知財センター活用事例「株式会社タイノタイ」
故郷への想いは人への想いであり真っすぐに特許の取得にも取り組む
液体をセル状にして配置することで画期的な防振性能を持つ「液体防振」の技術で「防振セルバッグス」などの製品を開発。
車の運転に関わる仕事をしている人や、乗車する人などが実際に使用し、多くの「ありがとう」の声が寄せられている。
これからも振動エネルギーが人体に及ぼす影響の軽減を追求し、たくさんの人々の仕事や生活のために役立とうとしている。
主な権利
- 2018年:特許 第6454887号
- 2019年:特許 第6489393号
- 2021年:特許 第6923775号
- 2021年:意匠登録 第1699978号
- 2022年:商標登録 第6545580号
会社概要
- 所在地:東京都日野市南平3-16-26 サンパークビル1F
- 電話:042-592-4855
- URL:https://tainotai.biz
- 業種:液体防振システムの研究・開発・製造・販売など
- 設立:1994年(平成6年) (有)鯛のたい/2023年(令和5年) (株)タイノタイ
- 資本金:100万円
地元に貢献する「産地直送」の仕事からスタート
鯛の鯛。鯛の中にある骨の形が、これまた鯛に似ているということで、縁起物としても知られている。そんな名を冠したユニークな社名。それは、澤村社長が伊豆の出身で漁師の息子であることに端を発していた。「もし私が自分の会社を立ち上げる時には、インパクトのあるこの名前にしようと決めていました。そしていざ会社を始めようという1994年頃は、『産地直送』というキーワードが注目されていた時代でしたし、地元のために何か役に立ちたいと考えました。そこで、産地直送の魚を都内で売る会員制のシステムを作ろうとしたのですが、上手くいきませんでした」と澤村社長。「そこで、一度辞めた会社の社長に『販売代理店をやらせてほしい』と頼み込んだのです。それで、化学製品である切削油・洗浄液というものを扱うようになりました。それでも、当時は有限会社鯛のたいという名前でしたが、その社名はそのまま残したのです。日本人なら一度聞いたら忘れられないネーミングだという想いもありました」と語った。
船乗りたちの辛い身体を「防振具」によって守りたい
そんな澤村社長だが、自分で何かを作り出すことによって社会に貢献するメーカーになりたいという想いは強かった。「何かを作りたいと言っても元々は営業ですから、条件は絞られます。まずは、簡単にできること。次に、真似をされず競争力も付くように特許を取得できること。さらにはニッチな製品で、新たな市場を作れること。それなら小さな会社でもやっていけるかもしれないと考えて取り組み始め、目を付けたのが『防振具』でした」
その背景には、何があったのだろうか。「漁師の息子だという話をしましたが、学生時代に観光船のアルバイトで一日中ずっと船に乗っていました。そこでの船の振動が身体に辛かったんです。これを『防振具』でなんとかできないものか。漁師や船に乗っている人たちを、振動から守ってあげたいと思ったのです」
「液体防振」の独自技術で運転での疲労や腰痛を軽減
このジャンルなら新たな製品を開発できるかもしれないと考えた澤村社長。それからはとにかく勉強し、本をたくさん読んだ。「東日本大震災の後にはP波やS波などのメカニズムを学びました。そこでひらめいたことを確かめてみようと、水を入れたビニール袋を通してトラックのハンドルを握り、振動の伝わり方が減少するか実験したりもしました。それで『これはすごい!』と確証を得たものを製品化するのに、そこから10年ほどかかりましたね」
最初は車の運転に使う手袋にチャレンジして、次は座布団へ。耐久性を高める努力を積み重ねて、生まれたのが独自の液体防振技術による「防振セルバッグス」というシートだ。特殊な液体を、並んだ細胞のように強化フィルムバッグの中に封入した製品は、振動を1/10〜1/100にまで解消できる。これによって、例えば長時間の運転での強い疲労感や腰痛などが軽減へと向かう。多くの人々の健康にとって朗報となる技術なのだ。
疲労や腰痛からドライバーを守ろうとしている。
卒業論文に取り組むというイメージで特許取得に向かう
「手袋の開発に取り組んでいた時には、製品化する前にまずは特許さえ押さえられればいいと考え、弁理士を通して特許を出願し取得しました。しかし座布団に取り組む頃は資金的な余裕もなく、無料で相談できる知財センターがあることを知って活用するようになりました。シートのいろんなセル構造を考えて、新しいものを思いつくとそれはまた別の特許になりますから、複雑なことをずいぶん相談しました。また、特許の拒絶理由通知が届くたびにアドバイスをもらいましたし、『このような書き方では用途が限定されてしまいます』という助言をもらった時も、こちらが気づかない視点だったのでとても助かりました。そんな知財センターを中小企業ならばいつでも活用できるのは、ありがたいですよね」
そう語る澤村社長は、さらにこう続けた。「私は、学生時代の卒業論文に取り組むくらいのイメージで特許の取得に当たりましたが、それくらいの覚悟は必要なのではないでしょうか。でも、特許は決して敷居の高い世界ではありません。私も最初の頃は取っつきにくいと感じていましたが、そんなことはないですね。初めはハードルが高いと感じるかもしれませんが、慣れると特許の世界が見えてくるようになります」
痛みのメカニズムの解明にも積極的に貢献していきたい
「今後はさらに『防振セルバッグス』を社会に広めていくことが使命だと感じています。また、応用の幅も広いと考えられるので、いろんな人の力になれたらうれしいです。これを使ってもらわないと、もったいないんですよ」と力強く語った澤村社長はさらに「私が今思っている仮説は、原因不明の腰痛が多いのは、振動などによるストレスを痛みだと感じることがあるのではないか、ということです。私の製品づくりが、こうした痛みのメカニズムの解明や、新たな知見の獲得にもつながるといいですね」と微笑んだ。
故郷に対する想いから発した発明は、これからも仕事や暮らしを支えるサポーターとして、多くの人々の福音になっていくだろう。鯛の鯛が、福音をもたらすと言われているように。
知財センターからのメッセージ
知財権の移転などに関してもアドバイス
防振シートのビジネスをさらに押し進めるため、2023年1月に株式会社タイノタイを設立。知財権をそれまでの有限会社鯛のたいから新会社へ移すために、その手続きなどもサポートしました。また、特許出願時の明細書作成の確認、拒絶理由通知を受け取った時の応答方針、意見書、補正書の作成の助言などを行いました。
担当:浅水アドバイザー
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