「輸出」だけじゃない!「輸入」だって国際取引
~「経済連携協定」を活用して少しでも安く仕入れよう~

世界中で様々なコストが上がり、日本円の勢いも弱い今、海外からの輸入にはお金がかかってしまうのが悩みのタネ。でも、少しでも知識を身に付ければ、コストを削減できるかもしれません!
今回は、経済連携協定をカギにした「輸入」に関するお話しをお届けします
目次
そもそも「協定」ってなに?(国際協定)
「協定(国際協定)」とは、2か国以上の国家間で結ばれる協力の合意のこと。
貿易に関してはWTO協定、FTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)などがあり、
貿易や投資の自由化、円滑化など国際ビジネス環境を整備してくれている非常に大事なものです。
WTO協定・EPA・ETAとは?
WTO(世界貿易機関)協定
2024年8月時点で、166か国が加盟している世界貿易機関「WTO(World Trade Organaization)」の設立協定及び付属協定。
関税その他貿易上の障壁などに関して、多国間の貿易ルールを定めており、貿易の自由化を促進しています。
世界貿易機関「WTO(World Trade Organization)」についてもっと見る
世界貿易機関「WTO(World Trade Organization)」公式HPはこちら
EPA/FTA
WTO協定に加えて、関税撤廃や削除、規制緩和、ビジネス環境整備など、幅広い経済関係の強化を目指し、締結国間の経済連携を深める協定。
FTA(Free Trade Agreement)
貿易の自由化を目指し、物品・サービスなどの貿易に限定して、関税や障壁等を削除・撤廃することを目的とする「自由貿易協定」。
EPA(Economic Partnership Agreement)
貿易の自由化に加えて、投資・人材移動・知的財産保護などを含む経済連携の強化を目指し、幅広い分野のルール作り・協力の要素を含む、幅広い経済関係の強化を目的とする「経済連携協定」。
令和7年1月現在、日本は24か国・地域と、21の経済連携協定を結んでいます。

- シンガポール
- メキシコ
- マレーシア
- チリ
- タイ
- インドネシア
- ブルネイ
- フィリピン
- スイス
- ベトナム
- インド
- ペルー
- オーストラリア
- モンゴル
- EU
- イギリス
- 韓国
- 中国
- ラオス
- ミャンマー
- カンボジア
- カナダ
- ニュージーランド
- アメリカ
この協定を結んでいる国から輸入する場合、関税が減免される可能性があります!
ためしに、100万円分の製品を輸入してみよう!
100万円分の製品(関税率5%)を、運送費・保険料1万円で仕入れた場合・・・
通常かかる費用は以下の通りです。
100万円分の製品にかかる関税 = 100万円 × 5% = 5万円
運送費・保険料にかかる関税 = 1万円 × 5% = 500円
⇒ 合計 50,500円
+消費税 = ( 101万円 + 50,500円 ) × 10% = 106,050円
関税ゼロの協定を結んでいる国から仕入れる場合、このうちの50,500円がゼロになります
カットできるのは「関税」だけじゃないんです!
輸入製品には10%の消費税を支払う必要があります。
が、消費税は先ほどの計算式の通り、製品代・運送費・保険料+関税分を合計した金額の10%になるので、消費税も減免できるのです。
実際に計算してみると以下のようになります。
- 協定を結んでいない国との取引
( 100万円 + 1万円 + 50,500円 ) × 10%
= 106,050円の消費税 - 協定を結んでいる国との取引
( 100万円 + 1万円 ) × 10%
= 101,000円の消費税
5,050円の消費税がカットできました!
協定を結んでいる国から仕入れた場合、結んでいない国に比べて55,500円も安く仕入れられるんですね。
この仕組みを活用するために必要なこと

この協定の適用を受けるには、協定が定める原産地規則を満たしていることを証明する「特定原産地証明書」を取引先から貰う必要があります。
制度や仕組みを理解し、より「コスパよく」取引しましょう。
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著者:栢野 健(かやの たけし)
1955年東京生まれ。AIBA認定貿易アドバイザー。現在はAIBA貿易アドバイザーの理事も務める。
その他CISTEC安全保障貿易管理士、AEO内部監査人などのスキルも持つ。
元は電気・電子エンジニアとして自動制御機器の設計を行っていた。Engineering Managerとして子会社を立ち上げた米国赴任経験を持ち、海外赴任後は海外営業・販売企画・企画管理等を経験。海外信用調査、与信債権管理、顧客取引審査において30年以上の実務経験を持つ。

※本記事は、個人の意見・見解です。また、本記事で紹介している情報は、執筆当時のものであり、閲覧時点では変更になっている場合がございます。