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2025年10月23日

欧州の“共生社会”を肌で感じた —REHACARE2025出展レポート

REHACARE2025の様子

2025年9月17日~20日、ドイツ・デュッセルドルフで開催された介護・リハビリ分野の国際展示会 「REHACARE(リアケア)」 に、都内中小企業5社の皆さんと共に出展しました。

同展示会への公社「Tokyo Pavilion」としてブースを出すのは今回が初めて。企業の来場数は予想より少なかったものの、実際のユーザーや各社製品を目当てに訪れる来場者が多く、各ブースで熱心な質疑応答が続きました。その結果、製品への理解が深まり、また貴重なユーザーの声も得られるなど、予想を上回る手応えのある成果となりました。

目 次:

  • 出展概要と来場動向
  • “使う人の声”が届く展示会
  • 現地で注目を集めた日本企業の技術と製品
  • 欧州の市場特性と日本企業の強み
  • 出展を支えるサポート体制
  • 今後の展望 — REHACARE ASIA へ
  • おわりに

出展概要と来場動向

本展示会には 40か国から約800社が出展し、88か国から34,000人が来場。今回は奇数年開催のため規模はやや小さいものの、前回2023年を上回る来場者数でした。

来場者の約30%がドイツ以外からで、また一般ユーザーの来場が予想以上に多く、幅広い参加者から構成されるイベントと言えます。

欧州では障がいを持つ人々も積極的に社会参加しており、「Inclusive society(包摂社会/共生社会)」の理念が広く浸透していることを実感しました。

REHACARE2025の様子

“使う人の声”が届く展示会

同じ医療分野でも、MEDICAL FAIRのような医療機器展示会に比べると、実際に車椅子や福祉機器用品を利用する人やその家族が多く来場し製品を体験しており、ユーザーの生の声をダイレクトに聞ける非常にインタラクティブな展示会でした。

西欧では介護や障がい支援への公的補助が充実しており、価格よりも品質や機能性を重視する傾向があるようで、本展示会では価格交渉よりも製品の性能や特徴、使い方についての質問や確認が多く寄せられました。

補助金や社会保障の手厚い特に北欧などは公的機関が福祉機器の取引きを行っていることから、公的機関も商談の対象になりうる、ことが今回の出展を通じて分かりました。

現地で注目を集めた日本企業の技術と製品

今回、公社と共に出展した5社は、合計150件近いマッチング商談を実施。初出展としては非常に好結果と言えます。日本製品への関心度と信頼度は高いようです。


介護時の腰への負荷軽減を目的とした(株)イノフィスのマッスルスーツは、介護者の安全保護という観点から高い関心を集め、実際に体験する来場者が絶えませんでした。

REHACARE2025公社ブースの様子

(株)インテックの視覚障がい者用音声腕時計は、ニッチな製品ながらも目的意識の高いユーザーが多く、ドイツ盲人協会などの公的団体とも交流、きめ細かい仕様の日本製品の技術評価は高く、熱心な商談が続きました。

REHACARE2025公社ブースの様子

(株)コスモテックの腕につけるウェラブルメモ「wemo」は、看護師・介護士を中心に人気を集め、現地メディアの取材も受けるなど注目度が高まりました。また、自分でメモすることが認知症予防効果も期待できる為、この訴求に見合ったイベントで合ったと言えます。

REHACARE2025公社ブースの様子

MedVigilance(株)のスマートリング「Fy-Ring」は今回心電図を計測できる最新バージョンを展示、介護施設よりも在宅医療比率が比較的高いドイツのためか、一般来場者からも関心を集め、欧州の健康意識の高さを感じました。

REHACARE2025公社ブースの様子

(株)オリィ研究所は、分身ロボットOriHimeを実際に日本・デンマークから遠隔操作で実演を行い、会期中来場者が途切れることなく高い関心を集めていました。 これは人の労働パフォーマンスの代替ロボットではなく、何らかの理由で外に出て働くことのできない方々へコミュニケーション機能を提供する、雇用を実現ツールであることから“インクルーシブ社会”をさらに広げる新しいアプローチとして印象を残したのではないでしょうか。

REHACARE2025公社ブースの様子

欧州の市場特性と日本企業の強み

会場を歩いて感じたのは、日本と欧州で求められるものが違うということ。車いすひとつ取っても、欧州では「大きく頑丈」が主流。

また、AIやデジタル技術を取り入れた製品が多く、患者ケアの効率化や生活の質(QOL)の向上が強いニーズとして表れていました。

今回出展の5社ブースの様子からも、日本企業の持つ繊細で細やかな発想力や正確な設計力は、欧州でも十分に評価され競争力を発揮できると確信しました。現在は日本企業の出展がまだ少ないものの、今後は日本企業の技術や品質への関心がさらに高まり、欧州への進出や市場拡大の大きな成長が期待できると感じました。

出展を支えるサポート体制

今回の出展は、東京都とドイツ・NRW州の覚書に基づく中小企業支援プログラムの一環として実現しました。公社のブースにはDüsseldorf副市長 Mr. Christian Zaumが訪れ、出展企業と交流。

Düsseldorf副市長 Mr. Christian Zaumの訪問

欧州出展は物流・費用面のハードルが高いものの、公社のサポート体制により、安心して海外販路開拓に臨める仕組みを構築しています。

公社では、都内中小企業の海外展開、海外進出の支援の一環として、Tokyo Pavilionブースとして出展し、出展費用や装飾費用をサポート。加えて、現地通訳の配置やナビゲーターによるサポートで、出展企業が言語の壁を感じることなく商談に集中できる環境を整えています。

本展示会は一般の来場者が多く、ドイツ語しか話せない方も多かったので、現地語の通訳者は本当に有難かった、という声がありました。

初めての海外展示会でも安心して参加できるよう包括的にサポートいたします。

今後の展望 — REHACARE ASIA へ

2026年からは、ASEAN地域で開催されている MEDICAL FAIR に併設する形で REHACARE ASIA が新たにスタートします。医療機器と福祉機器・用品の融合展示として、さらなる注目が期待されます。

より多くの都内中小企業が海外市場へと挑戦するきっかけとなることを願っています。

出展企業グループ写真

終わりに

当公社では、都内中小企業の海外展開を専属の専門家がハンズオン支援する海外販路開拓支援の一環として、海外展示会出展支援を行っております。本支援では、ブースデザインを含む小間の手配、通訳の手配、現地語等での紙媒体(チラシやポスター)の作成のほか、当公社の海外販路ナビゲーターが展示会で行われる商談に同席し、フォローを行います。

*海外販路ナビゲーターとは…
 商社やメーカー等のOBで、輸出取引の経験が長い、海外ビジネスの専門家です。支援が始まると1名のグローバルナビゲータが貴社の担当となり、海外販路開拓のハンズオン支援を行います。

当公社では年間を通じて、海外販路の開拓支援への申し込みを受け付けております。海外マーケットの新規開拓や展示会出展など、海外展開にご興味のある都内中小企業の皆様のご連絡をお待ちしています。

展示会に関する助成金につきましては、当公社助成課までお問い合わせください。

【執筆】
東京都中小企業振興公社 販路・海外展開支援課 職員 稲葉千尋
経歴:2021年10月、東京都中小企業振興公社に入社。入社後、本社にて企画業務や全社の広報・PRを担当。
その後、販路・海外展開支援課に異動し、現地市場調査をもとにした海外展開計画の策定支援や、主に医療系の中小企業様を対象に海外展示会の出展を支援。2024年度からは同課における広報・PRを担当している。

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