事例集

●事例02

ペット用オーラルケア製品の製造販売事業
第4回東京シニアビジネスグランプリ 優秀賞
 
株式会社ペティーナ
入山 公成さん

代表者インタビュー

事業内容について詳しく教えてください
動物用ヘルスケア製品の販売・製造会社です。ペットについての飼い主の悩みランキング上位に、歯周病からくる口臭があります。口臭予防には毎日の歯磨きが必要ですが、ペットが嫌がるか、飼い主も面倒で時間がないなどの理由により実施されていないケースが多く見られます。そこで、まずオーラルケアに着目し、口腔環境を整え、歯周病菌に作用する成分を採用した、これまで国内外になかった口腔内付着型フィルム剤「ペティオーラⓇ」を開発、上市しました。
起業したキッカケは何だったのでしょうか
これまで製薬会社数社で35年間研究開発に従事してきました。その経験からヒト用外用貼付剤や口腔フィルム剤の受託製造を行っている製薬会社の顧問になりました。同時に近年、日本の製薬会社の競争力衰退が気になっており、世界に発信できる新製品の開発を模索しておりました。そんな中、我が家も親戚もペットと家族のように暮らしていると気付き、ペット市場に着目しました。これまでペット用ヘルスケア業界とヒト用製薬会社との技術交流はほとんどありませんでしたが、ヒト用医薬品技術を応用すれば、ペット用ヘルスケアに貢献できるのではないかと考え、これまでペット用に用いられてこなかった新製剤の開発を目指すことにしました。現在では1歳以上のペット(犬猫)の90%以上がすでに歯周病にかかっていると言われています。その口腔内環境を整えるため、ヒトで用いる口腔フィルム剤を応用し、1日1回愛犬愛猫の歯茎外側に貼るだけで口の中に成分が長く残り、溶けて無くなるオーラルケア製剤の開発を目標としました。そして成分処方や剤型開発、動物実験を重ね合わせて、製品を完成させました。日本の製薬会社は海外との競争力がなくなってきています。外資系製薬会社の豊富な資金力をバックとしたアプローチにより、日本の製薬会社が弱くなっているのを目の当たりにしてきました。そのため日本で起業を活性化させて、日本からものづくりを発信していかないと日本の製薬会社で見られるように製造業が下火になってくると思います。本事業は、そこに少しでも貢献できるのではないかと信じています。
起業で苦労したことはありますか
売上が予測通りに伸びていません。何故かというと広告費をかけられなかったからです。実は2024年1月から発売を計画しておりましたが、1月に発生した能登半島地震の影響で製造工場が被災し、出荷が遅れ、その結果、実質3~4か月販売開始が遅れてしまいました。これは売掛金を2か月後に回収とするとして、半年間会社の運営資金が流出し続けることを意味していました。これに追加して動物病院や主要卸へのサンプル、さらには国際特許や商標、意匠の登録申請など予想以上の出費が嵩みました。これにより広告費に捻出する費用を削らざるをえませんでした。動物病院へのプロモーションは訪問して足で稼ぐとして、ECサイトへの広告展開はどうしても費用がかかります。そのため認知度を上げるにはどうすればよいのかという課題は未だに残っています。
一方、その解決策として、先日「インターペット」という大きな展示会に出展しました。そこでは非常に大きな反響があり、「初めて見た」「これを待っていた」などたくさんのお声をいただきました。結果、ECでの売上が伸び始めました。この勢いに乗じてさらに加速させる必要があります。ここでは顧客が何を求めているのかを十分に分析し、会社としてどうアプローチすべきかを学ぶことができました。
シニア世代の方に起業のポイントなどを教えてください
目標は絵に描いた餅でしかなく、実際、起業では様々な課題が存在します。売上が安定するまでの金銭的な厳しさ、これまでとは異なった対外的コミュニケーションの難しさ、社内メンバー間での方向性のギャップ等、ほとんどの方が会社設立後に経験されると思います。思い通りにいかないのが会社の事業であって、それをやり遂げる覚悟が必要だと思います。シニアの方は若い方よりも経験がある分、困難の切り抜け方をご存知なのではないでしょうか。また、それが分かるということはこれ以上いったら危ないという危険予知もできると思います。危機に直面するとチャレンジしない方も多くいらっしゃいますが、それを乗り越えてチャレンジする覚悟を持って進めていくことが必要です。時間はあまりかけられないのですが、試行錯誤しながら少しずつでも前に進んでいくことが大切ですね。
シニアビジネスグランプリに応募したキッカケは何だったのですか
会社を起業するにあたり、TOKYO創業ステーションのプランコンサルティングで事業計画書の相談をさせていただきました。その際、コンサルタントの方から東京シニアビジネスグランプリについて話を伺い、広告宣伝が難しい中アピールになると考え、応募することにしました。一般にシニアからの起業は難しいと言われており、事業が成功してもシニアは恩恵が少ないと考える人も多いでしょう。しかしチャレンジして夢を追いかけ、その夢をつなぐことでこれからの世代に貢献できると考えています。グランプリファイナルでは、一番目の発表という事もありすごく緊張しました。これまで数十名から数百名の前で話していた自分が、久しぶりに人前に出て真っ白になる体験をし、これも良い経験でした。まだまだ壁をぶち破らないといけないと思っています。
今後の事業展開を教えてください
実際に販売に漕ぎつけてから半年が経ちました。これまでは卸経由の動物病院とECサイトでの販売をメインに行ってきましたが、今後はペットショップやペットサロンでの販売も積極的に進めたいと思っています。さらに海外からの問い合わせが多くあるため、輸出も手掛けていきたいと考えています。一方、いくつかの新商品開発も決まっています。動物病院向けには、大学と産学共同研究を行い、きちんとしたエビデンスを有する専門性を高めた製品を開発し、また一般の方向けには、より簡便な製品を開発してブランドでの棲み分けをしていきたいと考えています。そして、これらを一歩ずつ前進させて世界のトップカンパニーになりたいと思っています。
会社HP:https://petina.co.jp/

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