
新型コロナに対する規制緩和とインドネシアの状況
インドネシア 2023.8.7
1.インドネシアにおける入国規制の緩和
2023年6月9日、インドネシア政府は新型コロナウイルスへの対策として行っていた移動規制を廃止することを発表しました。これにより、インドネシア入国時や国内移動時におけるワクチン接種証明書の提示義務及び、公共交通機関等におけるマスク着用義務がなくなりました。新型コロナウイルスへの規制が緩和される中、インドネシア国内での生活様態もパンデミック以前とは変わりつつあります。


2.ライフスタイルの変化や新しいトレンド
日本も新型コロナウイルス感染症により、ライフスタイルが大幅に変化しました。それはインドネシアも同様でしたが、急速に普及した日本にはないサービスをご紹介いたします。
① 家電製品のオンラインショッピング
新型コロナウイルスの流行以前は、主にショッピングモールでの買い物などオフライン上で行われていた家電製品の買い物がパンデミック時にオンラインに切り替わり、パンデミックの収束後も、その多くがオンライン上で行われるようになりました。さらに、オンラインショッピングに対する消費者の関心と需要の高まりにともない、決済システムや配達システムがより利便性の高いものへと発展を続けています。
②ホームサービス
パンデミック期において、様々なホームサービスの需要が高まりました。例えば、病院が自宅での健康診断サービスを提供したり、車の修理工場が自宅でのメンテナンスサービスを提供したりなどあらゆるホームサービスが体系化されました。これらのホームサービスに対する消費者の関心と需要は、パンデミック後も安定して高まりを見せています。
③配達サービスの利用
パンデミック期に需要が拡大したオンラインフードデリバリーのサービスは、パンデミック収束後も依然として高い需要があります。店舗でのイートインの利用が回復している一方で、オンラインフードデリバリーのサービスはその利便性の高さから、人々の選択肢として依然として高い人気があります。
3.インドネシアにおける働き方の変化
続いて、働き方への影響を見てみましょう。パンデミックにより定着したもの、パンデミック前に戻ったものなど現在の状況についてお伝えいたします。
① リモートワークの状況
インドネシアにおいても、パンデミック期にはリモートワークや在宅勤務(Work From Home: WFH)の需要が高まりました。また、在宅勤務の普及から、Work From Anywhere (WFA)へと発展し従業員がどこからでも仕事ができる体制が広がり、さらには、オフィス勤務(Work From Office: WFO)と在宅勤務(WFH)を組み合わせたハイブリッド勤務制度も取り入れられているケースがあります。
Work From Anywhereもハイブリッド勤務制度も、インドネシアのオフィスにおいて導入されつつあるところでしたが、インドネシア内務大臣指示2021年3号により導入されたPPKM(Pemberlakuan Pembatasan Kegiatan Masyarakat)と言われる緊急活動制限が取り消されたことにより、リモートワークの状況は徐々に減少している現状にあります。ある調査によると、2023年2月時点において、インドネシアでは労働者の62%がオフィス勤務を採用しており、多くの企業はリモートワークを奨励していないという調査結果も報告されています。
② 主な働き方の変化
オンライン会議:パンデミック以前は、主に会議や打ち合わせ等は対面式で行われていましたが、パンデミック期において、オンライン会議の利用が増加しました。オンライン会議の利便性の高まりにより、インドネシアでは新型コロナウイルスの流行が収束に向かう現在においてもオンライン会議のアプリケーションが広く利用されています。
失業率:新型コロナウイルス流行の収束にともなって失業率も変化しています。インドネシアの総労働力人口に対する失業者数の割合を示す公開失業率(Tingkat Pengangguran Terbuka: TPT)は、パンデミック以前の2019年2月時点では、5.01%であったところ、パンデミック期の2021年2月時点で 6.26%まで増加しました。パンデミックが収束に向かう2023年2月時点では公開失業率は5.45%まで減少しています。
4.パンデミック後の成長産業及び外資系企業の参入可能性
最後に、新型コロナウイルスの流行は経済成長にどれほどの影響を与えたのでしょうか。2020年から2021年にかけての産業別経済成長率と日本から見るインドネシア市場についてご紹介いたします。
① Eコマース産業
インドネシアでは、パンデミック期からEコマース産業が最も成長し、経済成長率は52%に達しました。また、インドネシア銀行は、2023年において12%のEコマース産業の成長を予測しています。
② 飲食業と輸送業
飲食業と輸送業では36%の経済成長率を記録しました。この成長は主に、パンデミック後に飲食店でのイートインサービスが再開したことと、パンデミック期に需要の高まったフードデリバリーサービスに継続的に人気があることによります。また、このような、飲食業界のサービスの多様化と需要の高まりが、デリバリーサービスを提供する輸送業の経済成長にも影響を与えたものと考えられます。

③ 旅行代理店
旅行代理店も29%と高い成長率を記録しています。これは主に、インドネシア政府による入国制限や国内外への移動規制の緩和によるものといえます。

④ 配送業者
インドネシアでは、パンデミック期において、宅配サービスの利用が増加し、ある調査では、回答者の39%がパンデミック期において宅配サービスを利用する頻度が大幅に増加したと回答しました。
上記のパンデミック後の成長産業の中では、Eコマース産業、飲食業及び配送業の分野は、外資企業にも広く開放されており、外国資本の出資比率100%が許可されています。一方で、輸送業の外国資本の出資比率は49%までに規制されており、外資企業が参入可能な分野であっても、出資比率に制限があることに留意する必要があります。また、パンデミック後に成長しつつある旅行代理店は、外資企業の参入が禁止されており、内資100%とされインドネシア国内の中小企業に限定されています。
このように、インドネシア市場への参入にあたっては、事業分野ごとに異なる外資規制に留意する必要があることは言うまでもありませんが、近年においては徐々に外国投資規制が緩和されつつあることも注目すべき点と言えます。
ポストコロナと言われる現在において、海外ビジネスの新規開拓や開拓の再開を企図する企業が増えている中で、インドネシア市場への参入を目指す企業の皆さまにおかれては、ぜひとも緩和されつつある外資規制に目を向けていただき、進出の可能性を見出していただければと考えております。
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【執筆】Tokyo SME サポートデスクインドネシア受託事業者 M&Pアジア株式会社
<ASEAN通信からの転載記事>
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