成長産業で活躍する日本企業
ベトナム 2026.2.16
1. ベトナム経済の成長トレンド
近年、ベトナム経済は目覚ましい成長を遂げており、2024年はGDP成長率が7.09%となり、2025年は第3四半期に前年同期比8.2%増を記録しています。2030年までに「現代的工業国」となることを目標に、先進技術、再生可能エネルギー、オートメーションへの需要が堅調に拡大しています。
2010年から2024年にかけて、生産性の年間平均成長率は5.05%と世界最高水準に達したものの、ベトナムの労働生産性は周辺諸国と比較しても依然として低く、2023年時点では、日本の約28.6%にとどまっています。ベトナムの労働生産性には多くの課題が残っているため、オートメーションやデジタルトランスフォーメーションに関連する産業は、ベトナム政府が重点的に推進する分野となっています。
同時に、2050年までにおけるネットゼロ達成へのベトナムの取り組み、より厳格な廃水・排出規制、そして第8次国家電力開発計画(PDP8)における再生可能エネルギー拡大方針が、産業エコシステム全体に大きな変革をもたらしています。経済的要因、労働力要因、政策要因が相まって、スマート製造・オートメーションとグリーン・再生可能エネルギー事業は現在急成長中の2大分野となり、高度な技術に対する強い需要を生み出しています。
これらの分野の発展は、大企業に機会をもたらすだけでなく、ニッチな技術、高精度、柔軟性を強みとする日本の中小企業にとっても大きな市場になり得ます。JETROが2024年に実施した調査によると、在ベトナム日本企業は2,200社を超え、うち48%が中小企業で。 同調査によると、ベトナムに進出している日本企業の56%が今後1~2年以内に事業拡大を検討しているようです。これはアセアン諸国の中で最も高い数値であり、ベトナム市場拡大への期待感が表れています。
2. スマートファクトリーとオートメーション
構造転換期における生産性向上
ベトナムの製造業・加工業は2010年から2023年にかけて年平均8%以上、2024年には9.83%の成長を遂げ、産業の基幹を担ってきました。そんな中、高度人材の不足、品質要件の高まり、海外基準への適合という3つの要因により、オートメーションはもはや避けられない流れとなっています。JETROが2023年に実施した調査によると、在ベトナム日本企業のオートメーション導入への関心は高い(75.9%)が、実際の導入率は依然として低いままとなっています(28.9%)。
「関心」と「実行」の間に存在するこの大きなギャップは、日本のオートメーションサプライヤーにとって大きな事業機会となり得ます。ベトナムは、現在「加速前段階」にあり、今後3~5年でオートメーションへの投資需要が急増すると予想されます。ベトナムのオートメーション市場の規模は2024年に9.2億ドル、2033年までに19.2億ドルに達すると予測されており、2025年から2033年にかけて年平均成長率(CAGR)8.55%で成長することが見込まれています。
活躍する日本企業・中小企業の事業機会
大企業だけでなく、中小企業も重要なプレーヤーとなりつつあり、検査装置、半オートメーション部品、技術サービスなど、ニッチ分野への参入が見られます。この分野では、中小企業は、SDGs(持続可能な開発目標)に連動した実証実験や技術移転を通じてベトナムでの存在感を拡大しています。
一例として、株式会社東横エルメスは、建設現場のリスク低減に焦点を当て、センサーとデータ伝送技術を応用したインフラ監視装置・安全警報システムを軸とするSDGsプロジェクトを開始。株式会社村上商会は自動車産業における技術者およびエンジニア向けに研修・育成プログラムを実施し、技能と先進製造技術の導入を支援しています。
農業分野では、株式会社エフ・イーが、旭川市およびクアンニン省と連携し、日本技術の試験導入を実施。収穫後の野菜の洗浄や脱穀等の加工行程の最適化と付加価値向上を支援しています。また、単機能ロボットと小型オートメーション装置を専門とする日本の中小企業、昭和精機株式会社、電子機器やプラスチック工場における製造ライン最適化のニーズを追い風に急成長しています。
ベトナムではオートメーションに関心を持つ企業が多いものの導入率は低く、中低価格帯のオートメーションソリューションには大きな拡大余地があります。労働者削減と品質の均一化が進む中、今後も成長が見込まれます。
3. グリーン・再生可能エネルギー事業:ベトナムのネットゼロ実現を推進
政策による成長
ベトナムは2050年までにネットゼロを達成することを目標と掲げており(COP26で表明)排出量削減、省エネルギー、廃棄物処理、環境基準の向上に向けた様々な政策を実施しています。Statistaのデータに拠れば、ベトナムの2024年の再生可能エネルギー発電量は1,203億kWhと推定され、年平均成長率(CAGR)は3.39%となっています。また、商工省によると、2023年末までにベトナムの再生可能エネルギー総設備容量は25ギガワットを超え、国内総発電容量の約27%を占めています。
ベトナムは、第8 次国家電力開発計画(2023年決定第500/QĐ-TTg号)に基づき、2030年までに再生可能エネルギーの総発電量に占める割合を32.3%、2050年までに65~70%とする目標を掲げています。重要かつニーズの高い分野には、太陽光エネルギー、省エネ設備、環境モニタリングソリューションなどがあります。
2025年には、日本の石破総理大臣(当時)がベトナム訪問した際に、アジアエネルギー転換イニシアチブ(AETI)およびアジアゼロエミッション共同体(AZEC)の下で、総額200億米ドルを超える15のエネルギー転換プロジェクトを実施すると発表。再生可能エネルギー、送電網のアップグレード、バイオマス、水素、アンモニア、CCUS(炭素回収・利用・貯蔵)が重点項目となっています。
活躍する日本企業・中小企業の事業機会
構再生可能エネルギーと環境分野の日本中小企業は、実証試験事業や技術移転を通じてベトナム市場への進出を確実に進めています。具体例として、株式会社ラプラス・システムがホーチミン市に事務所を開設し、太陽光発電システムの監視・シミュレーションソリューションを提供。ベトナム企業のDX基準に沿った太陽光発電システムの最適化を支援しています。 省エネルギー分野では、ベトナムのTDH Ecoland社と日本のJトップ株式会社による、再生可能活性炭を用いて水処理に用いる電力を大幅に抑えた循環水リサイクルシステムの試験導入の検討が進んでおり、これは都市部や工業地帯向けの実用的なコンパクトソリューションとして注目されています。
これらの例から、日本の中小企業は、ニッチなアプローチを採り、直接的な競合が少ないハイテク分野に焦点を当て、地場企業がまだ十分に対応できていない専門的な課題に注力していることが分かります。
ベトナムのエネルギー転換プロセスは、第8次国家電力開発計画、2050年ネットゼロ目標、および税制優遇、固定価格買取制度(FIT)、電力系統連携メカニズムに関する一連の施策によって推進されています。ベトナムはアセアンで最も高い再生可能エネルギー導入ポテンシャルを有し、太陽光発電容量では東南アジア首位に位置するものの、送電システムと再生可能エネルギー源の連系・統合能力には課題が少なくありません。このため、技術ソリューション、デジタル技術、オペレーションサービスに対する需要が強くなっています。
これらは日本企業が強みを持つニッチ分野でもあるため、事業機会となっています。特に、運用監視、スマートセンサー、容量最適化、エネルギー貯蔵、補助設備、ハイテク素材、技術者育成およびプロセス移転といった分野は、日本の中小企業と高い親和性を持っています。
さらに、政令 58/2025/ND-CP、DPPA(直接電力購入契約)制度といった支援政策、および JETP(公正なエネルギー転換パートナーシップ)、JICA(国際協力機構)、EU による海外資本導入の取り組みにより、実証事業、官民パートナーシップ、ベトナム企業との提携などを通じて、この市場に参入しやすくなりつつあります。
ベトナムが送電システムの高度化、貯蔵システムの開発、エネルギー部門のデジタル化を必要としている状況において、日本の中小企業は、ニッチな技術と費用対効果の高いソリューションを供給する戦略的パートナーとなり得るでしょう。
4. まとめ
ベトナムで既に事業を展開している日本企業の事例から、中小企業が「スモールスタート・迅速な市場検証・段階的拡大」という方向性をたどった場合に成功しやすいことがわかります。地場企業との小規模な実証事業や技術協力から始めることで、リスクを軽減し、制度環境を正確に把握した上で、市場に適応するための技術調整を行うことが可能となります。
また、試験期間の短縮、市場からの信頼を勝ち取るためには、現地の省や市、職業訓練校、工業団地、民間企業など、有能な現地パートナーの発掘が不可欠となります。
皆様もこの機会にベトナムでの事業展開を検討されてみてはいかがでしょうか。
Tokyo SMEサポートデスクベトナムでは、都内中小企業の皆さまのベトナム展開を支援しています。ご利用を心よりお待
ちしております。
【執筆】Tokyo SMEサポートデスクベトナム受託事業者
B&Company株式会社
<ASEAN通信からの転載記事>