2025.10.31
FDA登録って必須?アメリカへの食品輸出で知っておきたい基本ルール<後編>
前編では、米国向け食品輸出の“基本のキ”として、FDA登録や制度の全体像を整理しました。
今回の後編では、実際の現場で多くの企業が直面する課題──ラベル表示、FSVP対応、事前通知など──を中心に、より実践的なステップを詳しく紹介します。
目次
「外国供給者検証プログラム(FSVP)」に対する情報提供
FSMA(食品安全強化法)に基づく「外国供給業者検証プログラム(Foreign Supplier Verification Program: FSVP)」は、米国内の食品輸入業者に対し、輸入する食品が米国の安全基準を満たしていることを検証・記録することを義務付けています。
そのため、日本など海外の輸出者は、米国の輸入者から、輸入食品の安全性を確認するための資料提出を求められる立場になります。なお、水産物、食肉、ジュースなど一部の食品は他の規則により除外されます。
外国供給業者検証プログラムの詳細は 21 CFR Chapter I Subchapter A Part 1 Subpart L に定められています。
- 食品安全計画(英語)
- 原材料のトレーサビリティ
- 第三者認証の取得証明(FSSC22000、JFS-Cなど)
- 試験成績書、製品仕様書、衛生管理記録など
FSVPには、完了証明や認証制度はありません。輸入者は検証記録を保管し、FDAの査察があれば提出できる体制を整える必要があります。
ラベル表示
米国で食品を販売する際には、FDAの食品表示規則(21 CFR Part 101)に従って、ラベルを英語で表示する必要があります。
主な表示項目は以下のとおりです:
- 品名(商品名)
- 原材料とアレルゲン情報 (アメリカでは「ごま」を含む9大アレルゲンの表示が必要)
- 内容量(グラムやオンスなど)
- 栄養成分表示(カロリー、脂質、糖質など)
- 製造者、包装業者または販売業者(輸入者)の情報(会社名と住所)
※原産国(例:Product of Japan)を英語で表示することは、米国税関(CBP)の規則〔19 CFR Part 134〕で義務付けられています。
また、商品識別用のバーコード(UPCコードやGS1コード)の表示を求める流通業者も多いため、事前に取引先の仕様を確認しておくと安心です。
包装材・食品添加物・色素
アメリカでは、食品に直接接触する包装材や容器(Food Contact Substance: FCS)は、「間接添加物」として21 CFR Part 174〜178(総則174、コーティング175、紙器176、ポリマー177、補助剤178)に基づきFDAの規制対象となります。
食品添加物はPart 170〜180(放射線照射179、暫定許可180を含む)に規定されており、日本で許可されている成分でも、アメリカでは未承認というケースもあります。
着色料については、Part 73(認証免除)およびPart 74(認証要)に分類され、認証免除リスト掲載のものを除き、FDAによるバッチ認証を受けた場合にのみ使用できます。
なお、「オーガニック」表示はUSDA(米国農務省)のNational Organic Programによる認証が必要であり、FDAは管轄していません。
輸出に先立ち、FDAへの事前通知(Prior Notice)の提出
アメリカ向け食品は出荷ごとにFDAへ事前通知(Prior Notice)を行い、Prior Notice Confirmation Number(PNC#)を取得します。多くはフォワーダーが代行します。発行されたPNC#はフォワーダーから受け取り、Shipping AdviceにB/LやAWB情報と併せて記載し輸入者へ通知します。
輸入時の抜き取り検査
貨物がアメリカに到着すると、FDAは必要に応じて輸入食品に対して抜き取り検査(サンプリング)を行います。そこで違反が見つかると輸入拒否や廃棄命令、Import Alert (自動留め置き) の対象となることがあります。こういったトラブルを避けるため、日頃から製造、表示、衛生管理の記録をつけ、輸入者等からの書類要求に即座に対応できるようにしておくことが重要です。
FDAによる査察
さらに、FDAは日本国内の製造施設に対しても査察を実施することがあります。査察対象となるのは、過去の違反歴、製品リスク、出荷量などが考慮されます。査察では食品安全計画や記録管理体制などが重点的に確認されます。
おわりに
冒頭でご説明したとおり、アメリカ市場に食品を輸出するには、FDA(米国食品医薬品局)の規制を理解し、必要な手続きや書類を整える必要があります。米国輸入者との連携を円滑にし、現地のルールに対応してゆくことで、安全・確実なビジネスが展開できるでしょう。
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著者:三上 彰久(みかみ あきひさ)
AIBA認定貿易アドバイザー。
中小企業診断士の資格を持つ。
大学卒業後、総合商社に就職。産業機械部門にて国内営業、輸入内販、海外営業に従事。シンガポール駐在から帰国後は医療機器メーカーに転職し、海外マーケティングを担当。その後団体職員として国際渉外に従事。
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