事例集

●事例09

外国人×賃貸仲介の課題をITで解決する
第4回東京シニアビジネスグランプリ ファイナリスト
 
スマイルホーム株式会社
長谷 佳美さん

代表者インタビュー

事業内容について詳しく教えてください
スマイルホームは、AI不動産エージェントを活用し、入居者と事業者の課題を一挙に解決する革新的な不動産サービスを提供しています。AIが入居者の家探しを効率化し、検索から内見、契約までの時間を短縮。特に外国人入居者に着目し、訪日後すぐに住める短期定住先も紹介しています。事業者向けには、AIが紹介した顧客へ迅速に対応でき、接客時間を最大50%削減。内見までのプロセスを簡略化し、業務効率を向上させます。
AI不動産エージェントは、物件探しから入居までパーソナライズされたサポートを提供。生活全般の相談や多言語対応で、外国人顧客にも安心して利用いただけます。スマイルホームは、入居者と事業者双方に効率的で満足度の高いサービスを提供し、不動産業界に革新をもたらします。
起業した時の経緯・エピソードを教えてください
2015年、不動産賃貸業者の外国人窓口として相談に乗る中で、外国人が日本での家探しに大きな困難を抱えている現状を目の当たりにしました。日本では労働者人口が毎年減少しており、不動産賃貸事業における人材不足も深刻です。その中で、コミュニケーションが難しい外国人への対応が後回しになることに強く課題感を抱きました。
日本経済の将来は人材確保にかかっており、外国人労働者を増やすことは不可欠です。彼らを受け入れる住環境を整えることは、日本市場の明るい未来を約束する重要なファクターだと考えています。不動産賃貸事業は古い産業であり、独自のスタイルが形成されているため、DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入には親和性が低いと認識しています。しかし、電話や対面接客が主流のこの業界には、AIプロダクトが最適なソリューションだと確信しています。DXの概念ではイメージしづらかったサービス内容がAIの活用で具体的に伝わり、多くの事業者様に興味を持っていただけています。実際に12社の事業者様がMVP(Minimum Viable Product)に関心を示してくださっています。国内で業種別GDP構成比第4位を占めるこの業界は、その影響力が非常に大きいからこそ、当社はユニークなビジネスモデルを展開し、この課題に挑戦していきたいと考えています。
起業で苦労したことはありましたか
起業にあたり、さまざまな困難を経験しました。ビジネスモデルには多くの方から興味を持っていただけたものの、なかなか資金調達には至りませんでした。30社以上に提案を行いましたが、社長が若い男性でないからという理由が間接的に障壁となることもありました。知人からビジネスモデルに問題はないのに通らないのは不自然と励まされる一方で、スタートアップ資金調達上位50社のうち女性創業者が率いる企業の資金調達率はわずか2%という金融庁の発表を受け、女性が起業することへの壁を強く感じました。しかし、近年は女性起業家への支援が少しずつ改善されつつあります。
また、AIプロダクトの開発でも多くの壁に直面しました。開発者との打ち合わせが難航し、半年経っても要望通りの成果が得られない状況が続きました。その後、自ら開発技術を学び、多くの技術メンターの協力を得ることで、開発の内製化に成功しました。これにより、製品の質とスピードが大幅に向上しました。
起業を通じて学んだのは、一人で抱え込まず、周囲の力を活用することの大切さです。初期に多くの人を巻き込みながら進めることで、新たな道を切り開くことができることを学びました。
たくさんの苦労の中でどのようにモチベーションを保っていたのですか
不動産に特化したAIプロダクトがこれまで存在しないという点が、挑戦へのモチベーションを高める大きな要因となりました。また、外国人の物件探しにおいて、身元がしっかりしているにもかかわらず審査に落ちてしまう方々を目の当たりにし、なんとかこの状況を変えたいと強く思ったことも、私を駆り立てる原動力となっています。
さらに、仲介業者が抱える数多くの課題、例えば外国人顧客との言語や文化の壁による対応の負担を軽減し、業務をより効率化することで、業界全体をより良くしたいという思いも、私のモチベーションを支えています。
スマイルホーム株式会社の特徴・強みはなんでしょうか
当社は、不動産賃貸事業者が抱える深刻な人材不足の解決に取り組み、増加する外国人労働者の受け入れをサポートするために、業界に特化したベテランAIを導入しています。このAIは、シニアレベルのカスタマーケアの知見を学習し、不動産賃貸事業に親和性の高い接客を実現します。
AIプロダクトを活用することで、仲介事業者様の対応時間を最大50%短縮します。また、多言語対応によって顧客層を大幅に拡大し、売上向上にも貢献します。さらに、従来の複雑なフローをシンプルにすることで、不動産賃貸事業者と賃借人双方により良いサービスを提供します。
私たちは、AI技術を通じて不動産業界全体の課題を解決し、業界の効率化と顧客満足度の向上を目指しています。
シニア世代の方に起業のポイントなどを教えてください
プロダクト開発に限って言えば、スタートでお金をかけ過ぎずに、最小限に価値のあるMVP(Minimum Viable Product)を作ることです。他にはやると決めたらやることです。やらないことで後悔するよりもやったほうがいいと思いますし、夢を決してあきらめないことです。起業はリスクを伴いとても勇気のいることですが、人生100年時代に社会でもまれてきた経験や知見を活かし、自分にもできる社会貢献が必ずあります。後に続く方がインスパイヤ―されるような仕事を目指していただければと思います。あと、女性起業家は男性以上に苦労する部分がありますので、覚悟が必要だと思います。決して諦めずに頑張ってください!
東京シニアビジネスグランプリに応募した動機や感想などを教えてください
女性起業家は資金調達が大変なので、箔をつけたいと考え応募しました。東京シニアビジネスグランプリに参加することでコネクションを形成することができるのでチャレンジすることをオススメしたいと思います。一人で実行するのは難しいので、TOKYO創業ステーションに相談できたのは大変ありがたかったです。東京シニアビジネスグランプリは人生100年時代に向けてよい取組だと思いますが、シニアという言葉には多少抵抗があります(笑)。
最後に今後の事業プランを教えてください
フェーズを二つに分けて考えています。一つ目のフェーズは、仲介業者を対象に接客AIチャットプロダクトを販売していきます。二つ目のフェーズとして、連携パートナーを増やすことで展開サービスの幅を広げ、管理会社様にも対応したいと考えています。当社サービスを集客から管理業務まで一本化することが狙いです。また、2年後には短期定住先の供給を現在の2倍にしたいと思っています。まずは1%の賃貸市場からスタートし、5年で10%を獲得しシステム単体だけで10億円を達成したいと考えています。
会社HP:https://jp.smilehome.tokyo/

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