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2026年5月15日

テキサス州ブラゾス地域視察(2026年2月)レポート

— 都内中小企業の米国進出候補地として —

テキサス州会議事堂

東京都中小企業振興公社では、都内中小企業の海外展開支援の一環として、米国テキサス州におけるビジネス環境の調査を実施した。

本視察では、テキサス州中部に位置する Brazos Valley(ブラゾス地域)を訪問し、地域の経済開発機関、大学研究機関などの関係者と意見交換を行った。

本報告書では、現地で得られた情報および公開情報を基に、地域の産業基盤、研究開発環境、人材供給体制、行政・産学連携体制を整理し、都内中小企業にとっての米国進出候補地としての可能性について紹介する。

1. Brazos地域の概要

Greater Brazos Partnershipとの打ち合わせの様子

Brazos Valleyはテキサス州中央部に位置する地域であり、Bryan市およびCollege Station市を中心に形成されている都市圏である。

この地域はBryan–College Station metropolitan areaと呼ばれ、人口約28万人規模の都市圏を形成している。

同地域は米国有数の研究大学であるTexas A&M Universityを中心とした研究都市として知られており、大学を核とした産学連携型の産業集積が形成されている。

ヒューストン、オースティン、ダラスなどテキサス州主要都市へのアクセスが良好であり、研究開発拠点としてだけでなく産業拠点としても注目されている。

Greater Brazos Partnershipとの打ち合わせの様子

2. Brazos Economic Development

Brazos Valley地域における企業誘致および産業振興を担う中核機関が Brazos Economic Development(Greater Brazos Partnership) である。同組織は、Bryan市、College Station市、Brazos郡およびTexas A&M University Systemなどと連携する官民連携型の経済開発組織であり、地域への企業投資促進と産業競争力強化を目的として活動している。

Greater Brazos Partnershipは、地域の強みとして以下の要素を掲げている。

  • Texas A&M Universityを中心とした高度人材の供給
  • テキサス州主要都市圏へのアクセスの良さ
  • 低い事業コスト
  • 研究開発を促進する産学連携環境

特にBrazos Valleyは、ヒューストン、オースティン、ダラスなどの主要都市を結ぶ Texas Triangle の中心付近に位置しており、複数の産業クラスターと連携できる立地条件を備えている。このような地理的条件は企業のサプライチェーン構築や市場アクセスの観点から大きな優位性となる。

また、同地域はTexas A&M Universityを中心とした教育・研究機関が集積しており、地域のイノベーション活動の中核を担っている。大学の研究成果を産業へと結びつけることで、研究開発型企業の成長を支援する環境が整備されている。

ネットワーキングの様子
東京都の紹介の様子

(1)Innovation Ecosystem(イノベーション・エコシステム)

Greater Brazos Partnershipは、同地域の最大の特徴としてイノベーション・エコシステムを挙げている。

このエコシステムは、以下の要素によって構成されている。

  • Texas A&M University
  • RELLIS研究キャンパス
  • 産学共同研究機関
  • 技術スタートアップ
  • 政府研究機関

これらの組織が連携することで、研究開発から社会実装までを一体的に進める仕組みが形成されている。特にRELLISキャンパスやSemiconductor Instituteなどの研究施設では、半導体、航空宇宙、エネルギー、バイオなどの分野で最先端の研究開発が行われており、企業との共同研究や実証実験を実施することが可能である。

特に、RELLISキャンパスは、半導体、航空宇宙、エネルギー、バイオテクノロジーなど幅広い分野における最先端研究を支援する3,300エーカーの多分野にわたる研究拠点として機能している。キャンパス内には半導体研究所などの先進的な施設があり、民間企業との共同研究や実証プロジェクトの機会を提供している。

このような研究環境により、Brazos ValleyはSTEM分野の研究開発拠点として急速に成長している地域と位置づけられている。

(2)Competitive Incentives(企業誘致インセンティブ)

Greater Brazos Regionでは、新規企業の進出や既存企業の事業拡大を促進するため、多層的なインセンティブ制度が整備されている。

インセンティブは以下の3つのレベルで提供される。

  • 地域レベル
    *固定資産税減免
    *開発手数料の免除
    *インフラ整備支援
    *許認可の迅速化
  • 州レベル
    *Texas Enterprise Fund
    *研究開発税制優遇
    *Skills Development Fund
    *Texas CHIPS Act
  • 連邦レベル
    *Opportunity Zone
    *EB-5投資プログラム
    *Foreign Trade Zone(FTZ)
    *New Market Tax Credit

これらのインセンティブはプロジェクトの規模や投資額、雇用創出数などの条件に応じて適用され、企業の投資を支援する仕組みとなっている。

Greater Brazos Partnershipの受付

(3)官民連携による地域経済戦略

Greater Brazos Partnershipでは、地域企業や行政機関と連携した Invest Greater Brazos(IGB) という取り組みも推進している。

IGBは民間企業を中心とした経済開発ネットワークであり、

  • 人材育成
  • 交通インフラ
  • 不動産開発
  • 産業政策

などの分野で地域経済戦略の策定に関与している。

このようにBrazos Valleyでは、行政、大学、企業が連携した官民協働の経済開発モデルが形成されており、企業誘致および地域産業の成長を促進している。

3. RELLISキャンパス

RELLISはTexas A&M University Systemが運営する大規模な研究・教育キャンパスであり、研究、教育、実証実験を統合したイノベーション拠点として開発されている。

このキャンパスにはTexas A&M University Systemに属する複数の大学、州立研究機関、国立研究機関などが集積している。

企業も研究開発拠点として入居することが可能であり、大学研究室との共同研究や研究施設の利用など、産学連携による研究開発を実施することができる。

また研究開発の委託や技術実証などにも対応しており、基礎研究から社会実装に向けた応用研究まで幅広く対応している。

RELLISでの情報交換の様子
RELLISでの情報交換の様子

4. 研究分野と実証実験施設

RELLISキャンパスでは半導体、航空宇宙、防衛技術、交通インフラ、通信技術、エネルギー、材料工学など多様な分野の研究が行われている。

特にSemiconductor Instituteは半導体研究の拠点として整備されており、半導体設計、製造技術、材料研究など幅広い研究開発が進められている。

キャンパスは元空軍基地の敷地を活用して開発されており、広大な土地を利用した実証実験が可能である。

例えば交通インフラ研究では、滑走路を利用した自動運転技術や料金収受システムの実証実験が行われている。

また材料工学研究、電力インフラ研究、防衛技術研究など多様な実証研究施設が整備されている。

広大な敷地内に専門の実験設備を備えたRELLISキャンパスの様子
広大な敷地内に専門の実験設備を備えたRELLISキャンパスの様子

5. 産学連携と人材供給

Brazos Valley地域では大学と産業界の連携が強く、企業と研究機関が共同で研究開発を行う体制が整っている。

Texas A&M Universityは米国有数の研究大学であり、大規模な研究予算と研究者を有する研究機関である。

企業は大学研究室との共同研究や学生インターンシップなどを通じて、研究開発と人材確保の双方でメリットを得ることができる。

また企業の研究者がキャンパス内に入居することも可能であり、大学との密接な連携による技術開発を進めることができる。

6. 都内中小企業への示唆

Brazos Valley地域は研究開発拠点としての性格が強く、特に技術開発型企業にとって魅力的な地域である。

半導体、AI、先端材料、防衛関連技術などの分野では、大学との共同研究を通じて技術開発を加速させることが可能である。

また研究施設や実証実験環境を活用することで、製品開発や技術検証を進めることができる。

このような研究環境は、技術力を強みとする都内中小企業にとって大きな可能性を持つと考えられる。

7. まとめ

Brazos Valley地域はTexas A&M Universityを中心とした研究基盤と産学連携によるイノベーション環境を兼ね備えた研究都市である。

特にRELLISキャンパスは研究、教育、産業を統合した先進的な研究開発拠点として発展しており、研究開発型企業にとって魅力的な環境となっている。

今後、東京都およびBrazos地域との連携を深めることで、都内企業の米国進出の新たな可能性が期待される。


Greater Brazos Partnershipのみなさんと

地域間経済交流(アメリカ・ヨーロッパへの拠点設置支援プログラム)

東京都中小企業振興公社では、東京都と海外諸都市(米国・テキサス州、独国・NRW州)との中小企業の相互市場への進出に係る覚書に基づき、都内中小企業の現地での拠点設置を目的とした支援を行っています。

本支援の大きな特徴は、東京都と進出先の双方で、政府・支援機関・経済団体が一体となった公式な協力体制を構築している点にあります。この公的な枠組みにより、現地の投資環境の活用から拠点設立後の連携まで、制度面とネットワーク面の両方から、地域を挙げた組織的なバックアップを受けられるのが強みです。

テキサス州やNRW州を戦略的拠点と定め、現地の公的機関と密接に連携しながら確実な進出を目指す企業にとって、本支援は極めて有効な選択肢となります。

地域間経済交流支援の詳細はこちらをご覧ください

    

【執筆】東京都中小企業振興公社 販路・海外展開支援課 地域間経済交流支援サポート担当職員