知財センター活用事例「フットマーク株式会社」
オリジナリティあふれる言葉を大切に守り育てていく商標登録
人を想い、笑顔を創る。すべては「健康快互(けんこうかいご)」から。そんな合言葉とともに、赤ちゃんからお年寄りまでを対象とした幅広い事業領域で、丁寧な商品づくりを展開。
お客様の声、たった一人の言葉を大切にするという「1/1(いちぶんのいち)の視点」を常に持ちながら健康をテーマとした独創性のある商品を開発し続けている。

広報室:吉河 祐子さん(右)
主な権利
- 2022年:特許 第7150288号
- 2023年:特許 第7212387号
- 2019年:意匠登録 第1629505号
- 2019年:意匠登録 第1629506号
- 2023年:商標登録 第6752949号
会社概要
- 所在地:東京都墨田区緑2-7-12
- 電話:0120-210-657
- URL:https://www.footmark.co.jp
- 業種:水泳用品、介護用品、健康用品の企画・製造・販売など
- 創業:1946年(昭和21年)
- 資本金:8,500万円

広報室:吉河 祐子さん(右)
1984年に「介護」という言葉を商標登録した会社
あしあとマーク。きっとたくさんの人が、学校での水泳の時間に目にしているに違いない。フットマーク株式会社と言えば、水泳帽子や水着などの水泳用品をパッと思い浮かべる人は多いだろう。
そんな同社は1946年に、赤ちゃんのおむつカバーの製造によって創業した。そして1970年代には「最近、うちのおじいちゃんがお漏らしするようになって困っています」というご近所の方の話を聞き、「大人用おむつカバー」を開発。当時はまだ「介護」という言葉が一般的ではなかった時代であるが、なんと1984年に同社が「介護」という言葉を商標登録している。まさにこの国の介護の先駆けとなった会社なのだ。前述の「大人用おむつカバー」は、その後「介護おむつカバー」という名称になり、続々と同社の介護用品が生み出されていった。さらには健康関連用品をリリースするなど、事業の幅は大きく広がってきている。

健康で明るく元気に育ってほしいという願いをすべての人々に展開し、新しいものを創り出しながら、常に新たな一歩を踏み出していく。そんな想いが込められた、会社のシンボルマークである。

水泳用品が多くの人々に親しまれている。
職務発明規程の整備で社員のモチベーションが高まる
同社の商標登録数は約300にも及び、以前から知財に関しては意識的に取り組んでいた。また、知財センターの活用も10年以上前からのことである。そうした中でニッチトップ育成支援を受けた背景には、もっと知財を戦略的に活用していきたいという会社の想いがあった。「当時は知財担当者が不在で、前会長が知財に関する多くの実務を行っていました。そこで、この機会に私を知財担当者として、もっと知財ポートフォリオを活かした商品開発の流れを作っていきたいと考えました」と経営管理部 兼 DX推進室 室長の中島さんは語る。
さらにこう続けた。「ニッチトップ育成支援の締め括りとして職務発明規程を制定しました。これによって社員が発明を行い、それを販売するモチベーションも高まったと思います。また、商標出願ガイドラインも作成し、戦略的に知財を活かしていく体制が一旦整いました。今後はこの体制に基づいて具体的に活動していきたいと考えています」
独自の組織体制に知財がリンクしてサポートを行う
そんな中島さんの話を受けて、広報室の吉河さんは「当社には自由闊達な社風があって、商品開発は開発担当者だけが行うのではなく誰にでもチャンスがあり、むしろ1人1商品くらい新商品やヒット商品を生んでほしいと社長もよく語っています。ですから当社の組織体制はあえて少人数の部門編成にして、全員が当事者意識や自主性を持ちながら生き生きと働ける環境にしているんです。各部門や個人に裁量権が与えられ、少数精鋭でアイデアを出し合える土壌とスピード感がある。ですから今回行った職務発明規程などの知財体制の整備は、そんな当社らしさをさらにサポートするものだと感じています」と語った。「そうした自由な風土の一環として、今までは商標出願もそれぞれに行っていたところがありました。でも、会社のこれからを考えると、知財を戦略的に一元化することも大切。そこで商標出願ガイドラインを作成しました」と中島さんは続けた。

時代に合わせた新しい商品も次々に生み出している。

やヘルパー向けのバッグなど、さまざまな商品を企画・製造・販売している。
インナーブランディングなど自分たちの価値観を見つめる
先に紹介した「介護」という言葉のほか、「健康快互」「1/1の視点」など、同社にはオリジナリティあふれる言葉がたくさんある。どれもがユニークで伝わりやすく、その意味に納得させられる。「作り上げた言葉にはこだわりがあり、それを大事にするために商標登録しているという面もあると思います」と吉河さんは語る。言葉を大事にするための商標登録。常に物事の本質を見つめている同社らしい姿勢である。「5〜6年前から吉河らが中心となって取り組んでいるインナーブランディングの活動も、社員に会社の考え方が浸透する大きな力になっていると思います」と語るのは中島さん。吉河さんは「例えば『アイデアボックス』という月1回社員全員がお題に対してアイデアを出す機会など、会社の文化として行われている大小さまざまな仕組みが昔からあります。ですから、もうそれがインナーブランディングだったのだと感じています。そんな自分たちが大事にしてきた価値観を明文化しながら明日へつないでいくプロジェクトを推進しています」と語った。
DXや知財といった分野は部門横断の視点からも大切
知財についても、インナーブランディングに関しても、その整備は同社の哲学を基にして行われていると感じる。そうした活動を支える組織や体制は合理的であり、中島さんは「私はDX推進室の室長でもありますが、当社が細分化された部門編成にしているからこそ、DXや知財といった横串を通すべき視点を持つ必要があります。部門横断的な機能があることも大切ですね」と語っている。
最後に今後の知財戦略について中島さんに尋ねた。「商標を整理して、当社ならではの言葉をもっと商標に活かしていく活動を行っていきたいです。通常は先に商品があって名前を付けますが、逆の発想があってもいいでしょう。『先に名前がありますが、ここからどういうものが考えられますか?』といった取り組みも面白いのではないかと感じています。また、今までに取得した特許が果たしている役割も、もっと今後の指標として明確にしていきたいですね」
これからも笑顔とともに新たな歩みの「あしあと」が記されていくのだろう。
知財センターからのメッセージ
知的財産法に関する基本的な知識やスキルも習得
今回の支援によって、職務発明規程を制定するなど、会社として必要な知財関連の規程の整備が完了。さらに各種の実務者向けセミナーの受講により、知的財産法に関する基本的な知識やスキルを習得できました。今後はこれらをベースに、応用力にも磨きをかけて、個々の案件について適切に対応していただきたいと思います。
担当:星アドバイザー
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