知財センター活用事例「株式会社アジャスト」
日常のちょっとした話題からも知財への関心が高まり社内に浸透した
金属や樹脂などの機械加工品の設計・製造・販売を行い、ねじ類など締結部品のメーカーとしても知られている。
近年は冷凍・冷蔵車用間仕切りを独自に開発し、軽量化の実現で、ドライバーにかかる負荷を大幅に軽減。「ものづくりを通して、人々の夢を形にする事に貢献します」という経営理念をしっかりと形にしている。

営業部 部長:木村 隆一郎さん(右)
主な権利
- 2022年:商標登録 第6564339号
- 2022年:商標登録 第6564340号
会社概要
- 所在地:東京都東久留米市柳窪5-4-12
- 電話:042-479-1861
- URL:https://www.adjnet.co.jp
- 業種:金属・樹脂の加工部品や冷凍・冷蔵車用間仕切りなどの製造・販売
- 設立:1998年(平成10年)
- 資本金:500万円

営業部 部長:木村 隆一郎さん(右)
納得するものを作ることで顧客ニーズに応えてあげたい
「お客様のニーズや困り事を解決する製品やサービスを提供する開発型企業」を経営ビジョンとしているのが、株式会社アジャスト。精密切削加工などの確かな技術によって、多くの産業にさまざまな部品を提供し続けている。社名が表すように、それぞれの顧客の要望に対して丁寧にアジャストしてきた会社だ。
そんな同社が、自社ブランドの商品を開発した。冷凍・冷蔵車用間仕切りであり、冷凍と冷蔵の商品を荷室内で区分することができる。元々は15年ほど前に、運送業専門の商社から依頼されて、与えられた設計書通りに間仕切りを製造していたのが発端だった。保谷社長は「営業担当者から『もっと安いものができないでしょうか?』と言われて、サンプルを作ってみようかという軽い話から始まったんです。最初のうちは、新しい商品を直販するようになるとは考えていなかったのですが、次第に『自分たちが納得するものを作りたい』という想いが高まりました。それで私たちが運送会社を直接訪ねてヒアリングし、すべて設計を行う新商品開発をスタートさせたのが、4年ほど前です。いろんなことを試しては失敗し続けて、改良に改良を重ねた結果、メーカーとしてこの商品を販売していこうと決めました」と語る。
自社設計へのチャレンジで知財の大切さを改めて考える
「ところが、新商品となると自社設計ですから、他社の特許に抵触しないか、名前を付けるにしても既に商標登録されていないかなど、慎重に検討しなければなりません。それで、まずは商標を出願しようというところから改めて知財に関心が向き始めました。いろいろなものを調べなければと木村に話したんです」と保谷社長。営業部の木村部長は「何か訴えられたら大変ですから、知財についてどこで聞けばいいか調べて、行き着いたのが知財センターの無料相談です。2度ほど訪問したタイミングでニッチトップ育成支援というプログラムがあると教えてもらいました。さらには支援がスタートして1年後から、知的財産交流・研究会にも参加させてもらいました」と語る。
ドラマを観て危機感を抱きニッチトップ育成支援へ

リーズナブルで、ラインナップも豊富に取り揃えている。
保谷社長は、「テレビで『下町ロケット』というドラマを観た時に、特許の侵害がテーマになっている回がありました。それで訴訟のシーンを観ながら『これは知財にしっかり取り組まないといけないな』と思ったんです。会社を守らなければと感じ、あのドラマがいい刺激になりました」とざっくばらんに語る。すべてがタイミングよくつながり、知財センターのニッチトップ育成支援を受けた。
前述の冷凍・冷蔵車用間仕切りには、「かるがーる」という名前が付けられて、支援期間中に商標登録された。「社員みんなで名前の候補を出し合い、ある女性社員が考えたものに決定しました」と保谷社長。木村部長は「軽々持てることから『かるがーる』。単純明快でいいと、満場一致で決まりました。私が提案したネーミングは、凝りすぎちゃってダメでしたね。命名者には金一封が出ましたが、商標登録に尽力した私に金一封は出ませんでした」と、周囲を笑わせながら楽しそうに話す。
数々のエピソードが紹介され係争の結果を知ったのは貴重
ニッチトップ育成支援では、具体的なエピソードの紹介などが分かりやすく、関心を持つことができたという。木村部長は「興味を引かれるちょっとした事柄、例えばニュースで報道されるような話題を取り上げてもらったおかげで、社員たちの意識は確実に変わりました。間仕切りの製造現場でも、特許の話が出ています」と語る。さらに保谷社長は、「係争の結果がどうなったか? という話も紹介されて知ることができたのはよかったです。訴訟になったことはニュースで伝えられていても、その結果まではなかなか分からないですからね」と続けた。木村部長は「今まで持っていた『知財権は高いもの』『費用も時間もかかる』という負のイメージが覆されたのも、知財センターのアドバイザーのおかげです。助成金などの情報も得ることができました。また、ニッチトップ育成支援全体を通して、IPランドスケープが見えてきたのは事実です。知財情報の活用をこれからも意識していきたいと思います」と力強く語った。
相手が幸せになることをこれからも考え続けたい
「かるがーる」を皮切りに、今後も新たな自社商品を開発していく予定だ。「あるお客様が『いいな』と思われたものは、他のお客様にも支持される可能性がありますね。ですから、お客様からもらうアイデアを今後も大切にしていきたいです」と保谷社長は語る。
そして最後に、自社のビジョンとして「私たちはサービスを売っている会社だと思っています。例えば、高級ホテルとビジネスホテルでは料金が異なりますが、寝てしまえば一緒。ところが高級ホテルでは、お客様は扉を開けてから出てくるまでの、スタッフの対応やお部屋の雰囲気など、さまざまな要素も楽しんでいます。私たちが提供するのは部品や製品のみならず、情報も含めたサービスを売っている。相手の方に幸せになっていただけることを考え続けていきたいです」と語った。その言葉に、間仕切りを軽々と移動させる人の笑顔が重なって見えた。

まで、さまざまな顧客の要望に応えている。
知財センターからのメッセージ
社内会議でも意識的に知財のことが挙げられる
支援期間中に20回開催したニッチトップセミナーを通じ、社員の方々の知的財産への関心が高まったと感じます。支援後は、社内会議などでも意識的に知財のことが話題として挙げられるようになり、そうした状況の変化も成果を表しています。今回の経験を基に、さらに営業・開発戦略と知財戦略の融合を目指してほしいです。
担当:山下アドバイザー
ご活用いただいた支援メニューのご紹介
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