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令和4年度

成功事例紹介
成功事例紹介

“勢い”のあるベトナムで、オフショアを目的とする子会社を設立

一級建築士事務所 株式会社 空間デザイン

海外拠点設置戦略支援

『海外戦略策定セミナー』と『海外戦略策定講座』をきっかけにベトナムへの事業展開が明確になった

当社は長らく大阪で建築設計に携わっていましたが、2015年に東京へ進出しました。その後、別都市への展開も計画したものの、参入はメリットがないとわかり断念。「さて、次はどうしよう?」と考えていた頃、ベトナムに進出していた協業会社の創立パーティに参加し、「中小企業でも海外に出られるのだな」と感心しました。

そのような時、複数の支援事業を利用していた公社から届いた広報誌で、海外展開の支援もあると知りました。まだ具体的に何か考えていたわけではありませんが、「ちょっと聞いてみるか」と『海外戦略策定セミナー』に参加。実際に進出した企業の方々の「本当に苦労したこと」など、生の声を面白く拝聴しました。

そして翌年には『海外戦略策定講座』を受講することに。アセアン各国の経済や建設関連業界の状況、進出企業・市場などの情報を公社のプランマネージャーに調べてもらい、自分でも色々と情報を収集し、定期的に海外拠点戦略ナビゲータと面談するうちに、ベトナム進出の意志が明確になっていったのです。

ベトナムは平均年齢34歳の若い国で、日本の高度成長期頃と似た勢いがあります。一方で、まだ設計デザインに高い対価を払う文化はないことと、実績のない日本企業が現地の仕事を直接受注することは難しいということもわかりました。そこで、割り切ってオフショアを基本として「日本で受注した仕事の作図をベトナムで行う」事業計画を作成。社内にはベトナム事業推進室を立ち上げ、ベトナム人社員を採用し、事業化に向けた仕組みも作りました。当時、社員たちは「また何かやっているな?」くらいに考え、海外への進出は半信半疑だったようですが。

事前のオンライン面談で実情を掴み 現地訪問で事務所物件と人材を確保

海外拠点開設の『ハンズオン支援』が始まったのは、ちょうどコロナ禍の真っ只中。1年目は渡航制限で現地訪問ができなかったため、オンラインで面談を設定してもらい、複数の建築関係の会社・不動産会社・人材 紹介会社、ダナン工科大学や有名私立大学の担当者・学生と直接話しをしました。資料では「美しい事例・大きな会社の事例」はよく目にしますが、ローカルな話や小さな会社のことはわかりません。現地を訪問する前に生の声を聞いて実情を掴み、訪問先を選定できたのは良かったと思います。

翌年8月には、事務所用の物件探しと人材採用の下調べを目的にダナンを訪問。土地勘のない海外で細かく動くのは大変ですが、公社が先方とのアポイントから通訳・車の手配まで行ってくれるので、効率よく回ることができ助かりました。官公庁などのアポイントも実にスムーズで、「日本」というブランド力を実感。

2022年8月初回ダナン出張の様子 ダナンの建築設計事務所にて記念撮影
2022年8月初回現地出張で訪問したダナンの建築設計事務所にて

「一般のビジネス視察ツアーとは違うな」と感じました。現地を回ってみて、エリアによる雰囲気の違い、ビルによっても日系企業だけのビル、ローカル会社しか入居していないビルなど棲み分けがあることもわかりました。私は気にしていなかったのですが、ナビゲータからは「最初はリスクを避け、外資や日系企業が多いエリアにした方が良い」とアドバイスを受けました。

もちろん、「大変だな」と思ったこともあります。一番は、日本では当たり前の「暗黙の了解」が通じないこと。日本人は信用を大事にして一度契約したら必死に守ろうとしますが、先方は契約は破られるものとして考えます。そのため、気に入った事務所物件を押さえておき入居は3ヶ月後に、ということはベトナムではできません。事務所の契約がないとベトナムで会社を作ることができないため、ここは非常に苦労しました。

12月の2回目のダナン訪問では、良いロケーションの事務所物件を見つけて契約。レンタルオフィスを借りて現地人材の採用面接を行いましたが、オンラインで日本にいる総務部長や設計部長も加わり、数名の採用者を決めることができました。

2023年2月開設のダナン新オフィスの様子
2023年2月開設したダナン中心部の新オフィス
ベトナム語の会社案内
公社支援プログラムで製作したベトナム語の会社案内

ベトナムの子会社と分業して事業を進め 将来はローカルでの受託を目指す

帰国後公社が紹介してくれた日系の現地コンサルタントに継続してサポートしてもらい、会社設立の手続きを完了。2023年2月末、ベトナムのダナンに子会社が誕生し、当社は海外進出を実現することができたのです。

ここまでは公社の支援のおかげで順調に推移しましたが、これからは自分達のジャッジで事業を継続していかねばなりません。当面は日本で受注した仕事を分解・見える化し、分業して事業を進めていきます。そして将来、ベトナムの経済が日本と肩を並べる程に成長したら、ベトナムでの建築設計の受託も考えていきます。

企業詳細

一級建築士事務所 株式会社 空間デザイン

デザインで空間に豊かさと美しさをもたらす

建築設計・インテリアデザイン・環境設計から監理・耐震診断・耐震改修設計・調査・点検までを担う建築設計事務所。「建物は人を幸せ・快適にするための手段」と考え、設計活動において創出されるあらゆる空間に、「美しさ」「豊かさ」を実現。「空気質」の観点も大切にしたデザインを手がけている。

所在地 東京都豊島区巣鴨4-13-19 Wiser巣鴨2階
代表者 代表取締役 阿部 弘明
設立 1996年9月
資本金 1,000万円
従業員数 27名(大阪 16名 東京 11名)
URL https://sd-arc.jp別タブで開く

海外展開を目指す人へのメッセージ

代表取締役 阿部氏

代表取締役 阿部 弘明氏

「やらない理由」はいくつでも作れますが、あれこれ 考えていないで海外へ出てみれば良いと思います。 日本は少子高齢化で市場の縮小が見込まれますが、 アセアンはまだまだ成長途中。また、日本企業に対しては先人たちが真面目に仕事をして培ってきた「ジャパン・ブランド」のイメージがあり、ビジネスにとっては環境良好。ダメならば撤退すれば良いだけ、公社の支援プログラムを使えばダメージも大きくありません。それに結果的に進出しない判断をしても、その過程で得られた様々なアドバイスや自分で見た各国の実際の状況は、その後の事業展開にプラスになるはずです。

代表取締役 阿部氏

公社の支援利用実績

2019年〜 2020年2月
海外展開プランの策定支援

2020年7月
海外戦略策定セミナー受講

2021年5月
海外戦略策定講座参加

2021年7月〜
海外戦略・拠点設置ハンズオン支援開始

2022年5月
グローバル人材育成講座参加