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2026年4月15日

マレーシア現地調査レポート(ペナン/クアラルンプール:2025年12月)

マレーシアの高層ビル群

東京都中小企業振興公社では、都内中小企業の海外展開支援を目的に、2025年12月にマレーシア(ペナン/クアラルンプール近郊・セランゴール州)を訪問し、投資促進機関・業界団体・現地企業へのヒアリングを実施しました。本レポートでは、「マレーシアがどんな国で、海外展開の入口として何が現実的か」を、海外経験がない企業でも判断しやすいよう整理してお伝えします。

マレーシア基礎情報

1)基礎データ早見

  • 国の特徴:相対的に制度運用が読みやすい/多民族国家/英語でビジネスが進めやすい
  • 国土:約33万km²(日本の約87%)
  • 人口:3,420万人(2025年推定、うち外国人:338万人)
  • 民族構成:ブミプトラ63.6%(うちマレー系52.5%、その他先住民11.1%)、華人系20.0%、インド系5.9%、その他0.7%、外国人9.9%
  • 宗教(2020年):イスラム63.5%、仏教18.7%、キリスト9.1%、ヒンドゥー6.1%(信教自由)
  • 言語:マレー語(公用語)、英語、中国語、タミル語
  • 通貨:リンギット(MYR/RM)/時差:日本−1時間(UTC+8)
  • 首都機能:商業中心=クアラルンプール、行政機能=プトラジャヤ(実務上は両方を使い分け) ※DOSM

※日本貿易振興機構「マレーシアのビジネス情報と投資環境2025」より引用

2)産業の見取り図:製造業の厚み+州ごとの強み

マレーシアは州ごとに誘致策が異なります。ペナンは半導体・電気電子の集積地で、関連サプライヤーも揃う「製造の厚み」が強みです。セランゴールはクアラルンプール近郊の産業・人口集積州で、物流や本社機能も含め拠点設計がしやすい地域です。


3)ハラルは「食」だけではない(工程・管理まで含む)

チキンライス

マレーシアは国教がイスラム教で、ハラル認証の制度運用・国際的信頼性が高いとされています。マレーシアでハラルを取得、もしくはOEMをすれば、全世界のイスラム社会へマーケットが広がります。

また、ハラル対応は食品に限らず、化粧品・日用品・原材料、そして製造工程の管理(衛生・保管・運用ルール)まで関わります。このように、制約として避けるのではなく、理解して対応できれば市場アクセスを広げる要件になり得ます。



チキンライス

4)日本企業の集積とネットワーク

マレーシアには日系企業の蓄積があり、日系企業は1,602社(製造48%/非製造52%)、製造業プロジェクト2,709件、雇用337,280人とされています。またマレーシア日本人商工会議所(JACTIM)は1983年設立で、会員は630社(製造50%/サービス50%)で、現地の情報・ネットワークにアクセスする入口として活用できます。

訪問先① InvestPenang(ペナン州投資誘致・企業支援)

【組織概要】

Invest Penang事務所前で記念撮影

InvestPenangは、ペナン州への投資を促進する政府系機関で、進出検討企業に対し、準備段階から操業後までを見据えた支援を提供しています。

Invest Penang事務所前で記念撮影

【現地ヒアリング】

面談では、支援が「情報提供」ではなく、設立前から設立後まで一気通貫で設計されていることが印象的でした。登記等の手続き助言、業種や進出形態に応じたロケーション(不動産)紹介、操業後の課題対応まで伴走する考え方が示されました。

ペナンは“東洋のシリコンバレー”と呼ばれ、半導体・電気電子を中心にグローバル企業が集積した結果、セミコン市場では世界市場の5%のシェアがあります。周辺サプライヤーも厚く、調達・外注・販路の連動が起きやすい構造があること、空港・港湾などのインフラが物流面の優位性を支えていることから、ペナン州からの輸出額はマレーシアトップクラスです。

近年、ペナン島の経済をけん引しているバヤンレパス工業団地から5km圏内にIC設計関連企業を誘致するための支援を提供し、エコシステムを充実させる方針です。「中小企業も歓迎。気軽に相談してほしい」というメッセージが明確で、都内中小企業にとって入口を作りやすい印象です。

ペナン産業マップ別タブで開く
ペナン供給網(サプライチェーン)マップ別タブで開く

訪問先② IRIICHI (MALAYSIA) SDN. BHD.(日系企業)

【組織概要】

工場生産ラインの様子

IRIICHI Malaysiaは、EMS(電子機器受託製造)を主力としながら、自社製品の開発・製造・販売も行う日系企業です。多品種小ロット生産や、プレス、曲げ加工までこなす一貫生産に強みを持ち、大手が手を出しにくい領域に集中することで独自のポジションを築いています。

工場生産ラインの様子

【現地ヒアリング】

1989年1月に設立し今年で37年目となる同社では、従業員560名のうち、女性比率が高く、役職者になると圧倒的に女性が多いのが特徴です。ミャンマーやネパールからの外国人労働者も多く雇用しています。マレーシアの魅力は、治安が良く、英語が通じること、そして、インフラが充実していることです。「マレーシアは日系企業も多く、英語が通用することなどを考えると、海外進出の経験がなくても進出しやすい国である。税制優遇もあり政府の決断も早い。魅力が沢山あるので、進出国の候補として是非検討していただきたい。」と有田社長は言います。一方、課題についても教えてくれました。駐在員人材の確保や、私立の医療機関が高額なこと、年金制度の導入や、毎年3-5%程度の給料のベースアップなどです。そのような課題はあるものの、トータルで見たらプラスの方が大きいそうです。その他、マレーシア国内の中小企業にはまだまだ製造領域で事業を実施している企業が多く、自動車産業も国産メーカーがあることから盛んであることも教えてもらいました。

訪問先③ 在ペナン日本国総領事館(日系企業との交流)

【組織概要】

在ペナン領事館にて記念撮影

ペナン地方における在留邦人の保護、通商問題の処理、政治・経済その他の情報の収集・広報文化活動などの仕事を行っています。

在ペナン領事館にて記念撮影

【現地ヒアリング】

面談では日系企業4社を町田総領事が招いてくださり、率直な意見交換を行いました。多民族国家であることを前提に、宗教行事や休日が異なることが現場運用の論点として語られ、海外拠点運営では制度理解だけでなく運用設計が重要になることが再確認できました。また、ハラルは「食」だけでなく、製造現場の運用にも影響するテーマとして具体論が共有されました。例えば、アルコール消毒が使えない場合がある、礼拝時間への配慮、女性への配慮などです。実務上の留意点を踏まえ、対応できれば市場アクセスを広げる武器になり得るという示唆が得られました。また、ペナンには三水会という日本人会があり、現在、66社の日系企業の方々が参加しています。三水会では、課題に応じた講演や懇親会を通じて情報交換も行っており、これからマレーシア進出を検討されている方々にとっても安心材料となる場であることが分かりました。また、マレーシア市場進出にフィットする日系企業については、半導体分野、電気・電子分野、医療分野、食品分野、化粧品分野などが適しており、特にマレーシアの私立病院では最先端で高額の医療機器を揃えメディカルツアーも充実しているので、安価な労働力を求めるという企業ではなく、尖った技術を持つ企業にマーケットが開けていることが示唆されました。

「マレーシア政府は半導体産業やAI技術などの先端産業を特にPRしているが、ペナン島においても従来のものづくり製造業も当然まだまだ盛んであり多数の企業が存在している。人種構造からマネージメントのノウハウを蓄積しやすく、治安面、日本人へのリスペクトがありライフスタイルも充実させることもできる。東京の皆さんには海外展開の候補として是非マレーシア(ペナン)をご検討ください。」と町田総領事からのメッセージも頂きました。

訪問先④ Federation of Malaysian Manufacturing(FMM)Penang Branch(製造業団体)

マレーシア製造業連盟(FMM)は、マレーシアを代表する製造業団体です。ペナン州FMM支部は、北部地域の製造業者の間で深い実践的知識とネットワークを有しています。

訪問中、FMMペナン支部は、半導体・電子部品産業がペナン州の主要産業であり続ける一方、マレーシアの他地域の産業セクターは自動車、食品から家具製造までより幅広い基盤を有していると説明しました。
同協会では、マレーシアの中小企業が直面する課題の一つとして人材確保と従業員定着を挙げました。採用・育成後、従業員が大企業に引き抜かれるため、特に経験豊富な労働者不足が深刻化しており、これは日本企業が抱える問題と類似しているといえるでしょう。

地元企業は、デジタル化とAI技術推進におけるマレーシア政府の野心的な目標を評価しているが、必要な水準に到達するには時間を要する一方、工場現場では依然として多くの改善が必要です。FMMは日本の中小企業が採用する先進的な手法から学ぶことに強い関心を示し、相互交流の機会を歓迎しました。可能な限り、同協会は潜在的な協力企業や製造パートナーとのビジネス連携の模索・促進を支援する用意があります。

訪問先⑤ Malaysian Investment Development Authority(MIDA)(政府投資機関)

マレーシア進出をご検討ですか?まずはMIDAにご相談ください

東南アジアでの成長を目指す日本の中小企業にとって、マレーシアはビジネスの拡大と進化を支える充実した環境を提供しています。熟練した労働力、整備された産業エコシステム、そして周辺地域市場への強力なコネクティビティ(接続性)を備えたマレーシアは、事業の設立や多角化を検討している企業にとって、心強いプラットフォームとなります。

一方で、新たな市場への参入には、規制の把握から最適な立地やパートナーの選定まで、実務面での検討事項がつきものです。

マレーシアの成長ビジョンは、2つの国家枠組みに基づいています。

  1. 1.マダニ・エコノミー(MADANI Economy)枠組み: 包摂的かつ持続可能な成長を導く指針です。
  2. 2.2030年新産業マスタープラン(NIMP 2030):国の産業変革を計画するものです。

これら2つの枠組みが相まって、投資を歓迎し、支援する環境を形作っています。

多くの投資家にとって、マレーシア投資開発庁(MIDA)は、こうした意思決定をナビゲートするための信頼できる出発点となっています。マレーシアの主要な投資振興機関として、MIDAはフィジビリティ・スタディ(事業化調査)や用地選定から、ライセンス取得、インセンティブ、設立後のサポートに至るまで、投資の全プロセスを通じて企業と密接に連携します。

さらに、以下のようなプラットフォームを通じて、承認手続きの簡素化や調整を促進し、企業が明確な見通しと自信を持って前進できるよう支援しています。

  • Invest Malaysia Facilitation Centre(IMFC): 投資促進のための円滑化センター
  • Project Implementation and Facilitation Office(TRACK): プロジェクトの実施・促進を担う事務局

マレーシアの新投資インセンティブ枠組み(NIF)は、インセンティブの構成と提供方法における大きな転換点です。これまでの包括的なアプローチから、各投資がマレーシアにもたらす戦略的価値に応じた、よりターゲットを絞った透明性の高いシステムへと移行しました。これにより、地域内での選択肢を検討している企業は、利用可能な支援をより明確に把握し、将来の計画を立てやすくなります。

また、外国人専門職の受け入れが必要な企業向けに、新たにMIDA Expatriate System(MES)が導入されました。このデジタルプラットフォームにより、申請管理の効率化と透明性が向上しています。

マレーシアにおける日本企業の力強いプレゼンスは、長年にわたるパートナーシップを象徴しています。

  • 実績(2025年12月時点): 日本資本が関与する製造業プロジェクトは2,800件を超え、投資額は1,079億リンギット(310億米ドル)、34万7,000人以上の雇用を創出しています 。
  • 投資順位: 日本はマレーシアの製造業セクターにおいて第4位の外国投資国です 。

MIDAは、日本の投資家にとって特に有望な5つの重点分野を特定し、投資家と密に連携しています。

  1. 1.電気・電子
  2. 2.化学・化学製品
  3. 3.非金属鉱物製品
  4. 4.機械・装置
  5. 5.輸送機器

東南アジアへの次なるステップを検討されている日本企業の皆様は、まず国内の窓口で相談を始めることができます。MIDAの東京事務所および大阪事務所は、情報収集やガイダンス、あるいはマレーシアでの機会に関する初期段階の協議を希望される企業に、直接的な窓口を提供しています。詳細については、ウェブサイト(www.mida.gov.my別タブで開く)でもご確認いただけます。

総括:都内中小企業にとってのマレーシアの魅力

今回の訪問を通じ、現地側が求めているのは「安価な外注先」ではなく、次のような強みを持つ企業です。

  • 半導体/電気電子:後工程を中心とした産業集積に対し、ニッチな工程・部材・装置・検査・周辺技術で入り込める企業
  • 製造業全般:品質・工程設計・改善(5S/KAIZEN)を含めた協業提案ができる企業
  • 医療・医療機器:先端医療や医療ツーリズム等の背景があり、尖った技術・部材で勝負できる企業
  • 食品・化粧品等(ハラル):現地ハラル工場への委託→軌道に乗れば自社工場、という進出ルートを取りやすい領域
レストランの様子

マレーシアは、はじめて海外展開に挑戦する企業でも制度・インフラ・支援機関の面で取り組みやすい一方、成功確度を上げるには「誰に」「何を」「どの順番で」確認するかが重要になります。進出目的(販路/拠点/生産委託/域内ハブ)を明確にしたうえで、現地機関・業界団体と早期につながり、制度とネットワークを使って“検証”を進めることが、実務として最も再現性の高い進め方です。

海外進出サポート事業(事前相談のご案内)

東京都中小企業振興公社では、海外進出アドバイザーによる進出に向けた経営相談等を通じて、海外展開の検討から実行までを支援しています。本レポートで取り上げた投資促進機関・業界団体との連携可能性や、貴社の事業に合った進め方(市場調査、現地パートナー探索、テストマーケティング、拠点設計など)について、まずは事前相談をご活用ください。

「海外進出アドバイザー」による進出に向けた経営相談の申し込みはこちらから別タブで開く

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【執筆】東京都中小企業振興公社 販路・海外展開支援課 海外進出サポート担当職員