令和7年度
公社海外事務所から得た「顧客の生のニーズ」が大きな助けに
株式会社日本バリアフリー
企業の強み💡
日本バリアフリーは、鮭の未利用資源から健康食品・化粧品の原料を生み出す企業だ。手掛けているのは、鮭の卵巣膜から抽出・精製される「マリンプラセンタ®」、鼻軟骨から得られる「マリンプロテオグリカン®」、オス鮭の腸管から分離した乳酸菌を殺菌粉末にした「マリン乳酸菌®」、白子から抽出・精製した「マリンDNAペプチド®」。これらを18カ国の食品・化粧品メーカーに提供するほか、近年では自社ブランドのコスメ製品やサプリといった完成品の開発にも乗り出している。
海外進出を目指したきっかけ
限られた社内リソースの中で海外進出の強化を図った
アイヌ文化において、鮭は「カムイチェプ(神の魚)」と呼ばれているそうだ。淡水と海水という異なる環境下でもタフに生き抜けること。そして、産卵のために餌も食べず激流をひたすら上る強い生命力が、アイヌの人々から尊ばれているのだろう。同時に、鮭は世界で最もポピュラーな魚でもある。日本では「シャケ」や「イクラ」として幅広く好まれているが、最近は欧米などでも消費が拡大中。世界で最も食べられている魚は鮭だとするデータもある。
そして、鮭は捨てる部分がほとんどない魚だと、日本バリアフリー代表取締役の江藤忠士氏は語る。
「身や卵はもちろん、白子や内臓もおいしく食べられます。また、骨や頭にも豊富な栄養が含まれていますし、アイヌの人々は鮭の皮を使って衣服や靴を作っていたそうです。そのように、ムダな部分が何一つない点も、鮭が『神の魚』とされる理由の1つかもしれません。私たちも、従来は捨てられていた鮭の内臓や骨などから食品・化粧品の原料を取り出し、世に広める事業を行っています。鮭という貴重な資源を科学の力でフル活用することが、私たちの目指す道なのです。まさに、今流行りのSDGSを実践してきたとも言えます」
同社が海外進出に取り組み始めたのは、日本の人口が減少に転じ、国内市場の縮小が危惧されていた2010年前後。江藤氏はカントリーリスクなどの観点から、成長著しいASEANへの進出を目指した。しかし、売り上げは期待ほど伸びなかったという。
「理由は4つほどありました。1つ目は、そもそも社内リソースが限られていて、海外の新規顧客を獲得する余裕がなかったこと。2つ目は、海外の代理店が思うように機能しなかったこと。3つ目は、海外の顧客と直接商談ができなかったため、現地のニーズがつかめなかったこと。そして4つ目が、国ごとの地政学的リスクが分からなかったことです。これらの解決には、海外展開を主導する人材の確保や、現地とのネットワークづくりが不可欠でしたが、当社にはとても望めないことでした。
そんな悩みを金融機関に伝えたところ、紹介されたのが公社です。まずは海外ワンストップ総合相談窓口*1で面談を受けたところ、海外販路開拓支援事業の利用を勧められました。それまで私は公社の存在を全く知らなかったのですが、『使える仕組みは何でも使おう!』と思い、申し込んだのです」
「海外販路開拓支援」を利用
公社スタッフの支援で現地企業のニーズをつかみ商談に成功
日本バリアフリーが海外販路開拓支援を利用し始めたのは、2022年9月のことだ。同年11月には江藤氏がバンコクを訪問し、公社タイ事務所の現地スタッフとミーティングを実施。原料を提供できそうな海外企業を数社紹介され、グローバルナビゲータ*2からの助言を受けながらマッチング商談会に挑んだ。
「マッチング相手の企業と公社タイ事務所との間には、すでに信頼関係が構築されていました。おかげで、互いの情報交換はスムーズに進み、安心して商談に臨めましたね。またマッチング商談会後には、タイ企業からの感想が公社を通じて届きました。これが次回以降の商談に、とても役立ったと感じています」
マッチング商談会で江藤氏が最も腐心したのが、「顧客ニーズの深掘り」だった。海外進出を目指す日本企業の中には、自社の製品や技術力のアピールに没頭し、相手が求めることを深く探ろうとしないところが少なくない。しかし、これでは契約にはつながりにくいというのが江藤氏の見立てだ。
「例えば八百屋さんが、サラダ用の野菜を買いに来た客に『このジャガイモはおいしくて安いよ!』とおすすめしても、なかなか買ってもらえませんよね。それと同じで、技術や製品がどんなに優れていても、ニーズとずれた提案はなかなか受け入れられないものです。そこで私たちは、まずは顧客が求めていることがらを正しく理解することに努めました。
このときにとても助かったのが、公社現地スタッフからの支援でした。現地の代理店は自らの利益を守るため、顧客が秘める『本当のニーズ』を教えないことがあります。ところが、タイに根を張る公社スタッフの皆さんは、現地のナマの声や業界内の力関係など、私たちが知りたかった情報を教えてくれたのです。それに、現地企業の表面的なニーズだけでなく、私からの『どうしてそれが求められるのでしょうか?』という深掘り質問にも的確に答えてくれました。その内容を受けて提案内容をアレンジした結果、マッチング成功率は格段に高まったと思います」
江藤氏の顧客ニーズを最優先する姿勢は、どんな場合でも徹底されている。例えば2022年のマッチング商談会では、自社が提供できる原料より良いモノがあると考え、代わりに他社の原料を提案した。
「自社製品を売り込みたい気持ちはもちろんありますが、無理強いは絶対にしません。あくまで相手のニーズを満たすことを目指した結果、その時は他社の原料を推薦しました。すると先方からすぐに、当社が代理店になって商品を納入する契約を申し込まれたのです。その後も何かあるごとに、『こんな原料がほしいのですが、江藤さんはご存じないですか?』と問い合わせがきます。
マッチングは、一方通行では成り立ちません。相手ニーズをしっかり把握し、それに合う提案をすることで、初めてマッチングは可能になります。そして相手ニーズの把握には、公社という『バイアスのない情報を提供してくれる機関』の存在がものを言うのです」
海外進出の状況
原料拡販での学びを生かし、今後は完成品の海外展開を目指す
江藤氏は海外販路開拓支援を利用する過程で、海外企業とのマッチング成功には以下が重要だと学んだ。
- マッチングを目指す企業や、その企業が属する業界の正しい情報を入手する
- 相手企業のニーズを表面的な理解にとどめず、できる限り深掘りする
- 自社が相手企業にどんな価値を提供できるのか整理しておく
- パンフレットや日本における採用事例を翻訳した資料、サンプルなどを用意する
- 国内の業界動向など、相手にとって有益な情報は積極的に提供する
- 通訳者にも事前に各種情報を伝えることで、商談がスムーズに進むよう工夫する
これらを心がけ、さらに公社から適切なバックアップを得て、日本バリアフリーはこれまでに参加した商談会で高いマッチング成功率を納めてきた。その結果、ハラル認証を取得していることもあり、イスラム圏のインドネシアやマレーシアといったASEANはもちろん、中東からの引き合いも増えている。
こうして販路が拡大したことを背景に、同社は原料だけでなく、成約に至る商談リードタイムを短縮すべく自社ブランド健康食品・化粧品『PURE JAPAN MADE®』の生産・販売に乗り出す予定だ。
「公社の皆さんに助けていただき、鮭から得た原料の海外拡販には成功しました。この過程で学んだノウハウを生かし、次のステップでは、自社オリジナルの完成品を国内外で売り出したいと考えています。すでに国内では、発売開始から数カ月でかなりの量を販売。今後は海外でも売り上げを伸ばし、3年後には完成品の売上額を全社の5割程度まで引き上げるのが目標です。そうなれば、当社はさらに成長できるでしょう」
公社が提供する支援は、中小企業にとって有益だというのが江藤氏の実感。ただ、それを自社の血肉にできるかどうかは、経営者の覚悟次第だとも指摘する。
「グローバルナビゲータの方々は皆、豊富な経験と海外人脈の持ち主です。また、公社スタッフの支援も親身で、リソースが常に不足気味の中小企業にとっては本当にありがたいものでした。ただ、皆さんの助けを受け身の姿勢で享受するだけではいけません。捨てるところのない鮭のように、公社メニューを余すところなくフルに活用する姿勢が大切なのではないかと、私は考えています」
日本バリアフリー・江藤氏からのひと言
公社が提供する支援は、中小企業にとって有益だというのが江藤氏の実感。ただ、それを自社の血肉にできるかどうかは、経営者の覚悟次第だとも指摘する。
「グローバルナビゲータの方々は皆、豊富な経験と海外人脈の持ち主です。また、公社スタッフの支援も親身で、リソースが常に不足気味の中小企業にとっては本当にありがたいものでした。ただ、皆さんの助けを受け身の姿勢で享受するだけではいけません。捨てるところのない鮭のように、公社メニューを余すところなくフルに活用する姿勢が大切なのではないかと、私は考えています」
日本バリアフリー・海外進出の道のり
| 2022年11月 | 江藤氏が公社タイ事務所に出向き、現地スタッフと面談。自社が提供できる価値について説明した |
| 2022年12月 | 公社スタッフから、現地企業のニーズについての情報が届く。その後もメールなどでやり取りし、ニーズをさらに深掘り |
| 2023年3月 | ビッグサイトでの日タイ食マッチング商談会に参加。6社と商談し、ニーズの詳細をヒアリング タイ企業が求める追加資料を提出しつつ、次回商談の約束を取り付けた |
| 2023年4月 | 江藤氏がタイ事務所を訪れて6社と商談。うち3社から発注を受け、現在でも4社と商談を継続中 |
| 2023年9月 | 海外販路開拓支援 開始 |
| 2026年2月 | ドバイの展示会「WHX Dubai」で完成品『PURE JAPAN MADE®』の自社ブランド製品を展示。 52か国178社からセールスリードを獲得 |
会社概要
株式会社日本バリアフリー
- 創業:1996年
- 代表取締役:江藤忠士氏
- 資本金:5000万円
- 従業員数:5名
- 所在地:東京都千代田区神田神保町1-41 駿河台下MKビル4階
-
URL:https://www.n-bf.co.jp/
(注釈)
-
※1 海外ワンストップ総合相談窓口
都内中小企業者からの輸出業務、英文契約書、海外規制などに関する相談に、1カ所で総合的に対応する窓口。何度でも無料で利用でき、経営相談の場合は来社だけでなく、電話やオンライン、メールでも相談が可能(法律相談は来社とオンラインのみ)。 -
※2 グローバルナビゲータ
商社やメーカーなどのOBで、輸出取引の経験が豊富な、海外ビジネスの専門家。支援が始まると1名のグローバルナビゲータが各支援企業様の担当となり、海外販路開拓のハンズオン支援を行う。
2026年2月取材
関連する支援
海外販路開拓支援
貴社の海外市場への挑戦を成功に導くため、専属のグローバルナビゲータが2年間ハンズオン支援で伴走し、海外の販路開拓を支援します
タイ事務所
タイ工業省や東京都立産業技術研究センターバンコク支所等と連携し、都内中小企業の海外展開を現地でサポートするとともに、タイをはじめとするASEAN諸国でのビジネスネットワークの拡大に取り組んでまいります。