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「高品質」だけでは勝てない? 変動するインドネシア市場と中国製品に対するイメージ

インドネシア 2026.3.16

人口2億8,000万人以上を抱えるインドネシアは、ASEAN地域でもっとも注目度の高い成長市場の一つです。2025年および2026年の経済成長率は4.9%と見込まれ、堅調な内需と投資拡大が続くと考えられます。街を歩けばショッピングモールが増え、地方都市でもスマートフォンを手にする若者の姿が当たり前になりました。この巨大市場では、購買力を高める中間層が拡大し、多様な製品やサービスへの需要が急速に高まっています。その中でも、とりわけ圧倒的な存在感を放っているのが中国製品です。かつての「安かろう悪かろう」というイメージは徐々に払拭され、品質向上と圧倒的な価格競争力を武器に、インドネシア消費者の生活に広く定着しています。

インドネシアの街並み

1.インドネシア市場における中国製品の現状

現在のインドネシア市場において、中国製品は特定の分野にとどまらず、あらゆる領域で流通しています。特に近年目立つのは、政府が推進するEVシフトの波に乗った自動車産業です。BYDやWulingといった自動車メーカーは、政府の優遇措置を最大限に活用し、日本メーカーがまだ本格参入していないEV市場で、手頃な価格帯のモデルを次々と投入し、2025年上半期の純電気自動車(BEV)に占める中国メーカーのシェアが93%に達するなど、急速に拡大しています。

街中でしばしば目にする中国産自動車メーカー「BYD」

家電分野ではHaierやMideaといった家電メーカーが、スマート機能等を搭載した最新モデルを日本や韓国の製品よりも遥かに安く提供し、コストパフォーマンスを重視する中間層の心を捉えています。さらに、Shopee、Tokopedia、BlibliなどのECプラットフォームの発展も後押しとなり、アパレル、雑貨、電子機器など多種多様な中国製品が直接消費者に届けられるようになりました。

ジャカルタ - バンドン間の高速鉄道(Whoosh)に象徴されるように、インフラ分野でも中国の技術と資本が深く関与し、中国製品は安価な日用品から技術力を要する工業製品、国家プロジェクトに至るまで、インドネシア市場に深く浸透しています。

日本との熾烈な競争の末、中国が落札した「Whoosh(高速鉄道)」

2.中国製品に対するイメージの転換

十数年前までインドネシア市場での中国製品イメージは、「安かろう悪かろう」というのが一般的でしたが、この認識はここ数年で劇的に改められています。大きな転機となったのはスマートフォンの普及です。日本市場でもよく目にするOppo、Vivo、Xiaomiといったスマートフォンメーカーは、高性能カメラや大画面といった現地の若者が好む機能を搭載しながらも、大手の半額以下という圧倒的な価格設定でシェアを伸ばしました。これにより、「中国製品は安くても機能的でデザインも洗練されている」という新しいブランドイメージが形成されました。消費者は「中国製だから」と購入をためらうことは少なくなり、むしろ「この価格でこの品質・機能が手に入る」という合理的なコストパフォーマンスを評価する傾向が強まっています。技術革新を背景に、中国製品は従来の「安かろう悪かろう」から、「高い技術力と価格競争力を兼ね備えた製品」というイメージに変わりつつあります。

(左)世界スマートフォン市場上位に位置する中国メーカー「OPPO」、(右)Apple、Samsungに続き世界スマートフォン市場3位に位置する中国メーカー「Xiaomi」

3.日本製品の「優位性」と「新たな挑戦」

一方、インドネシア市場における日本製品のブランドイメージは依然として強固です。特に自動車市場では、2024年のインドネシア国内自動車生産台数の内、89.5%を日系メーカー占めており、「高品質」「信頼性」「耐久性(壊れにくい)」の代名詞となっています。ハイエンドの家電製品や産業機械分野でも、日本製品が持つ精密さや長寿命設計、充実したアフターサービス体制は高く評価されています。インドネシアの消費者は、「価格は高くても、長く安心して使える良いもの」を求める際には、今もなお日本製品を第一の選択肢として考える傾向があります。

ただし、日本製品が持つ「価格の高さ」は課題にもなります。中国製品が品質の差を急速に縮め、中間価格帯の市場で魅力的な選択肢を提示する中、品質面での優位性は依然として残しつつも、その差はかつてほど絶対的なものではなくなっています。日本製品は「価格差に見合う価値」を提示することが求められているとも言えます。

4. 日本企業がインドネシア市場で成功するには

このような市場環境において、日本企業が中国製品と競合し、インドネシア市場で成功を収めるには、市場ニーズの正確な把握が不可欠となります。インドネシア市場は多様性に富んでおり、富裕層、中間層、低所得者層では、求める品質レベルも許容価格帯も全く異なるため、自社の製品・技術が、どの顧客セグメントのどのようなニーズに応えるものなのかを把握する必要があります。また、インドネシア特有の規制対応も重要です。特に食品、化粧品、医薬品等を扱う場合、BPOM(インドネシア国家医薬品食品監督庁)への登録や、総人口の約87%を占めるイスラム教徒が安心して製品を購入できるようにハラル認証の取得は必須条件となります。多くの工業製品にはSNI(インドネシア国家規格)の取得も求められます。これらの対応には時間とコストを要するため、早い段階からの準備が欠かせません。

そして、「短期的な価格競争を避ける」ということも大切です。一般的に資本力や生産規模で勝る中国企業に対し、同じ土俵で挑むのは現実的ではありません。日本製品の最大の武器は「品質」と「信頼」です。すぐに成果が出なくとも、誠実な製品づくりと丁寧な顧客対応を続け、長期的な信頼構築と時間をかけたブランド育成をする忍耐強さが求められます。

インドネシア市場は、その魅力と同時に、多くの場合、中国製品との競争が待ち受けている場所でもあります。日本製品が長年培ってきた「高品質」で「信頼できる」というブランドイメージを背景に、日本の企業ならではの優れた技術力、細部へのこだわり、顧客に寄り添う丁寧なアフターサービスといった「総合力」でいかに勝負するかが鍵となります。自社が何を「強み」として打ち出すのかを明確にし、短期の成果に一喜一憂せず、長期的な視点で信頼構築をしていくことで、インドネシア市場におけるビジネスチャンスが開かれていきます。

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【執筆】Tokyo SME サポートデスクインドネシア受託事業者 株式会社インドネシア総合研究所

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