事例集

●事例03

社会インフラ設備を支えるAI赤外線サーモ
第4回東京シニアビジネスグランプリ 奨励賞
 
アプライドインフラレッドテクノロジー株式会社
田村 哲雄さん

代表者インタビュー

事業内容について詳しく教えてください
インフラ設備故障には発熱が伴い、赤外線サーモグラフィの温度計測による点検が有効です。しかし、データ計測と故障の予知・予防、診断にはノウハウが必要で、熟練技術者の高齢化・人手不足による点検不足で事故が発生しています。そこで、効率が良く正確な点検と診断を可能とする計測支援AI搭載赤外線サーモグラフィとAI診断プロクラムを開発し、インフラ設備の保守部門にシステムを提供することで、社会課題を解決し、安心安全な社会に貢献したいと考えています。現在は大学と共同研究を行いAIに技術を教え込んでいます。赤外線サーモグラフィは簡単にいうと、コロナ禍でよく見た非接触体温測定装置の工業用版です。
起業したキッカケは何だったのでしょうか
私は元々赤外線サーモグラフィの開発を行っておりました。赤外線サーモグラフィは、装置の技術としては非常に面白いものですが、その割には世の中で使用される機会が多くありません。赤外線サーモグラフィは技術革新により高度な技術が使われており、近年小型・高性能・低価格化が進みました。一方で、使用するにはノウハウが必要なため、熟練技術者以外に利用者が広がっていません。近年の進展目覚ましいAI技術と赤外線サーモグラフィを組合せ、用途別にソリューションを開発することで、ノウハウが不要となり、熟練技術者以外にも利用が広がる可能性が高いと考えています。長年赤外線サーモグラフィに携わってきたものとして、インフラ設備の故障予知・診断に特化した赤外線サーモグラフィを社会実装し社会貢献したいと考えました。
大学との研究はどのようにスタートしたのですか
展示会で彼らの出展ブースを訪ね、お声がけをしたところ、「一緒にやりましょう」と言ってもらったのが始まりです。そのため、現在は電気通信大学と共同研究を行っています。
事業で苦労したこと、またこれからの課題はありますか
2024年6月に起業しました。現在は研究段階であり、製品販売は行っておりませんので、資金繰りに苦労しています。銀行からの融資や東京都の創業助成金を活用している現状です。今後の課題は、製品販売です。研究開発は前職からの経験と大学との共同研究により問題がないと思っていますが、営業面が不安です。販売のチャンネルを開いていくことから始めないといけないので、それが今後の課題になると思います。
シニア世代の方に起業のポイントなどを教えてください
何をやりたいのかを最初に決めることが重要だと思います。そこへのアプローチ方法は後から自分で考えればそのうちできてくると思います。最初に自分がやりたいことをバチっと決める。俗に言うMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)みたいなものです。自分の得意分野から決めると、色々なことが考えやすくなるのではないかと思います。自分もまだ成功していないのでお手本にはなりませんが、前職で携わってきた赤外線サーモグラフィが世の中でうまく使われていないため、これを普及させる活動をやりたいと先に決めました。社会貢献できるかなどは後からついてきて、インフラ設備を対象にしたのもその後でした。
シニアビジネスグランプリに応募したキッカケ、また実際に参加してみていかがでしたか
なんとなく起業したいと思っていた時に、TOKYO創業ステーションTAMAに行ってプランコンサルタントの先生に東京シニアビジネスグランプリについて教えていただき応募しました。グランプリに応募してみて、ありがたかったのは審査員の方の事業に対してのコメントです。このコメントから気づかされたことが多くありました。事業を進める上で非常に励みにもなりました。また、事業プランを作成していく上で、期日までにプラン内容をプランコンサルタントの先生に提出する必要があるため問答無用でやらないといけない環境もよかったです。グランプリファイナル前のプレゼンテーション勉強会で教わったことは、銀行融資に向けたプレゼンテーションでも活かすことができ、非常によかったと感じています。
今後の事業プランを教えてください
本事業は絶対に世の中に役立つと考えています。赤外線サーモグラフィをより多くのインフラ設備の保守部門に利用していただけるよう、大学、赤外線サーモメーカー、システムメーカー、診断業者、販売店、部品メーカー・商社などと連携を強化し、インフラ設備故障の予知・診断事業を成立させます。まずは仮説検証を兼ねてMVP(Minimum Viable Product、顧客に価値を提供できる最小限のプロダクトのこと)を開発、顧客に使っていただき事業性を検証・修正を進めます。並行して、赤外線サーモメーカーの販売支援(コンサル)を行います。日本が世界の中で強い国でいられるために必要な事業だと感じていますので、少しでも貢献できればと考えています。またそういう同じ思いを持っておられる方がいらっしゃれば、私と共同でも各々の立場でもよいので、この事業を進めてほしいと思います。

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