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知財センター活用事例「株式会社葵製作所」

社員と共に知財を見つめながら人と人との絆を育んでいきたい

精密板金から架台、フレーム、大型筐体溶接加工までを全般的に手がける板金加工のプロフェッショナル。
「目計漸進」を社是として、会社でも、個人でも、家庭でも、いつも少しずつ前に進むことを大切に考えている会社である。
最近では金属を使ったデザインやインテリアの領域にも進出し、ものづくりによる「絆」を、さまざまな場で育み続けている。

代表取締役:長谷川 薫さん
代表取締役:長谷川 薫さん

主な権利

  • 2022年:意匠登録 第1717064号
  • 2021年:商標登録 第6387697号
  • 2022年:商標登録 第6639533号
  • 2022年:商標登録 第6639534号

会社概要

  • 所在地:東京都八王子市石川町3216-7
  • 電話:042-645-7330
  • URL:https://www.aoi-ss.co.jp
  • 業種:総合板金加工業
  • 創業:1971年(昭和46年)
  • 資本金:1,000万円

代表取締役:長谷川 薫さん
代表取締役:長谷川 薫さん

図画工作のようなものづくりを大切にしたい

星雲を意味する「Nebula」と名付けられたシリーズ。熱処理による着色を一つひとつ手作業で行うことで、zuga®︎の中でも特に個性豊かな唯一無二の商品に仕上がっている。
星雲を意味する「Nebula」と名付けられたシリーズ。
熱処理による着色を一つひとつ手作業で行うことで、
zuga®︎の中でも特に個性豊かな唯一無二の商品に
仕上がっている。

 zuga®︎。「ズガ」と呼ぶ、金属加工による新たなプロダクトの総合ブランドは、
図画工作がその名のアイデアになっている。学校で何かに向き合い、友達と一緒
に技術を通してものづくりに携わった、あのワクワクするような時間だ。だから
ブランドのキャッチフレーズは、DesigningHappily,Making Honestly である。
 近年このzuga®︎を立ち上げたのが、さまざまな板金加工のプロフェッショナル、
株式会社葵製作所である。その中でもNebula Metal®︎(ネビュラメタル)という
独自の加工技術によって着色されたインテリアは、まさに「Nebula=星雲」の色
だ。私たちの世界がこんなにも美しく、また不思議にあふれていることを教えて
くれるのは、金属という人間の暮らしのパートナーである。

星雲を意味する「Nebula」と名付けられたシリーズ。熱処理による着色を一つひとつ手作業で行うことで、zuga®︎の中でも特に個性豊かな唯一無二の商品に仕上がっている。
星雲を意味する「Nebula」と名付けられたシリーズ。
熱処理による着色を一つひとつ手作業で行うことで、
zuga®︎の中でも特に個性豊かな唯一無二の商品に
仕上がっている。

金属の良さを世の中にもっと伝えていきたい

 このzuga®︎というブランドに代表されるプロダクトとデザインの取り組みを始めた背景について長谷川社長に聞いた。
 「コロナ禍があり、仕事が3割ほど減ったんです。そうすると結構暇でもあり、かといって休業という選択肢もどうかなと。そこで『私たちはせっかくものづくりができるのだから、何か作りたいものを作ってみましょう』という話になりました。それで出荷棚を製作したり、会社のゴミ箱や傘立てを作ったり。設計の勉強にもなるからいいなと思って始めたことなんです。それでやってみるとカッコいいねとか面白いねというのもあるのですが、私たちは『金属っていいね』と思っちゃうんですね。ですから『金属の良さを世の中にもっと知ってもらえたらいい』と考えました。今の時代には海洋プラスチックの問題などもありますが、リサイクルできる金属にはもっと可能性があります。価格は少し高いけれど、丈夫だし、大切に長く使うことができる。金属にはもっとポジティブな面があるのだから、もっと身近な生活に取り入れてもらえるようにと思いました。それでサンプルを製作して展示会に出したらかなり評判が良かったんです。特注のインテリアなど、新たな分野の仕事も広がりました」

セミオーダーの架台フレームをWeb上で見積もり・注文できるサイト「架台フレーム.com」。コロナ禍に立ち上げ、非対面・非接触で発注できる。
セミオーダーの架台フレームをWeb上で見積もり・注文できるサイト「架台フレーム.com」。
コロナ禍に立ち上げ、非対面・非接触で発注できる。

社員には伸び伸びと安心して自由に力を発揮してほしい

 こうしたチャレンジに向かった背景には、長谷川社長の「葵製作所のプレゼンスを高めたい」という想いもある。2014年に創業者である父親(現会長)から社長の座を引き継いだ。父親が職人気質であり、トップダウンの社風であった雰囲気を、長谷川社長は変えた。
 「会社のみんなが何をやってもワクワクしたり、楽しみを持てることを大切にしたいと思っています。そこを盛り上げるのが私の役割かもしれません。安心して自由にやってねという感じですね。そこを私が明確に示さないと、社員は『こんなことやっていいのかな?』と思ってしまうかもしれません。そうすると伸び伸びと良いものができなくなりますよね」

アルミ材料に「アルマイト」という処理を行い、酸化被膜を生成させて耐食性を高めたシリーズ。金属らしさを残しつつも染料を用いたカラーアルマイトの風合いが心地よい。
アルミ材料に「アルマイト」という処理を行い、酸化被膜を生成させて耐食性を高めたシリーズ。金属らしさを残しつつも染料を用いたカラーアルマイトの風合いが心地よい。
金属の繊細な表情が美しいzuga®︎のキャンドルホルダー。技術が既にデザインになっていることも葵製作所らしさである。
金属の繊細な表情が美しいzuga®︎のキャンドルホルダー。技術が既にデザインになっていることも葵製作所らしさである。

知財の獲得は社員の大きな自信や成長につながる

 新たな製品開発とともに大切にしたのが知財への取り組みである。「初期に開発したドリンクホルダーの評判が良かったので意匠出願してみたら無事に登録できて、本当にできるんだ! と思いました。商品開発が進む中でブランド化を検討し、『zuga』としました。この名前は、会長が金属加工のことを『板金工作』とよく言っていて、これをヒントとして、当時協業したデザイナーさんが発案してくれました。それでぜひ商標登録させていただこうと知財センターのアドバイザーに相談し、いろんな助言をもらいました」と長谷川社長。
 さらにこう続ける。「知財を獲得することで、設計した社員には大きな自信が付き、仕事のモチベーションも上がります。特に知財センターのアドバイザーからその取り組みを褒められると、社員はうれしいですし成長にもつながります。ですから知財という面でも、どんどんみんなが葵製作所という舞台で輝いてくれたら私にとっては最高です」

相手の立場を大切にするには知財に対する知識も必要

 「知的財産権の登録は他社に対しても、当社が知財を無視せずに考えているというアピールになります。また、協業する上でも知財に気をつけてお付き合いすべきだと考えています。結局は人対人ですから、お相手の立場を大切にするということを知財への取り組みの経験から学びました」と長谷川社長。さらに「知財センターのアドバイスは、権利取得のロードマップの手順が分かりやすいんです。この先はこうですと指し示してもらえるので、安心して進められます。舗装された道のように、この道なら歩けるという感覚があります。ですから私じゃなくて社員に任せることもできました」と語る。
 葵製作所の経営理念は「想いを共につくり、絆を育む」。ものづくりによる絆を、チームで育み、顧客と共に育み、社会と育もうとしている。そして長谷川社長は日頃から社員に対して、思いやりや愛情の言葉をみんなが普通にかけ合えるようにしたいと語る。「たまたまこの会社に集まってくれた社員のみんなが幸せであるように頑張るのが私の役割」と言い切り、社員が安心して伸び伸びと成長するためには、愛されているという実感も必要だと言う。そんな言葉を素直に発することができる社長のいる会社だからこそ、想いが共につくられ、育まれた絆がさまざまなところでつながっていくのだろう。

知財センターからのメッセージ

知的財産権の情報発信も積極的に行われる

社長のリーダーシップのもと、知的財産権の取得と活用に取り組まれています。また情報発信にも注力し、製品とともに獲得した知的財産権を丁寧に伝えています。適切なタイミングで知財センターをご利用いただき、権利取得の他に著作権や秘密保持などの契約に関するアドバイスなども行いました。
担当:山崎アドバイザー

ご活用いただいた支援メニューのご紹介

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