令和7年度
きめ細やかな支援を受け、海外売り上げが5年で100倍に
株式会社志村精機製作所
企業の強み💡
志村精機製作所は、カメラや自動車などに使われる精密部品の切削加工を、設計、製作から検査までの一貫生産体制で手掛ける企業。樹脂と金属のどちらも扱える点が強みで、顧客に合った素材と加工方法を提案することで信頼を積み重ねてきた。
以前から試作開発を得意としていたが、近年では最先端の設備を次々と導入し、準量産品や量産品の領域でも業績を伸ばしつつある。特に医療機器関連の売り上げが拡大中で、従業員の大幅増員で対応しているところ。
大田区東馬込の本社工場と第二工場に加え、千葉県茂原市で2つの工場を展開中。2025年に社屋が完成した千葉第二工場でも、最新式のマシニングセンタやロボットシステムが稼働している
海外進出を目指したきっかけ
日本市場を勝ち抜いた技術力は世界でも通用すると考えた
志村精機製作所は、技術力が高く評価されている切削加工メーカーだ。コロナ禍でも売り上げを伸ばして工場の増設を行ったほどで、現在の業績は絶好調。ただし2010年前後には、それまで主力だったカメラ関連部品の加工案件が減り、ピンチに陥っていたという。
当時の同社は、顧客からのアプローチに頼る「待ちの営業」の傾向が強かった。ところが、既存顧客からの受注が減ったために、こちらから新規顧客をつかみに行く必要に迫られたという。
そんな時期に入社したのが、米国で自動車輸出業に携わっていた浅野雄三氏(現・専務取締役)。彼は、当時の技術部門リーダーだった志村哲央氏(現・代表取締役)とタッグを組み、同社の営業姿勢を攻めへと転換させた。そして新規営業に力を注ぎ、さらに展示会への出展も始めたことで、医療機器など新分野への参入を成功させた。
新規顧客をつかんだことで、同社の業績はV字回復を果たした。ただし、浅野氏には危機感もあったという。
「営業をする中で、日本市場の狭さを感じました。そのため、どんなに高い技術力があっても、相見積もりを取られて価格競争に巻き込まれがちだったのです。
一方、私が輸出業に携わっていた頃から、日本製品の品質は海外で高く評価されていました。それで、『日本市場の厳しい要求に応えてきた私たちの技術は、世界でも通用するはずだ』と考え、海外進出を目指すようになったのです」
「海外販路開拓支援」を利用
自社の強みを最大限に伝えるため、実践的な助言をもらえた
海外における最初のチャレンジは、2019年にドイツで行われた展示会だった。このときは独力で挑んだが、大きな成果にはつながらなかったという。そこで翌2020年からは、公社の「海外販路開拓支援」を利用した。
「国内の展示会には何度か出ていましたが、2019年の海外展示会に出たことで、海外では国内とは違うノウハウが必要だと痛感しました。そこで、海外経験豊富なグローバルナビゲータ*1に助けてほしいと思い、海外販路開拓支援に申し込みました。
幅広い支援の中で印象に残っているのが、展示会でアピールする方向性についてアドバイスをもらったことです。私たちは当初、切削加工の精度をはじめとする技術力を前面に出すつもりでしたが、グローバルナビゲータの方からは反対されました。当社は完成品メーカーではありませんから、展示会で技術力の高さをアピールしても、なかなか伝わらないし目立ちもしない。それより、『開発チームが顧客と相談して短時間で最適な設計に落とし込み、すぐに試作して少量でも納品できる』という点を強調すべきだと提案されたのです。
はじめは半信半疑だったのですが、巨大ポスターの目線の高さに『Even “A SINGLE PART” prototype is ACCEPTABLE!』(たとえ「たった1つの部品」でも試作OKです!)とメッセージを出したところ、お客さまからは上々の反響。このとき、やはり専門家はさすがだなあと実感しました」
グローバルナビゲータからは、「遠くを行き過ぎる来場客も目に入るよう、強調したい点が3秒で伝わるデザインに」と助言された
机やイスが展示物の邪魔にならないように気を配った結果、見やすいブースを作ることができた
海外販路開拓支援では、展示会準備以外の面でもサポートを受けた。例えば展示会当日には、他のブースを視察したグローバルナビゲータから企業を紹介され、そこから顧客や協力企業が見つかったケースもあったという。さらに、アメリカやタイでの事務所開設を検討した際にも、グローバルナビゲータから現地調査などの支援を受けた。
「海外事務所プロジェクトは、人材確保の難しさと、現在はまだコストパフォーマンス的に引き合わないことがあり、いったん凍結しました。ただ、グローバルナビゲータの方からの提言がなく、事務所開設に突っ走ってしまったら、おそらく大きな損害が出たでしょう。
私たちの代わりに情報を集め、場合によっては手綱を締めてくれるグローバルナビゲータには、いつも感謝しています」
海外進出の状況
海外企業と継続的な取引が生まれ受注額は飛躍的に増加
海外進出直後の2020年度、志村精機製作所の海外売上額は100万円程度だった。
その後、コロナ禍で海外展示会への出展が不可能になった時期もあったが、海外からの受注は徐々に増加。今では韓国やシンガポール、タイなどの大手医療機器メーカーと継続的な取引ができるようになり、2025年度の海外売上額は1億円以上を超える見込みだ。
「今後もさらに、海外売上額を伸ばしていきたいです。そのためには、航空宇宙分野などへの展開を加速して、医療機器に次ぐ第2、第3の柱を立てていきたいですね。また、他社とのコラボレーションにも取り組む方針です。増え続ける海外案件の全てに、自社だけで対応するのは難しいこと。
そこで、当社がハブ(中継地)役をこなし、協力してもらえる企業と一緒になって大きな案件をこなす体制を築ければと考えています」
志村精機製作所はこれまでに何度も、公社の支援事業を使ってきた。設備の中には公社の助成を得て導入したものがいくつかあるし、海外展開を担う人材の育成を行う「グローバル人材育成講座」*2や、受注先企業とのマッチングや情報交換ができる「ビジネスチャンス・ナビ」なども利用。そして今は、協力会社のネットワークを広げる支援に興味があるという。
「公社の支援は本当に幅広くて、どんな企業でも利用できます。私の場合は、何か悩みがあるたびに公社の『海外ワンストップ相談窓口』に足を運び、相談に乗ってもらっています。自社の悩みをざっくばらんに伝えれば、必ずプロが支えてくれる。公社はそんな存在なのです」
志村精機製作所・浅野氏からのひと言
「悩みを抱えている企業は遠慮などせず、公社に相談をすればいいと思います。中にはハードルが高そうだと感じる人がいるかもしれませんが、実際にはワンストップで何でも相談できる、とても身近な存在なのです。また、海外進出やネットワークづくりなど自社だけでは対応が難しい課題に対し、その道のプロがしっかりカバーしてくれる点も安心です」
志村精機製作所・海外進出の道のり
| 2019年11月 | ドイツ・デュッセルドルフの展示会「COMPAMED 2019(国際医療機器技術・部品展)」に出展 |
| 2022年9月 | シンガポールの医療機器展示会「MFA 2022」に出展 |
| 11月 | ドイツ・デュッセルドルフの展示会「COMPAMED 2022」に単独出展 |
| 2023年9月 | タイ・バンコクの医療機器展示会「MFT 2022」に出展 |
| 11月 | タイ・バンコクの展示会「METALEX 2023」に出展 |
| 2024年2月 | アメリカ・アナハイムの展示会「ATX West 2024」に出展 |
会社概要
三調株式会社
- 創業:2013年
- 代表取締役:竹田抄百合氏
- 資本金:100万円
- 従業員数:2名
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所在地:
東京都中央区日本橋大伝馬町13-7 日本橋大富ビル2階 -
URL:http://sancho-corp.com
http://footfree.jp
(注釈)
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※1.グローバルナビゲータ
商社やメーカーなどのOBで、輸出取引の経験が豊富な、海外ビジネスの専門家。支援が始まると1名のグローバルナビゲータが各支援企業様の担当となり、海外販路開拓のハンズオン支援を行う。 -
※2.グローバル人材育成講座
公社の企業人材支援課が過去に行っていた事業で、すでに終了。現在は、グローバル人材を育成するプログラム「海外ビジネス・チャレンジ塾」があり、初級編・実践編・外国人編の3コースが開講されている。
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2025年12月取材