2025.12.16
越境ECの始め方をゼロから5ステップで解説|よくある課題と注意点も紹介
国内マーケットの縮小を背景に、海外への販路拡大を目指す中小企業が増えています。その中でも近年注目されているのが、「越境EC(電子商取引)」です。
しかし、実際に始めようとすると「どの国から始めればいい?」「どんな準備が必要?」と悩む方が少なくありません。本記事では、越境ECの基礎知識に加え、具体的な始め方を5つのステップでご紹介します。
目次
- そもそも越境ECとは?
ー越境ECの定義と仕組み
ー国内ECとの違い
ー越境ECが注目される理由 - 越境ECを始めるメリットとデメリット
- 越境ECの始め方をゼロから5ステップで解説
1.販売エリアの選定
2.販売チャネルの選定・構築
3.出品準備(商品ページ・決済手段・配送方法など)
4.越境ECの開始
5.PDCAサイクルによる改善 - 越境ECを海外展開の足掛かりにしよう
そもそも越境ECとは?
まず、越境ECについて以下3つのポイントで見ていきましょう。
- 越境ECの定義と仕組み
- 国内ECとの違い
- 越境ECが注目される理由
越境ECの定義と仕組み
越境ECとは、インターネットを通じて海外の消費者へ商品やサービスを販売するEC(電子商取引)のことです。取引の際に「商品・金銭・情報」が国境を越えるため、「越境」と呼ばれます。
主な販売経路としては、AmazonやeBay、天猫国際(Tmall Global)などの海外向けECモールを利用するものと、自社サイトを立ち上げて直接販売するものの2通りがあります。
国内ECとの違い
越境ECと国内ECでは、必要な準備や対応が大きく異なります。国内ECでは、当然ながら日本国内のルールを守って日本語で取引を行います。
一方、越境ECでは販売先の国ごとに異なる言語や通貨、決済方法への対応が必要となり、さらに関税や輸出入規制などの制度・法律にも注意しなければなりません。また、国際配送コストの負担や返品対応、問い合わせに対する多言語でのお客様サポートなども求められます。
越境ECが注目される理由
越境ECが注目される理由としては、やはり「対象マーケットの大きさ」が挙げられます。
日本国内のマーケットが人口減少によって縮小傾向にある中、海外への販路拡大を目指す企業は少なくありません。特にアジア圏では「日本製品」への信頼度が高く、化粧品や日用品、食品などの需要が拡大しています。
経済産業省の資料によると、「2024年において、日本・米国・中国の3か国間における越境ECの市場規模は、いずれの国の間でも増加」とされており、中国・米国の消費者による日本事業者からの越境EC購入額はそれぞれ前年比8.5%増、6.0%増となっています。
数値的に見ても、日本製品に対する主要国からの需要が高まっていることは間違いありません。
【参考】経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」
越境ECを始めるメリットとデメリット
続いて、越境ECを始めることのメリット・デメリットを見ていきましょう。デメリットまで正しく理解し、適切な準備を行うことが重要です。
⭕メリット
越境ECに取り組む最大のメリットは、国内にとどまらず世界中へ販路を拡大できる点です。人口減少による国内需要の縮小を補い、新たな顧客層を開拓できます。
また、販売先を複数の国に広げることで、為替や景気変動などのリスク分散にもつながります。さらに、日本製品は高品質と評価されることが多いため、価格競争に陥りにくく、利益率の改善が見込める点も大きなメリットです。
❌デメリット
一方、越境ECにはいくつかの課題もあります。販売国ごとの言語・通貨・法律に対応する必要があり、翻訳や法規制調査などの手間がかかります。為替変動や国際配送コストの影響を受けやすく、利益計算が複雑になる点も注意が必要です。
また、返品や問い合わせ対応を多言語で行うためには、相応の体制を整えてから始める必要があります。これらの課題を把握し、準備・対策を整えた上で始めることが大切です。
越境ECの始め方をゼロから5ステップで解説
ここからは、越境ECの具体的な始め方を以下5つのステップで解説します。
01販売エリアの選定
販売エリアを選定する際は、現地のECサイトで類似商品の価格・レビュー数などを調べ、ニーズや競合の販売状況を把握しましょう。また、ターゲット層の年齢や購買傾向、使用デバイス(スマホかPCか)なども押さえておくことが大切です。
さらに、食品・化粧品・医薬品などを扱う場合は、輸出入規制や成分表示などの法的ルールにも注意が必要です。
02販売チャネルの選定・構築
ECモールは、既存のプラットフォームを利用して出店する方式で、集客力が高く、物流や決済などの機能も整っているのが特徴です。ECモールには以下のようにそれぞれ特徴があり、ターゲット市場に合わせて選ぶ必要があります。
🛒Amazon:アメリカを中心にグローバルに対応
🛒ebay:ヨーロッパを含む欧米市場に強い
🛒Shopee・Lazada:東南アジアで知名度が高い
🛒天猫国際(Tmall Global):中国最大の越境ECモール(アリババ傘下)
一方、自社ECサイトはブランディングや顧客データの蓄積には優れるものの、初期構築や集客にコスト・手間がかかります。しかし、最近ではShopifyなど簡単にECサイトを立ち上げられるサービスも普及してきました。
メリットとデメリットを理解した上で、自社に合った販売チャネルを選定・構築しましょう。
03出品準備(商品ページ・決済手段・配送方法など)
04越境ECの開始
05PDCAサイクルによる改善
売れ筋商品や人気国を把握し、在庫や配送体制を最適化することも重要です。また、顧客のレビューや問い合わせ内容から課題を抽出し、商品改善やサポート体制の強化に活かすことで、信頼性やリピート率の向上につながります。
越境ECを海外展開の足掛かりにしよう
越境ECは、実店舗や現地拠点がない状態でも海外市場に挑戦できる数少ない手段の一つです。小ロット・低コストで始められるため、中小企業でもリスクを抑えてテスト販売が可能です。
まずは売れ筋商品の販売から始め、海外ユーザーの反応を確認しながら徐々に展開を広げていきましょう。ただし、言語・物流・法規制など対応が求められる領域は幅広く、自社での対応は難しいと感じるかもしれません。
東京都中小企業振興公社 販路・海外展開支援課では、都内中小企業の海外展開を無料でサポートしています。海外事業計画の策定や、現地の規制・競合製品の市場調査など幅広くご相談いただける無料窓口もございます。ぜひお気軽にお問い合わせください。
>>越境EC出品代行サポート「越境EC出品支援」はこちら(無料)
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【執筆】
東京都中小企業振興公社 販路・海外展開支援課 職員 川﨑 理紗
経歴:2023年4月、東京都中小企業振興公社に入社。入社後、販路・海外展開支援課にて越境ECへの出品を支援。現在も引き続き出品支援や、海外取引に関する相談窓口の運営や課における広報・PRを担当している。