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2026.1.13

海外進出を成功させるには?
必要なことを7ステップで解説

海外の都市群のイメージ画像

海外進出に興味はあるものの、「何から始めればいいのか分からない」「リスクが不安で一歩を踏み出せない」と感じている経営者・事業担当者の方は多いのではないでしょうか。海外市場には大きな成長チャンスがある一方で、準備不足のまま挑戦すると失敗のリスクも高まります。

本記事では、海外進出に必要なことを7つのステップで分かりやすく解説します。あわせて、日系企業による海外進出の現状や、進出のメリット・デメリット、日本企業が直面しやすい課題・注意点についてもご紹介。海外進出の全体像をつかんでいきましょう。

日系企業による海外進出の現状

近年、国内市場の成熟や人口減少を背景に、成長の場を海外に求める企業が増えています。

ジェトロ(日本貿易振興機構)が2025年度に実施した「第24回 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」別タブで開くでは、海外ビジネスに関心が高い日本企業のうち、2026年度における海外売上高の「増加」を見込む企業が56.1%となっていました。国内売上高の「増加」を見込む企業は47.3%であり、海外進出を果たした企業において、海外売上高が成長の牽引役になっていることがうかがえます。

さらに、外務省の「海外進出日系企業拠点数調査」別タブで開くによると、日系企業の海外拠点数は2023年の81,969箇所から2024年の88,290箇所へ、1年で6,000拠点以上の大幅な増加を見せています。日系企業による海外進出は、今後もさらに加速していくでしょう。

海外進出に必要なこと【7ステップで解説】

海外進出による事業拡大を狙うなら、以下7つのステップで取り組んでいきましょう。

7つのステップ。①目的の明確化、②進出先の選定、③ビジネスモデルの検討、④事業計画書の作成、⑤社内体制の整備、⑥海外事業の開始、⑦進捗管理・改善。

各ステップについて、詳しく解説します。

1.)目的の明確化

海外進出を成功させるには、まず「なぜ進出するのか」という目的を明確にすることが重要です。売上拡大・市場開拓・リスク分散・ブランド強化など、企業によって目的はさまざまです。

自社が海外進出する目的を整理できたら、社内で共通認識として共有します。数値目標や撤退基準も併せて設定することで、事業計画書や投資判断の軸がぶれにくくなります。

2.)進出先の調査・選定

進出先の国・地域は、市場規模や成長性、競合環境などのデータをもとに慎重に選定する必要があります。併せて政治リスクや為替相場、規制・関税などの制度、さらに文化・商習慣・宗教などのソフト面も調査が必要です。

総合的にマーケットを分析し、自社のビジネスと相性のよい市場を見極めましょう。具体的には、デスクリサーチを中心に情報を集める「国内での事前調査」と、実際に足を運ぶ「現地調査」の2つの段階に分けて進めると、より精度の高い判断がしやすくなります。

a. 国内での事前調査

まずは国内でできる範囲の情報収集から始めます。ジェトロや現地政府機関などの公的な統計・市場調査レポートを活用し、対象国の市場規模や成長性、競合他社の状況を把握したうえで、自社の商品・サービスがどの程度受け入れられそうかを見極めます。

あわせて、関税や輸入規制、認証制度、商習慣、政治・経済リスクなども確認し、事業展開の障害となる要因がないかを事前に検証しておくことが重要です。デスクリサーチの段階で論点や仮説を整理しておくことで、その後の現地調査を効率的に進められ、限られた時間とコストで確度の高い情報を集められます。

b. 現地調査

国内調査である程度候補を絞り込んだら、実際に現地へ足を運んで調査します。店舗や取引先を視察して市場環境や競合他社の動きを確認したり、展示会や商談会に参加して顧客候補やパートナー候補と直接接触したりするのが効果的です。

現地に入ることで、統計データだけでは見えてこない消費者の嗜好や文化、商習慣の違いを把握でき、進出可否の判断材料が一段と充実します。可能であれば時期を変えて複数回訪問し、季節や需要期による違いも確認しておくと、より実態に即した判断ができます。

3.)ビジネスモデルの検討

3つ目のステップは、ビジネスモデルの検討です。一概に海外進出といっても、日本からの輸出と現地生産では大きな違いがあります。また、自社で販路を開拓するのか、販売代理店を起用するのかでも、スケジュールやコスト計算は大きく変わってくるでしょう。

ここでは、海外進出の主なビジネスモデルとその選定ポイントを見ていきます

a. 主なビジネスモデル

海外進出においては、目的に合わせたビジネスモデルの選択が重要です。ここでは、以下6つの選択肢について、メリットやデメリットを見ていきましょう。

越境EC

越境ECは、初期投資を抑えて海外販売を始められる手法で、中小企業でも取り組みやすいのがメリットです。AmazonやShopify、Shopeeなどのプラットフォームを活用すれば、小さくテストしながら市場の反応を確認できます。一方で、物流・決済・返品対応などの体制整備が求められます。

間接貿易

間接貿易は、商社や輸出業者を通じて海外に商品を販売する方法です。すでに構築された流通網や販売ノウハウを活用できるため、海外取引の経験が少ない企業でも比較的スムーズに始められる点がメリットです。一方で中間マージンが発生し、価格や販売戦略を自社でコントロールしにくい点がデメリットとなります。

販売代理店の起用

販売代理店の起用は、現地でネットワーク・販売力を持つ企業と協力関係を築く方法です。自社で営業体制を構築する必要がなく、スピーディーな市場開拓が期待できます。一方で、代理店の営業力や契約内容(販売目標や独占販売、解除に関する条項など)が成果に大きく影響するため、適切な代理店選定と契約管理が不可欠です。

委託生産

委託生産は、海外の工場に製造を依頼し、製造コストの削減や供給体制の強化を図る方法です。現地生産により関税の負担を抑えられるケースもあります。一方で、品質や納期の管理、知的財産の保護など課題も多く、契約内容の精査や現地管理体制の構築が重要となります。

フランチャイズ

フランチャイズは、自社のブランド・ノウハウの使用権を現地企業に与え、ロイヤリティ収入を得るビジネスモデルです。多額の初期投資を必要とせず、現地企業の人材やネットワークを活用できる点がメリットです。一方で、自社が直接運営しないため利益が限定されやすく、ブランド価値の毀損リスクにも注意が必要です。

現地法人の設立

現地法人の設立は、人材採用から販売、マーケティングまでを自社主体で行う本格的な海外進出の方法です。自由度が高く、長期的な事業成長や収益拡大が期待できる一方、初期投資や固定費の負担が大きく、撤退時にも高額なコストが発生します。そのため、綿密な事業計画書の作成と慎重な判断が欠かせません。

b. ビジネスモデル選定のポイント

複数のビジネスモデルの中から自社に最適なものを選ぶ際は、以下5つのポイントで比較・検討すると判断しやすくなります。

どのような観点で検討を進めるべきか、順番に見ていきましょう。

目的との整合性

まずは、設定した「進出目的」の達成につながるビジネスモデルかどうかを確認します。売上拡大を狙うのか、ブランド認知の向上を重視するのかなど、目的によって適した手法は異なります。短期的な成果を求めるのか、中長期的に事業基盤を築くことを目指すのかも踏まえ、目的と手段がかみ合う進出形態を選びましょう。

費用・収益

初期投資や運営にかかるコストを試算し、想定される売上や利益と照らし合わせて判断します。進出形態によって必要な資金や固定費は大きく異なります。「投じた資金をどの程度の期間で回収できるのか」という回収期間の見通しも立てたうえで、無理のない範囲で選択することが大切です。

リスク

為替変動や進出先の政治情勢によって、収益が左右される可能性を想定しておきます。法規制や税制が変更されるリスク、さらに事業がうまくいかなかった場合の撤退コストや影響まで見据えて検討することが重要です。リスクの大きさと自社の許容度を天秤にかけ、慎重に判断しましょう。

実現スピード

事業を開始できるまでに必要な期間は、ビジネスモデルによって大きく変わります。許認可の取得や現地法人の設立など、事業の開始前に必要な手続きを確認しておきましょう。生産体制や物流網の構築に要する時間も考慮し、目指すスケジュールに見合った形態を選ぶことがポイントです。

ビジネス特性

取り扱う商材やサービスの特性に合った進出形態を選ぶことも欠かせません。BtoB事業とBtoC事業では、求められる販売チャネルや営業手法が異なります。アフターサービスや保守対応が必要な商材の場合は、現地でのサポート体制を確保できるかどうかも重要な判断材料となります。

4.)事業計画書の作成

海外進出のエリアや形態が決まったら、調査内容をもとに事業計画書を作成します。事業計画書は、社内の意思決定や金融機関との交渉においても重要な資料となります。

売上計画や投資額、回収期間などの数値を明確にし、リスクも想定した現実的な計画を立てましょう。損失拡大を防ぐためには、撤退ラインを設定しておくことも重要です。

5.)社内体制の整備

海外進出を円滑に進めるためには、社内体制の整備が欠かせません。海外事業の専任部署や担当者を配置し、スピード感を持って準備を進めることが重要です。また、多言語対応や契約実務、税務・労務など専門的な知識を持つ人材の確保や、外部専門家との連携も成功のポイントとなります。

ここでは、社内体制の整備について、海外事業を円滑に進めるための「組織」と、それを担う「人材」の2つの側面に分けて解説します。

a. 組織の構築

海外事業を着実に進めるには、事業を専任で推進する組織を社内に設けることが重要です。片手間の体制では意思決定が遅れ、現地対応が後手に回りがちです。

また、本社と現地拠点の役割分担を明確にし、どちらが何を決めるのかを整理しておきましょう。あわせて、意思決定や情報共有の仕組みを整えておくことで、トラブル時にも迅速に対応できる体制を構築できます。

b. 人材の確保

海外事業の展開には、適切な人材の確保も欠かせません。具体的な方法としては、以下の3つが挙げられます。

それぞれの特徴やメリットを整理しておきましょう。

専門人材の採用

海外ビジネスの経験を持つ人材や、現地の市場・法規制に精通した人材を採用することで、事業立ち上げのスピードと質を高められます。日本国内での採用にこだわらず、必要に応じて現地での採用も視野に入れると、より実務に即した人材を確保しやすくなります。

人材の育成

既存の社員に対して、語学力や異文化理解を高める研修を実施し、海外事業に必要な知識・スキルを計画的に習得させることも重要です。将来的に海外拠点を任せられる責任者候補を早い段階から育てておくことで、事業拡大の局面でも人材面のボトルネックを避けられます。

外部人材・コンサルの活用

自社だけで対応が難しい領域は、外部の専門家やコンサルタントの知見を活用することで迅速な対応が可能となります。特に法務や税務、労務といった専門性の高い分野は、現地事情に詳しい専門家に相談することで、思わぬトラブルを未然に防げます。「必要な部分だけ外部の力を借りる」という発想が有効です。

本章で解説する人材確保・活用における3つのアプローチのまとめ図

6.)海外事業の開始

社内の体制が整ったら、いよいよ海外事業を本格的に開始します。代理店や物流パートナーとの協力体制を構築し、現地での販売・マーケティング活動を開始します。

海外事業では想定外のトラブルが発生しやすいため、スケジュールに余裕を持たせることが大切です。問題が起きた際に迅速に対応するための体制整備も欠かせません。

7.)進捗管理・改善

海外事業は開始して終わりではなく、継続的な進捗管理と改善が不可欠です。売上・コストなどについて計画と実績を比較し、差異があれば早い段階で対策を講じましょう。市場環境や競合状況の変化に応じて戦略を柔軟に見直し、場合によっては撤退基準を踏まえた経営判断が求められることもあります。

海外進出のメリット・デメリット

海外進出には多くのメリットがある一方で、見落とせないデメリットも存在します。良い面だけを見て判断すると、進出後に想定外の課題に直面しかねません。メリット・デメリットの両面を理解したうえで、自社にとって進出する価値があるかを見極めることが大切です。

海外進出のメリット3点とデメリット3点を対比したまとめ図

1.)海外進出のメリット

まずは、海外進出によって得られる代表的なメリットとして、以下の3点を見ていきます。

a. 新たな市場・顧客を獲得できる

海外進出の大きな魅力は、国内では接点のなかった新たな顧客層へアプローチできることです。人口の多い国や成長市場に進出すれば、市場規模の拡大に伴う売上増加が期待できます。国内市場が成熟している業種ほど、新たな販路の確保が事業成長の大きな原動力となります。

b. 国内市場への依存を軽減できる

販売先を海外にも広げることで、国内需要の変動による影響を抑えられます。国内市場だけに依存していると、景気の落ち込みや人口減少の影響を直接受けやすくなります。複数の市場に事業を分散させることで、事業ポートフォリオが安定し、経営リスクの軽減につながるでしょう。

c. 生産・調達コストを最適化できる

進出先によっては、人件費や原材料費を国内より抑えられる場合があります。現地で原材料を調達できれば物流コストの削減にもつながり、サプライチェーン全体の効率化が期待できます。コスト構造を見直すことで、価格競争力の強化や利益率の改善を図れる点も海外進出の利点です。

2.)海外進出のデメリット

一方で、海外進出には見落とすと事業の足かせになりかねないデメリットもあります。ここでは、以下の3点をご紹介します。

a. 初期投資や運営コストがかかる

海外に拠点を設ける場合、設立や設備投資にまとまった資金が必要となります。加えて、人材の採用や教育にも継続的な費用が発生します。為替や現地の物価によっては想定以上のコストがかかることもあるため、余裕を持った資金計画が欠かせません。

b. 政治・経済面でのリスクがある

海外事業においては、進出先の政策変更や規制強化の影響を受ける可能性もあります。また、為替変動によって収益が大きく左右されることもあるでしょう。景気の悪化や国際情勢の変化など、自社の努力だけでは避けられない外部要因もあるため、リスクを想定した備えと継続的な情報収集が重要です。

c. ガバナンス・内部統制の負担が大きくなる

海外拠点が増えていくと、その管理・運用の負担も大きくなります。不正の防止やコンプライアンスへの対応、現地の法令順守など、求められる管理業務は多岐にわたります。本社と現地拠点の連携を強化し、情報が適切に共有される仕組みの構築が欠かせません。

海外進出で日本企業が直面する課題・注意点とは

ここからは、海外進出にあたって日本企業がよく直面する以下3つの課題について見ていきます。

1.)マーケット情報の不足

海外進出では、現地の市場規模や競合状況、消費者ニーズなどの正確なマーケット情報を十分に入手できないケースが少なくありません。インターネット上の情報は古かったり、偏っていたりすることも多く、誤った判断につながるリスクがあります。現地調査や専門家の活用によって、情報の精度を高めることが重要です。

2.)言語・規制などへの対応

海外進出では、言語の壁に加え、契約内容や商習慣、品質基準、許認可、税制など国ごとに異なる慣習・規制への対応が大きな課題となります。国内と同じ感覚で進めると、思わぬトラブルに発展する可能性もあります。契約内容の確認や法規制への対応は、現地事情に精通した専門家のチェックを受けることでリスクを軽減しましょう。

3.)販路構築に要する時間・コスト

海外事業では、販路の構築に想定以上の時間とコストがかかります。代理店の選定や交渉、物流の確保、販売チャネルの整備など、準備工程が多岐にわたります。

また、売上が安定するまでに一定の期間を要するため、投資回収が長期化しやすい点にも注意が必要です。余裕を持った資金計画と、明確な撤退ラインの設定が成功のカギとなります。

海外進出に必要なことは専門家に相談!

本記事では、海外進出に必要なことを7ステップでご紹介するとともに、日本企業がよく直面する課題・注意点について解説してきました。

あわせて、日系企業の海外進出の現状や、海外進出のメリット・デメリットについても整理しました。海外進出は大きな成長機会である一方、入念な準備と継続的なリスク管理が欠かせず、必要なステップを着実に踏んでいくことが成功への近道となります。

海外進出には市場調査や事業計画書の作成、法務・税務対応、販路構築など幅広い専門知識が求められます。時間やコスト、リスク管理の面で、自社での対応が難しいと感じることもあるでしょう。

東京都中小企業振興公社 販路・海外展開支援課別タブで開くでは、都内中小企業の海外展開を無料でサポートしています。海外進出にあたって、現地の規制・競合製品の市場調査など幅広くご相談いただける無料窓口もございます。ぜひお気軽にお問い合わせください。

【執筆】
東京都中小企業振興公社 販路・海外展開支援課 プラン策定支援担当