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コラム:ビジネスレポート

ベトナムの廃棄物問題

ベトナム 2024.9.16

ベトナム、ハノイの廃棄物発電所の航空写真
Soc Son Waste-to-Energy Plant

1.ベトナムの廃棄物処理全体の状況

ベトナムでは1日に約6万トンの固形廃棄物が排出されており、そのうち約60%が都市部から排出されています。特に、ハノイとホーチミンだけでかなりの部分を占めており、2020年にはそれぞれ1万2,000トンの廃棄物が発生しています(*1)。また、都市固形廃棄物は毎年10~16%増加すると予測されています。これらの70%以上が埋立処分されていますが、衛生的な埋立地に運ばれるのは20%程しかなく、残りは不衛生な埋立地に運ばれ、土壌、水、大気への汚染源となっています。

近年、一般廃棄物に加えて、産業廃棄物、医療廃棄物、農業廃棄物、有害廃棄物も急増しています。最新の国家環境状況報告書(2016年~2020年)によると、工業地帯から排出される産業廃棄物は年間約2,500万トン、医療廃棄物は年間9万6,000トン余りでうち2万4,000トンが有害廃棄物です。農業廃棄物は、畜産と農作物からそれぞれ8,500-9,500万トンが排出されています(*1)。

さらに、プラスチック汚染が喫緊の課題となっています。世界銀行が2022年に発表した報告書「ベトナムにおける単一使用プラスチックの国家ロードマップ」によると、ベトナムは年間約180万トンのプラスチック廃棄物を排出しており、海洋プラスチック汚染の原因上位4カ国(中国、インドネシア、フィリピンに次ぐ)に挙げられています。海洋プラスチック廃棄物の年間発生量は推定で28~73万トンですが、リサイクルや再利用されているのはわずか27%にすぎません(*2)。

浜辺の海洋プラスチック廃棄物
海洋プラスチック廃棄物

あらゆる種類の廃棄物の増加により、ベトナムの環境問題は深刻な状況にあります。同時に、都市部、工業地帯、農村部における廃棄物の分類、収集、発生源での処理など、廃棄物処理の各段階でベトナムは多くの課題を抱えています。

2.ベトナムの廃棄物処理技術と廃棄物処理事業者

ベトナム企業法では、廃棄物処理事業は廃棄物収集(有害・非有害)、廃棄物処理(有害・非有害)、リサイクルの3つに区分されています。現在、ベトナムには約2,100の廃棄物処理事業者がおり、その大半は廃棄物収集(73%)、次いで廃棄物処理(15%)、リサイクル(12%)となっています。このセクターは、環境衛生公共サービスと密接な関係があることから、国有企業が全体の49%を占めており、企業規模別では中小企業が大半を占めています(87%)。

外資誘致の取り組みも行われていますが、このセクターでの外資企業の存在は依然として限定的で、合弁企業14社、外資企業17社など、約30社(全体の1.5%)にすぎません。また、これらのほとんどが日本、中国、韓国企業です。外資企業の参入が少ない要因としては、多額の資本投資を必要とするだけでなく、有害廃棄物に関する厳しい規制の対象となる、この業界特有の事情も関係しています。また、条件付き産業にも分類されており、事業者は2020年の企業法に従って、有害廃棄物の取り扱いのために、廃棄物処理業の許可も得なければなりません。

技術面では、ベトナムの多くの廃棄物処理事業者が次の方法を採用しています: (1)埋立 (2)堆肥生産 (3)手動焼却 (4)廃棄物発電 (5)バイオガス。2023年末時点で、国内には約1,207の埋立地、467の焼却炉、38の堆肥生産ラインがあります(*3)。ベトナムでは埋立や焼却が広く用いられてきましたが、利用可能な土地が限られていることや、天然資源環境省が定めた排出基準を遵守していないことから、これらの方法は徐々に敬遠されつつあります(*3)。

ベトナムの廃棄物処理における重要な取り組みとして廃棄物発電があります。2024年第3四半期の時点で、15の廃棄物発電所が開発中、すでに4つの発電所が稼動しています(表1)(*4)。そのほか、堆肥製造やバイオガス生成なども奨励されています。しかし、廃棄物の分別が不十分なために微生物肥料に重金属が混入したり、バイオガス原料にプラスチックや無機物が多く含まれ、ガス生産量が減少するという課題も抱えています。ハイフォン市、ビンズオン省、ドンナイ省などには、これらの技術を採用したプラントがありますが、効率性が低いことも明らかになっています(*5)。

名称 所在地 設立年 投資家 処理能力
(トン/日)
Can Tho Solid Waste Treatment Plant カント— 2018 EB Environmental Energy Can Tho Limited (ベトナム)-
subsidiary of Everbright International Company (中国)(*6)
400
Soc Son Waste-to-Energy Plant ハノイ 2023 Europe Tianying BVBA Company (ベルギー),
Soc Son Renewable Energy Joint Stock Company (ベトナム);
Perfect Wave Holdings Limited (香港)(*7)
5,000
Seraphin Waste-to-Energy Plant ハノイ 2024 Seraphin Green Environment Technology Joint Stock Company
(ベトナム)- subsidiary of AMACCAO Group (ベトナム)
2,250
5MW Waste-to-Energy Plant ビンズオン 2024 Binh Duong Water – Environment Corporation –
Joint Stock Company (ベトナム)(*8)
アジア開発銀行(ADB)および国際協力機構(JICA)から融資を受けている
2,250

3.廃棄物処理における日本企業の事業機会

リサイクル分野でベトナムに進出している日系企業は3社あります。同分野における日系中小企業の代表的な事例としては、2020年設立のJUNK&CO Vietnamが挙げられます。同社はリサイクル用の古紙を輸入・回収し、ベトナム国内の企業に安価なリサイクル原料を提供することを主要事業としています。また、同社は廃棄物処理ソリューションのコンサルティングパートナーとして、ベトナムでのリサイクル活動の推進にも注力しており、ハノイのEnvironment & Urban One Member Limited (URENCO)Limited (URENCO)との、紙のリサイクル活動を通じた廃棄物削減の協力協定も締結しています。

ベトナムの天然資源環境省と日本の環境省は、2019年から廃棄物管理と3Rに関する協力委員会を設置しており、日本はこの分野における国際協力の主要な戦略的パートナーの一つです。3R政策に基づく適切な廃棄物処理システムの確立と、適切な技術、特に廃棄物発電技術への投資に向けて、国家機関、民間企業、業界の専門家をつなぐ活動が柱のひとつとなっています。 2024年の委員会年次総会では、廃棄物発電プロジェクトの実施のため、バクニン省とビンズオン省での協同プロジェクトを継続し、ドンナイ省、タインホア省、カインホア省、ティエンザン省の廃棄物発電プロジェクトの開発支援に合意しているほか、2023年8月25日に海洋廃棄物処理における日越協力で基本合意しています。廃棄物処理問題における日本とベトナムの戦略的協力関係や、高度な廃棄物処理技術等の日本の強み、ベトナムの廃棄物処理セクターの拡大等から、日本企業には多くの事業機会が見込まれます。この機会にベトナム進出を検討されてみてはいかがでしょうか。

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【執筆】Tokyo SME サポートデスクベトナム受託事業者 B&Company株式会社

<ASEAN通信からの転載記事>

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