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2026.3.10

越境ECサービスの仕組み
~利用前に理解しておきたい基本機能~

越境ECは、インターネットを活用することで、個人や中小事業者でも海外市場にアクセスできる有効な手段です。

一方で、仕向け先国ごとの輸入規制、税制、物流の仕組みを十分に理解しないまま進めると、想定外のトラブルやコスト増につながる可能性があります。
越境ECを支援する各種サービスは利便性向上のために日々進化していますが、それらが越境ECにおけるどのような課題を解決するための仕組みなのかを理解せずに利用すると、期待した効果が得られない場合もあります。

今回は越境ECについて、マーケティング面ではなく、越境ECサービスの基本的な機能について、実務上確認すべきポイントを整理します。そのため、あえて具体的なサービス名は出していません。また、仕向け先国ごとの輸入規制について本記事では詳細説明は行いませんが、実務上は極めて重要な論点であることは留意が必要です。マーケットプレイス型のサービスでは出品者向けに輸入規制の説明をしているものもあります。

1.売り場のパターン

越境ECの売り場は、分類の方法はいくつかありますが、主に以下の2つに分類されます。 実際には両者を組み合わせるケースもあります。

自社サイト型 (独立店舗)

自社が販売主体となり、独自にECサイトを構築する形態です。

マーケットプレイス型 (大型モール出店)

インターネット上の商店街にテナントとして出店し、店舗単位で販売する形態です。
利用するには、サービス提供元によって異なりますが、アカウント開設費用、月間基本料金、売り上げ当たりの手数料などが課されます。

なお、越境ECに関連して「プラットフォーム」という言葉が用いられる場合があります。これは、販売形態を指す場合と、販売サイト構築や、決済、マーケティングなどの個別機能を指す場合があり、文脈によって意味が異なる点に注意が必要です。

2.越境ECにおける主な課題

(1) 購入者側の要望

購入者は、以下のような点を重視しています。

  • 販売者の所在地や連絡先を確認したい
  • 商品説明や注意事項が自国語で分かりやすく表示されていること
  • サイズ、容量、使用方法、注意事項が誤解なく理解できること
  • 商品比較やレビューを通じて、安心して購入したい
  • 商品価格を自国通貨で確認したい
  • 注文内容に応じた正確な送料が事前に知りたい
  • 関税やVAT(付加価値税)を含めた最終支払額を注文時点で明示してほしい。
    (特に、受け取り時に追加費用が発生しないかどうかは、購入判断に大きく影響します。)
  • おおよその到着日数(または出品者からの発送までの日数)を注文時点で確認したい
  • 配送状況を追跡したい
  • 返品条件を明確に知りたい

(2) 売主側の要望

売主側には、次のようなニーズがあります。

  • 商品紹介をお客様の言語で適切に行いたい
  • 不正注文やカードの不正使用にともなう取引リスクを抑えたい
  • 商品マスターの登録を楽に行いたい
  • クレジットカードや現地通貨決済など、多様な決済手段に対応したい
  • 関税や送料の着払いによる受け取り拒否を避けたい
  • 貨物保険を含め、配送トラブルに備えたい
  • 国や地域ごとに異なる税務・通関手続きを簡略化したい
  • 問い合わせ・返品対応の負担を抑えたい
  • 在庫・出荷管理を複雑にせず運用したい

3.越境ECサイトに求められる主な機能

上記のニーズに対応するため、越境ECサイトには以下のような機能が求められます。
自社サイト型ではこれらの機能をアプリの組み合わせで対応するケースが多く、マーケットプレイス型では標準機能またはオプションとして課金ベースで提供される場合があります。

利用前に、標準対応範囲と追加費用の有無を確認することが重要です。

A. 商品・販売関連

  1. (1)商品マスター管理(商品名、原産国、価格、SKU、HSコード、個別装のサイズ・重量など)
    • SKUとは、商品の販売単位で色、サイズなどのバリエーション展開がある場合に必要です
    • HSコードは国際的に統一された品目分類コードで、通関・関税計算のために必要となります
  2. (2)多言語対応の商品検索・商品説明 (自動翻訳機能など)
  3. (3)商品画像・動画の掲載
    • 現地文化・規制への配慮が必要な場合があります
  4. (4)外貨表示・多通貨決済、セール時の価格設定
  5. (5)レビュー・評価表示
  6. (6)かご落ち・未決済対策
    • 注文かごに入れたまま決済せずにログアウトしたような場合に、顧客に注意を促す機能です

B. 決済関連

  1. (1)各国主要決済手段への対応
    • 地域によって利用の多い決済手段やクレジットカード等への対応機能です。
  2. (2)通貨換算
    • 顧客の現地通貨に自動的に換算して表示する機能です。
  3. (3)不正検知・本人認証などのセキュリティ対策
  4. (4)返品時の自動返金処理(通貨・決済手段別対応)

C. 物流・配送関連

各種機能の利用にあたっては、越境ECサイト側での設定に加えて、利用するクーリエ側での手続きと課金が必要となる場合もあるので注意が必要です。

  1. (1)送料計算
    ▶各国への送料を自動計算する機能。配送オプション(速達、エコノミーなど)の提示。 複数品目の注文を同梱して発送する場合の送料自動計算機能。
  2. (2)商品追跡
    ▶注文した商品の配送状況を追跡できる機能
  3. (3)輸出通関・輸入通関
    ▶通関手続きに必要な情報(HSコードなど)の商品マスターとの連携
  4. (4)発送ラベルの自動作成機能
  5. (5)インボイス発行
    ▶国際取引に必要なインボイスの自動発行機能
  6. (6)関税・付加価値税(VAT/Sales Tax)の管理機能
    ▶各国の関税計算、EUのVAT、アメリカのSales Taxの計算や、決済画面への反映、納税申告手続きなどは極めて煩雑です。
    これらの計算や納税申告の煩雑さを避けるために、注文時に販売価格に含める方式を採用するサービスや、配送方式によっては受け取り時に購入者が支払う方式が採用される場合もあります。

    ただし、これは単一のECサイト機能だけで完結するものではありません。サイト側での税額計算と、クーリエ (配送業者) 側での「関税立て替えサービス (通常は有料)」を組み合わせることで実現します。

    また、これらの機能・サービスはあくまで税額計算や納付手続きを「支援」するものであり、最終的な納税義務や法的責任は売主(事業者)自身が負う点には注意が必要です。
  7. (7)物流上のトラブル対応:未着、延着、破損対応機能
    ▶未着、延着、破損といった物流トラブルへの対応体制も、越境ECでは重要な機能の一つです
  8. (8)フルフィルメント
    ▶フルフィルメントとは、現地倉庫に商品を保管し、受注後のピッキング、梱包、発送、返品・交換対応までを一括して委託する仕組みです。配送スピードや顧客満足度の向上が期待できる一方、一定の取扱量がないとコスト負担が大きくなる点に注意が必要です。

    フルフィルメントサービスを利用する場合、日本からの荷物の送り先は現地倉庫ですが、通関上の輸入者(IOR: Importer Of Record)には、フルフィルメントサービスの提供企業は原則としてなってくれません。別途、輸入代行サービスを利用するか、自社で輸入者となってくれる者を立てる必要があります。

    主な費用としては、初期費用や月額基本料のほか、入荷・検品料、保管料、ピッキング・梱包費、発送費、返品対応費などが発生します。これらは固定費と変動費が混在するため、事前にコスト構造を把握しておくことが重要です。

    また、売れ残り商品の扱いも検討が必要です。日本への返送には、医薬品・化粧品・酒類など品目によっては再輸入時の法規制が課される場合があり、現地処分費用が発生するケースもあります。

D. その他機能

  1. (1)SEO・ローカルマーケティング対応
  2. (2)SNS連携
  3. (3)売上・アクセス分析
    • 売上やアクセスの分析機能は、特に自社サイト型の越境ECにおいて、コンバージョンレート(購入率)を改善するうえで重要な役割を果たします。

E. 法律・税務・サポート

この部分はソフトウエア的な機能でなく、越境ECサービスによる出品者への情報提供という形で行われることが多いです。

  1. (1)日本から輸出できない商品の確認
  2. (2)輸入国での販売規制・表示義務への対応
  3. (3)知的財産権・消費者保護法への配慮
  4. (4)多言語カスタマーサポート、紛争対応方針の明示
  5. (5)個人情報保護(GDPR等)への対応
  6. (6)VAT、Sales Taxなど各国税制の情報提供 (最終的な税務責任は売主にあります。)

おわりに

上記の機能はすべて必要という訳では無く、越境ECのサービス提供者、売り場のバターン、販売先国、商品の数などによって異なってきます。越境ECではすべてを自社で抱え込むのではなく、必要な機能を賢く使って省力化し、出品者は商品の仕入れやマーケティングに注力し、売上と利益を確保してゆくことが肝要です。

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著者:三上 彰久(みかみ あきひさ)

AIBA認定貿易アドバイザー。
中小企業診断士の資格を持つ。
大学卒業後、総合商社に就職。産業機械部門にて国内営業、輸入内販、海外営業に従事。シンガポール駐在から帰国後は医療機器メーカーに転職し、海外マーケティングを担当。その後団体職員として国際渉外に従事。

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