってきました。その経験から、賃貸物件の入居者からの要望事項の受付と現地対応に手間がかかること、また対応の遅れがクレームの拡大につながることを実感しています。
多くの会社が採用しているのは一次受けのコールセンターです。クレームの電話をかけるお客様の場合興奮状態の方が多く、対応が難しいという側面があるので、クレーム対応のプロが必要です。コールセンターのオペレーターが受けてワンクッション置くことで、かなり冷静に様々な事象に対応できるというメリットがあるのは事実です。一方で、コールセンターでのクレーム対応には限界があり、それを解消するには、現地に行って対応するスタッフをアテンドする必要があります。ただし、街の管理会社は広いエリアに対応することが難しいでしょう。だから私は、エリアを限定して目の届く範囲の事業展開を考えました。
グランプリに応募したのは、当該グランプリのキックオフイベントを知って参加したことがきっかけでした。というのも、私には「会社勤めでも社内起業家であるべき」という持論があります。実際に起業する、しないではなく、常に起業思考を持つ必要があるということです。起業思考を持たなければ、革新的な製品やサービスを作り上げたり、可能性を見い出したり、フィールドを広げたりすることはできません。また、定年を控えた今後の自分を考えたとき、定年後も嘱託になって働いている自分がどうしてもイメージできませんでした。そんな時、キックオフイベントに参加したことで刺激を受け、考えていたプランでチャレンジしてみようと思ったのです。
公社を利用された感想を聞かせてください。
グランプリへの応募にあたり、TOKYO創業ステーション2階のPlanning Portで、プランコンサルティングの相談員からサポートを受けました。当初は、在宅コールでギグワーカーを活用するため、事務所が必要ないビジネスプランでした。これが画期的だと思ったのです。スモールビジネスですが、十分利益を出せるすごいプランだと、自画自賛すらしていました。ところが、プランコンサルティングの相談員からは、「オペレーターが未経験者の場合は研修が必要です。そうなると自宅ではできません。事務所が必要です」とご指摘を受けました。「なるほど」と思いました。そういった現実的なことは、やはり事前に相談しないとわかりません。相談しないまま事業計画書を作成していたら、現実性に欠けるビジネスプランになっていたでしょう。
まだわかっていないことはたくさんあると思っていますが、プランコンサルティングでお聞きしたこと、ご指摘をいただいたことで、今まで知らなかったことを吸収できたという実感があります。さらに、ファイナリストに選ばれ、プレゼンテーションの勉強会などに参加できたのも貴重な経験でした。第1回のファイナリストの方とミーティングをする機会にも恵まれ、「TOKYO創業ステーションを使い倒しなさい。絶対に良いですよ」と背中を押されました。公社を通じて知り合った起業家の方々は、私の財産になっています。
★創業を考えているシニア世代の方にアドバイスやメッセージをお願いします。
アドバイスなら私がほしいですが(笑)。創業を意識した際に、最も不安に感じるのが人脈ではないでしょうか。たぶん、人脈がないことで起業を諦めている方が多いと思います。そこで私は、ビジネスコンテストへのエントリーをお勧めします。もちろん、賞を獲得すれば、その事実が大きな武器になりますが、実はそれだけではありません。エントリーすることで、様々な情報を得ることができますし、そこから人脈を作ることもできます。
TOKYO創業ステーションでも定期的にイベントを行っており、そこで知り合う方々の多くは起業を考えていますので、非常に積極的です。「話を聞かせてください!」、「面白い事業ですね。今度ミーティングしましょう」という人が多いです。私にとっては驚くほど刺激的で、今までのサラリーマン生活の価値観が破壊されていく感じがあります。だから、興味がある方は、どんどんイベントやセミナーに行ってみると良いと思います。人脈がなくても、きっかけをつかむことができます。そういう意味でも、TOKYO創業ステーションはとても良い存在だと思います。無料で使えるラウンジもありますし、副業のイベントも多いです。サラリーマンであるとか、退職したとか、そんなことは別に関係なく、本当にいろんな立場の人を迎えてくれる体制が整っています。東京シニアビジネスグランプリのファイナリストの先輩がおっしゃったように、「使い倒す」つもりで利用すればいいと思います。私もそうするつもりです。

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